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On the Production
by 井口健二
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■第183回
おきたいものだが、放送中にゲストが作品賞受賞作を観てい
ないことを暴露する司会者は論外としても、アメリカの3大
ネットワーク(死語?)で番組を持っていると言いながら、
質問する度にWhat you say?と聞き返されるレポータも何様
という感じだった。
 それに、何故か現地アメリカ人の記者ではない外国人記者
クラブの人間ばかりをゲストに呼んでおいて、しかも彼らが
先に選出したゴールデングローブ(GG)賞については殆ど
言及しないというのもおかしな話だった。
 実際、今回のアカデミー賞作品賞では、以前の候補作紹介
の時にも書いたように、GG賞のコメディ/ミュージカル部
門の候補がすべて無視されてしまった訳で、これに言及して
いれば、コメディ主演女優賞のメリル・ストリープの受賞は
無いと断言出来たはずなのに、その辺の分析もできないで、
よく記者と言えたものだという感じもした。
 もっとも、自分たちが賞を贈った『アバター』より、贈ら
なかった『ハート・ロッカー』の方を平然と持ち上げるとこ
ろは、さすがに機を観るのは敏という感じもしたが、GG賞
の結果からストリープとサンドラ・ブロックの対決という図
式を出して、さらにドラマ主演女優賞ブロックの受賞も予言
すれば、GG賞の権威も多少は保てたと思えたところだが…
 いずれにしても、毎年観ている生中継には例年苛々させら
れてきたが、今年は特にそれが顕著に出てきた感じもした。
現地にスタジオを設けるより、日本のスタジオでもっと正確
な分析のできるゲストを呼んで番組を作る方が良かったので
はないだろうか。
        *         *
 続いては記者会見の報告で、ちょっと遅れたが3月6日に
公開された『プリンセスと魔法のキス』のプロモーションで
製作者と2人の監督が来日し会見が行われた。そこで僕は、
作品の中でちょっと気になっていた魔法にブードゥー教を選
んだ理由について訊いてみた。
 その答えは、「元々のアイデアでは舞台は特定されていな
かった。しかし企画をディズニーアニメーションの責任者に
なったジョン・ラセターに説明したとき、ラセターがニュー
オーリンズを舞台にすることを提案。元々ウォルト・ディズ
ニーがその街が好きで、ディズニーランドにも人気スポット
のフレンチ・クォーターを設けていることを思い出して決定
した。そしてニューオーリンズに取材に行ってみると、そこ
では今でも一般の生活の中にブードゥー教が根差していて、
それを選ぶのは自然の成りゆきだった」とのことだ。僕の質
問はもっと単純なつもりだったが、答えは製作の経緯までも
含めた思いの外に大きなものになって満足した。
 またその製作の経緯では、ディズニーは5年前にCGIへ
全面転換を発表してセルアニメーションの機材はすべて廃棄
していたものだが、今回のセルへの回帰を目指したところ、
実は廃棄されたはずの機材がこっそり倉庫の隅に保管されて
いて、その機材がほとんど利用できたとのこと。その機材を
廃棄せずに保管していた担当者は、一躍英雄扱いされたそう
だ。さらに、今回はアニメーターに美術大学を出たばかりの
新人を数多く雇い入れたが、監督たちは最初にウォルトと一
緒に仕事をしていた初代のアニメーターから直接指導を受け
た世代で、さらにその教えを後世に伝えることが出来て嬉し
かったとのことだ。
 そしてディズニーでは、次のセルアニメーションの作品も
計画中であることも紹介された。それは未だ決定ではないよ
うだが、画面を直接観ながらアニメーションを製作できるセ
ルの良さをこれから追求して行くとのことだった。
        *         *
 もう一つ記者会見の報告は、『ウルフマン』で製作主演を
務めたベニチオ・デル・トロの来日会見も行われた。
 そこでは僕は質問できなかったが、他の記者の質問でリッ
ク・ベイカーのスペシャルメイクを採用したことを訊かれ、
デル・トロは以下のように答えていた。
 「それはまずこの作品が1941年の作品のリメイクであり、

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03月15日(月)
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