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On the Production
by 井口健二
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■トロン、ゴースト、マクナイーマ、バーレスク、ソウ・ザ・ファイナル、ハーモニー+製作ニュース・その他
いた他のリメイク作品よりはずっと良い出来だと感じた。
とは言うものの、本作にも問題点はいろいろあって、例えば
物語の前半で2人の愛が芽生えるまでの展開は多少安易に感
じた。それは男性の側は他の条件もあるからいいとしても、
今まで愛を信じられなかった女性が恋に墜ちるのにはもう少
し手順が必要だろう。
それと途中に出てくる幼女のゴーストに関しては、彼女の思
いが解決されないままなのは観客としては納得できない。こ
ういう端々のエピソードが蔑ろにされるのは日本映画の欠点
でもあるが、脚本家は自分で描いたエピソードには最後まで
責任を持ってもらいたいものだ。
なお監督はテレビ演出家の大谷太郎。テレビでは数多くの受
賞歴があるようだが、映画の監督は本作が初めてのようだ。
まあ、それほど問題はなかったと思う。
出演は、1998年『リング』などの松嶋菜々子、2000年の韓国
ドラマ『秋の童話』などのソン・スンホ、そしてオリジナル
でウーピー・ゴールドバーグが演じた霊媒師役に樹木希林。
他に、今年8月紹介『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』
などの鈴木砂羽、「劇団☆新感線」の橋本さとしらが脇を固
めている。

『マクナイーマ』“Macunaíma”
ブラジル近代文学の金字塔とも言われるマリオ・デ・アンド
ラーデによる原作の映画化。オリジナルは1969年に発表され
たブラジル映画が、ディジタル・リマスター版となって日本
初公開される。
物語は、アマゾンの密林で赤ん坊が誕生するところから始ま
る。しかしその赤ん坊は最初から黒人の中年男の姿で生み落
とされ、父親からは不吉とされる「マ」で始まる名前「マク
ナイーマ」と名付けられてしまう。
ところがその赤ん坊は、森で魔法の泉の水を浴びたことから
美しい白人の青年に変身し、兄弟と共に都会に出て美しい娘
と恋に落ちる。そして黒人の子供を儲けたりもするのだが…
不吉の影は彼の許を去ってはいなかった。
これに、魔法の石「ムイラキタン」の伝説や、ブラジル先住
民族の「食人」の歴史などが絡み合って、何とも支離滅裂な
物語が展開されて行く。
宣伝では、“モンティ・パイソン”×「エル・トポ」という
コピーが使われるようだが、コメディとしてはイギリスの名
物番組ほど洗練されてはいないものの、俗悪さという意味で
は、確かに毒が満載という感じの作品だ。
因にオリジナルの公開は、ブラジル本国とフランスの記録し
か残っていないが、フランスでは1970年の公開から3年間の
ロングランを記録しているそうだ。なおアメリカではニュー
ヨークのみの限定公開があったようだ。
その作品が、2006年ヴェネチア映画祭で企画されたジョアキ
ン・ペドロ・デ・アンドラーデ監督の回顧特集のためにディ
ジタル修復されたものだが、ほぼ全編はオリジナルから修復
されたものの、一部にあった欠損部分はフランスに残されて
いたフィルムから追加されたとの事情が巻頭のテロップに記
載されていた。
なお監督のジョアキンは、大学で物理学を専攻しながらシネ
クラブを立上げ、後に映画監督になったという経歴だそうだ
が、この作品のハチャメチャさは、何となく理系人間の感覚
かな…とも思えたものだ。
さらに本作の日本公開に併せ、東京では当時のブラジル映画
を特集するシネマ・ノーヴォという企画上映も行われるよう
だ。

『バーレスク』“Burlesque”(45分特別フッテージ)
11月24日に全米公開、日本では12月18日に公開される音楽映
画の45分間の抜粋版が特別上映された。
物語の舞台は、「バーレスク」という名のショウクラブ。元
ショウダンサーのオーナーが経営するそのクラブは、毎夜大
人の客を相手に華麗なショウを上演していたが、客足は減り
続け、その経営も厳しくなっていた。
そしてオーナーもその状況の理解はしていたが、もはや打つ
べき手段もなく、残された道は新しいスターの誕生だけだっ
た。しかし次期スターを期待される歌手ニッキーには素行の
悪さという問題があった。

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10月31日(日)
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