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On the Production
by 井口健二
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■マエストロ6、北京の自転車、アウトレイジ、ちょんまげぷりん+製作ニュース+検索方法
は政府から上映禁止処分を受けたとされる作品。
オリンピック招致が決まる直前の経済発展さ中の北京を舞台
に、地方出身でようやく自転車配達便の仕事を得た若者と、
貧しいけれど著名な高校に進学した少年の生活が、1台の自
転車を介して交錯する。
若者の就職の条件は、高性能の自転車を会社から借り受け、
最初は2割の手取り。やがて自転車代を返し終えたら以後は
5割の手取りとなるシステム。そして1ヶ月を頑張り通した
若者は、後1日で自転車代を返し終えることになる。
ところがその日、集荷に訪れた店内でトラブっている内に、
店先に置いた自転車を盗まれてしまう。しかもそのトラブル
で会社からも馘を言い渡されてしまうが…。復職を懇願し自
転車を探し出したら認めるという了解も得る。
一方の少年には自転車で通学する仲間や女友達もいるが、彼
が高性能の自転車をどこで手に入れたかは謎だ。しかも彼は
その自転車を親に内緒で隠し持っている。そして女友達との
デート中に、若者がその自転車を発見する。
仕事に必要な自転車を盗まれるという設定は、ヴィットリオ
・デ・シーカ監督による1948年の『自転車泥棒』と同じで、
そこからの展開も同作をモティーフにしている感じもする。
しかし本作は、2000年の北京を舞台に見事にその時代と人々
を写し出したものだ。
そしてそこには、主人公となる若者たちだけでなく、若者が
暮らす胡同やそこに隣接して建つ高級アパートの窓辺に立つ
女性の姿など、高度成長の狭間でもがき苦しんでいる民衆の
姿がリアリティを持って描かれている。
出演は、若者役にハルピン出身のツイ・リン、少年役に北京
出身のリー・ピン。共に当時18歳だった2人が新人賞をW受
賞した。他に、『始皇帝暗殺』のジョウ・シュン、『藍宇』
のリー・シュアン、『スパイシー・ラブスープ』のカオ・ユ
アンユアンらが共演。
胡同の路地裏での自転車同士のチェイスシーンなど、見事な
躍動感も感じられ、若者たちの姿がリアルに描き出された作
品。青春映画としても秀作で、このような作品まで上映禁止
にする中国政府の偏狭さにも驚かされた。
『アウトレイジ』
北野武監督最新作。
2007年5月『監督・ばんざい!』を紹介したときには、もう
1本「ギャグ映画」を観せてもらってから「ギャング映画」
への再挑戦を期待したい、とエールを贈った。そのもう1本
は2008年7月紹介の『アキレスと亀』になったが、その次の
ギャング映画にはちゃんと再挑戦してくれたようだ。
物語は、やくざたちの黒社会を背景に、権勢を張る組織とそ
の配下の組、さらに組織には加われていない組などが入り乱
れ、上部組織の思惑に踊らされて血を血で洗う抗争を繰り広
げるが…というもの。
ここで中心になるのは末端の大友組。その上部の池元組は親
分が上部組織・山王組会長の盃を受けている。一方、村瀬組
の親分は会長の盃を受けられないでいたが、池元組の親分と
は兄弟分の契りを交わしている。
そんな組織の相関図の中で、村瀬組の縄張りを巡って組織の
思惑が動きだす。その指示は初は池元組を通じて大友組に伝
えられ、大友組の手下たちが動き始めるが、やがてそれは、
互いの組の撲滅を目指す抗争へと発展して行く。
僕はやくざ映画というのはあまり観ていないが、この作品に
描かれた顛末は観ていて理路整然としているし、それなりに
よく考えて作られていたように思えた。現実のやくざがどん
なものかも知らないが、発砲事件はよくニュースにもなると
ころだ。
ただまあ、最後の方の上部組織内での抗争には多少現実味を
削がれたが、本作のそれまでの展開の延長ではこれも仕方が
ない範囲ではありそうだ。つまり作品の全体はカリカチャラ
イズされたやくざ映画として面白く観られた。
出演は、俳優としてのビートたけし、國村準、北村総一朗、
石橋蓮司がそれぞれの親分や会長を演じ、さらに椎名桔平、
加瀬亮、杉本哲太、三浦友和、中野英雄、塚本高史、小日向
文世らが脇を固めている。
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06月06日(日)
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