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On the Production
by 井口健二
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■アヒルの子、ビルマVJ、桃色のジャンヌ・ダルク、BOX 袴田事件 命とは+製作ニュース他
現映像が含まれてはいるが、それが真実を歪めているような
ことはなさそうだった。
ただし、日本人ジャーナリスト長井健司氏の射殺の情報に、
外国人ジャーナリストが殺されたことで状況が変わると期待
するシーンには、その後の日本政府の腰砕けに見える対応も
含めて複雑な気分にさせられた。
それにしても長井氏の銃撃シーンは、明らかに2メートルも
離れていない位置からの彼個人を狙った射殺に観えるが、こ
れを至近距離からの銃撃に特有の火傷がないなどの理由で、
10メートル以上離れた流れ弾として日本政府が言い包められ
ていることには納得できなかった。
まさかこのシーンが再現映像にも観えなかったが…
現状で、アウンサンスーチー女史の軟禁は解かれていないま
まだし、ビルマの民主化への道はまだ遠くも見えるが、小型
カメラのヴィデオ映像がその目的達成への道程を克明に伝え
てくれることに、今後も期待を寄せたい。
『桃色のジャンヌ・ダルク』
1976年生まれ、一浪して入学の国立東京芸術大学は中退する
も、2005年には「幼なじみのバッキー」という絵本作品で、
第10回岡本太郎現代芸術賞に入賞という女流アーティスト・
増山麗奈を追ったドキュメンタリー。
映画は、巻頭で国会議事堂前にピンクのビキニ姿で登場し、
その示威行動が警察の妨害を受けるシーンから始まり、母乳
アートと称するパフォーマンスや、さらに米軍占領下のイラ
クに赴いての地元芸術家と交流など、とにかく行動力溢れる
彼女の姿が綴られる。
その間には、芸大在学中からの卒業製作を拒否=中退などの
行動や、結婚・不倫・離婚・再婚などの彼女自身の生き様も
再現ドラマを含めて描かれるが、それらは何れも現状社会へ
の不満に基づくものであり、それらがある種小気味よく描か
れた作品だ。
監督の鵜飼邦彦は1950年生まれ。1970年代までの日活でアク
ションやロマンポルノの編集を手掛け、独立後は武智鉄二監
督による1980年『白日夢』を始め多数を担当したベテラン編
集者が、2006年に増山のパフォーマンスに興味を持ち、以来
撮影を続けているそうだ。
つまり監督は、なし崩し的に終ってしまった70年安保世代の
人でもあった訳で、僕自身も同じ感覚と思われる監督自身の
欝々とした現代社会への不満が、増山麗奈という素材を得て
表現された作品とも言えそうだ。
そしてそれは、大人の見識も踏まえて見事に表現されたもの
であり、興味本位や生半可な過激さに走ることもなく、情に
も流されずに増山自身を捉えることに務めている。その監督
の誠実さがこの作品を観やすくし、彼女自身の訴えも明確に
伝えているものだ。
今の世の中、女性が元気とは常々言われているところだが、
こんなに元気な女性の姿を観せられると、確かにその通りだ
なあとも思ってしまう。この年代の男性で彼女に対抗できる
男子など果たしているのだろうか。
それからこの作品では、中に登場する彼女の絵画の素晴らし
さも注目したいところだ。特にそのデッサンの確かさは誰の
目に明らかで、その才能が彼女を支えていることも理解でき
た。
それにしてもこの映画では、国会議事堂前で撮影された最初
のシーンの掴みが見事で、それで僕は一気に引き込まれてし
まったものだ。
『BOX 袴田事件 命とは』
死刑判決が最高裁で確定している裁判に対して、その第一審
地方裁判所で死刑判決文を作成した元判事本人が裁判のあり
方に疑問を呈し、死刑囚の無罪を主張し、現在行われている
再審請求への支持を表明するという異例の事態となっている
実話に基づく作品。
昭和41年6月30日の未明、静岡県清水市の味噌工場が放火さ
れ、焼け跡から経営者一家4人の惨殺死体が発見される。そ
の後、工場の従業員で元プロボクサーの袴田厳が逮捕され、
一旦は証拠不十分で釈放されるものの再逮捕。その拘留期限
の3日前に犯行が自白される。
しかし起訴された裁判で被告人は一貫して無実を主張。とこ
ろが事件から1年半もたった裁判の途中で「新証拠」が発見
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03月07日(日)
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