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On the Production
by 井口健二
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■月と嘘と殺人、飛べペンギン、今このままがいい、オーケストラ、9+製作ニュース
4つ目はその課長の両親の話で、老境迎えた夫婦が如何に付
き合うかが描かれる。韓国は今でも男尊女卑の風潮が強いの
かな。夫の姿はかなり横暴に見えるが、妻もそれに負けては
いない。これも日本でも同じような状況はありそうだ。
出演は、2004年1月紹介『Oasis』でも共演のムン・ソ
リとソン・ビョンホが、それぞれ1話目の母親役と3話目の
課長役に扮している。その他、4話目を演じた老夫婦は韓国
テレビ界では大ベテランの人で、2話目の女性新人役は人気
の新進女優だそうだ。
脚本監督のイム・スルレは1996年に監督デビュー、過去には
300万人動員の記録を持っており、今回上映される4作品の
監督の中では一番実績のある人のようだ。そんな手堅さも感
じられた。
物語はそれぞれ独立していてアンサンブル劇というほどには
絡み合っていない。ただ、それぞれの物語の結論は明確には
述べられないが、それなりに丸くは納まっているようで、そ
んな感じの心地良い作品だった。
『今、このままがいい』“지금, 이대로가 좋아요”
「真!韓国映画祭2009」で上映される作品の4本目。
2008年10月紹介『最強☆彼女』などのシン・ミナと、同8月
紹介『M』などのコン・ヒョジンの共演で、父親の違う姉妹
が、母親の死を切っ掛けに生き別れとなっている妹の父親を
探す物語。
シンが演じる妹はソウルでビジネスウーマンとして活躍して
いるようだ。そんな彼女に故郷の済州島で暮らしていた母親
の死が告げられる。そして島に戻った彼女は、島で暮らすシ
ングルマザーの姉と、母親と同居していた叔母と共に葬儀を
済ませる。
しかし、姉の父親の死後に母親と生活していた自分の父親で
もある男性の存在が気に掛かる妹は、偶然見つけた母親宛の
手紙を手に父親の行方を探すことを決意し、その旅に父親の
顔を覚えている姉に同行してもらうことにするが…
性格のかなり違う姉妹が、互いに反発したり、和解したりし
ながら、行方の判らない父親を探す。ドラマとしてはいろい
ろなことが起こりそうな展開だが…。ここに描かれた展開だ
けは全く予想もできなかった。しかもそれが見事な結末を作
り出す。これには参った。
脚本と監督は、ホン・サンス監督の『オー・スジョン』や、
イ・ジェヨン監督の『スキャンダル』の現場にも参加したこ
とがあるというプ・ジヨン。作品はぴあフィルムフェスティ
バルでも上映されたことがあるという女性の短編作家が満を
持して長編デビューを飾っている。
上映時間は90分と短めの作品だが、姉妹の旅に併せて過去の
映像や、叔母の手に託した娘の行動など、いろいろな要素が
手際よくちりばめられ、それらが互いを邪魔することなくそ
れぞれの物語を作り上げている。その構成力にも感心させら
れた。
なお、主演の2人は韓国では若い女性のファッション・リー
ダーとしても認められているとのことで、特にコン・ヒョン
ジンが映画の中で披露するカラフルな衣裳は、若い女性の関
心を呼びそうだ。
また、そんな2人が低予算のインディーズ作品で共演したと
いうことでも話題になった作品のようだ。でもこの脚本を読
まされたら誰でも出演したくなるだろうな。それくらいに見
事な作品だった。
『オーケストラ!』“Le concert”
ソビエト連邦当時に世界的に著名だったボリショイ交響楽団
の本拠地・ボリショイ劇場で清掃員として働く中年の男が、
ふとした偶然からパリのシャトレ劇場に寄せ集めの楽団員を
率いて出演してしまうという人情味溢れる音楽コメディ。
主人公のアンドレイは初老に近い男性、ボリショイ劇場で清
掃員をしているが、実は30年前には天才と呼ばれた交響楽団
のマエストロ(指揮者)だった。そんなアンドレイが1人で
支配人の部屋を掃除中に1通のFAXが届く。それはパリの劇
場からの招請状だった。
そのFAX紙を観たアンドレイの頭にとある発想が閃き、思わ
ずFAX紙をポケットに押し込んだアンドレイは、自ら交響楽
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02月14日(日)
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