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On the Production
by 井口健二
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■第9地区、孤高のメス、フェーズ6、エンター・ザ・ボイド、ソウル・パワー、きな子、ヒーローショー
ら医師が派遣されている外科があったが、ろくな手術もでき
ず、失敗すれば無理矢理大学病院に搬送という状態だったの
だ。そして誤診も相次いでいたようだ。
そんな病院に赴任した孤高の医師は、いきなりそこでは無理
と言われた難手術を見事に成功させる。それは手術道具もま
ともに揃っていない中での執刀だったが…。その手術室で医
師のサポートを担当した母親は、「初めてナース帽を被った
とき以来の感動を覚えた」と日記に書き記していた。
やがて孤高の医師は次々に難手術を成功させるが、そんな活
躍は大学から派遣されている無能な医師たちには面白いはず
がない。そんなとき、市民病院を支えてきた市長が議場で倒
れたとの報が入る。そして搬送されてきた市長の診断結果は
肝硬変。もはや移植手術以外に助ける術のない状態だった。
1989年。日本の移植医療は端緒に着いたばかりで、脳死判定
の基準も定まらず、認められるのは生体肝移植のみ。しかし
家族の肝臓は手術に適合するものではなかった。そしてその
同じ病院で1人の若者が脳死状態となり、その家族は、命を
繋ぐことの重要さを認識し、臓器の提供を申し出る。
その手術を行うことは、結果に拘らず医師は施術後に殺人罪
の訴追を受ける恐れがあり、市民病院もその矢面に立たされ
る。それでも孤高の医師は、目の前の患者を救うことが医師
の務めと言い切るが…
ちょっと長めに物語を書いてしまったが、何となくこんな風
に書き残したいと思うくらいの感動を覚える作品だった。主
演は堤真一、共演は夏川結衣。堤はこの手の演技には定評が
あるところだが、今回は夏川に注目した。
夏川は、僕にはちょっと整い過ぎた顔立ちが馴染めない感じ
の女優だったが、今回は多少エキセントリック気味の演技が
サマンサ・モートンのような雰囲気もあって好印象だった。
それに少し現実離れした雰囲気が正にこの物語の語り手には
ピッタリで、僕が女性の登場人物に感情移入して泣けたのは
今回が初めてかと思うほどのものだ。
他には、吉沢悠、中越典子、松重豊、成宮寛貴、矢島健一、
平田満、余貴美子、生瀬勝久、柄本明、隆大介らが出演。監
督は、2008年8月紹介『ラブファイト』などの成島出。地域
医療の問題点なども指摘しながら、2時間6分をたっぷりと
観せてくれる。
『フェーズ6』“Carriers”
終末世界を背景に、過酷な条件の中を生き抜こうとする若者
たちを描いたサヴァイヴァルドラマ。
荒野を貫く街道を男女4人の若者を乗せたベンツが走って行
く。やがてその先に、道を塞ぐように停められたワゴン車が
現れる。乗っているのは父親と幼い娘。父親はガソリンを分
けて欲しいと頼むが、若者たちにもその余裕はない。さらに
娘の異状が見出される。
ところがその場を強行突破した若者たちは、その際に車体が
損傷し、止むなくガソリンを移して親子と一緒に父親の言う
「ワクチンが用意された」とする場所に向かうことになる。
ただし、その条件は…
若者たちは時には無軌道でもあるけれども、最低限のモラル
は持ち合わせているようで、それなりに懸命に生き抜こうと
する姿が描かれている。しかし暴力に訴えるときには決断も
早く、その辺で違和感を感じることの少ない作品だった。
脚本監督のアレックス&デイヴィッド・パストー兄弟は共に
スペインバルセロナ出身で、今までは別々に短編映画などを
撮っていたが、今回はアメリカ資本のそれなりに俳優も揃っ
た作品ということで共同作業が行われたようだ。
その出演者は、昨年の『スター・トレック』でカーク船長役
に抜擢されたクリス・パイン、2005年『サム・サッカー』に
主演のルー・テイラー・プッチ、2007年『プレステージ』な
どのパイパー・ペラーボ、そして2005年『ザ・リング2』に
出演のエミリー・ヴァンキャンプ。
他に、2008年『最後の初恋』などに出演のクリストファー・
メロニーと、テレビシリーズ“Mad Man”にレギュラー出演
していた子役のキーナン・シプカなどが共演している。
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03月14日(日)
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