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On the Production
by 井口健二
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■making of LOVE、ゴーストキス、ANPO、美人図、ナイト&デイ、メッセージ、キャッツ&ドッグス、純情+製作ニュース
した思いを遂げられるか…という展開になる。
まあお話は有り勝ちだが、それなりの捻りもあって楽しむこ
とはできた。ただ監督にはもう少し演技指導を期待したいも
の。本作では何となく演技がぎこちなくて、それで興を削が
れる感じがあったのは残念なところだった。
出演は、AV女優の春野さくらと、ネットで調べるとかなり
際どいDVDにも出演している白井みなみ。他には舞台俳優
や俳優養成所出身者、それに『白日夢』の出演者などの男優
たちが脇を固めていたようだ。
まあ、演技の訓練を受けていない女優を使う難しさはあるの
だろうが、そこを何とかするのも監督の仕事だろう。それに
白井にはもう少し大胆な演技が期待されたはずで、その辺は
多少もったいなくも感じた。
なお、今回紹介した「青春H」の2本は、8月28日から9月
10日まで東京のポレポレ東中野にて交互に日替りレイトショ
ウで上映され、その間にイヴェントの開催も予定されている
そうだ。

『ANPO』“ANPO: Art×War”
京都生まれで日本育ち、現在はニューヨーク在住で日本映画
の英語字幕の翻訳などを手掛けているリンダ・ホーグランド
という女性が、1960年安保闘争を中心に戦後の日米関係を検
証したドキュメンタリー。
僕自身が1970年安保世代で、全学連が占拠封鎖した母校に機
動隊が突入したときには、新聞部の連中に誘われて校舎の屋
上から戦況の記録などもしていた人間だったもので、従って
安保にはそれなりの思い入れもあり、興味深く作品を観るこ
とができた。
その本作では、1960年前後に描かれた絵画の検証に始まり、
『仁義なき戦い』や『火垂の墓』などのフィルムクリップ。
さらに60年安保闘争を撮影した記録映像なども織り込んで、
当時を記憶する人々へのインタヴューなどが綴られる。
そのインタヴューには、横尾忠則や加藤登紀子といった人た
ちを始め、現在の沖縄で基地問題に取り組んでいる住民や、
横須賀どぶ板通りで風俗の写真を撮り続けている女性カメラ
マンなども登場する。
その一方で本作では、安全保障条約そのものの問題点につい
ても検証し、A級戦犯だった岸信介が首相になって日米安全
保障条約を改訂・恒久化するに至った経緯や、それを実現し
たCIAの働きなどにも言及する。
ただこれだけの内容を89分に納めたのはかなり駆け足の感じ
もして、安保についてそれなりの知識を持っている我々世代
の観客にはこれでもよいが、作品の中にも登場する修学旅行
生のような子供たちに理解して貰えるかどうかは多少心配に
なった。
とは言え、日本のマスコミがほとんど口を噤んでその実態を
検証することもない安保の問題を作品にしてくれたことは嬉
しかったし、一方、監督自身が言っているアメリカ人の理解
とは異なる占領の実態などを彼らの国民に知らせる効果も本
作にはあるものだ。
「戦後は終わった」と言っておきながらアメリカ軍の占領は
継続され、自動延長だけのはずがいつのまにか巨額の「思い
やり予算」を提供している。その辺の安保の問題点はもっと
追求すべきだが、それは日本人のやるべき仕事だろう。
なおテーマ音楽として、武満徹作曲の「死んだ男が残したも
のは」が繰り返し流れるのも印象的だった。

『美人図』“미인도”
朝鮮画壇でエロチシズムの祖とも呼ばれ、18世紀末の朝鮮王
朝に実在した宮廷絵師・申潤福(シン・ユンボク)の姿を描
いた官能歴史絵巻。
韓国で国宝に指定されている画集「惠園傳神帖」の作者とし
ても名高いシンは、1758年の生まれで、一旦は宮廷の図画署
に勤めるがすぐその職を追われたとされる他には、公式記録
にほとんど記述が無く、謎に満ちた人物なのだそうだ。
そのシン=女性という大胆な仮説を立て、シンの生誕250年
に当たる2008年に発表された小説が評判を呼び、本作もその
仮説に乗って描かれた作品ということになる。
主人公は、4代続く宮廷絵師の一家に生まれた末娘。彼女に
は類希な絵師の才能があったが、その時代に絵師は男の仕事

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08月01日(日)
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