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On the Production
by 井口健二
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■ウルトラ銀河伝説、ソフィーの復讐、霜花店、イェロー・キッド、脱獄王、アイーダ、台北に舞う雪(追記)、カールじいさん…(追記)+他
ーお得意のカンフーもちょっとだけ披露されるなどヴァラエ
ティーに富んだものになっている。
脚本と監督は、自身も漫画本を出版しているというエヴァ・
ジン。フロリダ州立大学映画科の出身で学生時代にエミー賞
カレッジアワードも受賞したという才媛の脚本にツィイーが
反応し、プロデュースも買って出たというのが製作の経緯の
ようだ。
それにしてもツィイーは、クールビューティとも称される最
近のイメージからは真逆の可愛い女性の役で、最初の登場シ
ーンではちょっと本人か疑うほどの変貌ぶり。『初恋のきた
道』以来のファンにはうれしい作品だった。
カンヌ映画祭での北京政府寄りの政治的な発言などで物議を
醸したこともあるツィイーだが、そんな彼女が満を持してと
いうか、本人が切望して出演したラヴコメディ。1979年生れ
の女優の実像はこちらの方が近いと思いたいところだ。

『霜花店』“쌍화점”
『マルチュク青春通り』などの作品で有名なユ・ハ監督が、
13世紀ごろに作られたという作者不詳の高麗歌謡「雙花店」
から想を得て描き出した歴史物語。
時は14世紀後半、高麗国が31代恭愍王に治められていた王朝
末期のお話。当時の高麗国は中国・元の属国となっており、
王宮には元から王妃が迎え入れられていた。
ところが王自身は男色家で王妃との間に子供を儲けることが
できない。このため元からは王妃の近親者、つまり元の王族
を次期国王に迎えるよう迫られ、王宮内にはそれを受け入れ
るか否かの対立も生じていた。
その恭愍王は、36人の乾龍衛と呼ばれる近衛部隊を彼らが幼
い頃から育て上げ、そこには美貌の青年たちが集められてい
た。そして恭愍王は、世継ぎを得るため苦肉の策として、自
らが最も寵愛する近衛隊長に王妃を交わることを命じるのだ
が…
王は男色家でも、その寵愛の相手がそうとは限らない。まし
てや彼は、王の寵愛を受けるために、それまでは女も知らな
い身体だった。そんな男子が王妃の相手を勤めたら…そこか
らは言うまでもない物語となって行く。
この展開が、王と近衛隊長との会話の中に見事に凝縮して描
かれており、特に王が隊長に命じる際の台詞や2人が交わす
最後の会話は、この種のテーマの作品では出色の台詞とも言
えそうなもの。この脚本は見事だ。
ただし物語は男女の関係だけでなく、さらにそれを引き立て
るような豪華な王朝絵巻きを描いて行く。そこには王の命を
狙った倭寇の襲来と戦う近衛兵たちの激しい剣戟シーンや、
さらに1000人が登場しているという祝宴なども華麗に再現さ
れていた。
出演は、王役に『MUSA』などのチュ・ジンモ、隊長役にチョ
・インソン、そして王妃役にソン・ジヒョ。いずれもモデル
出身という3人が、R−18指定となる激しい艶技も含めて、
特に男優の2人は乗馬や剣戟シーン、さらに琴の演奏なども
見事に披露している。
なお本作は11月21日から開催の「韓流シネマフェスティバル
2009」で特別上映され、その後の来年2月に日本公開も予定
されている。

『イェロー・キッド』
東京藝術大学大学院映像研究科の製作で、同科の大学生の修
了制作作品として作られた長編映画。独立系映画館主の団体
によって選考される今年度の自主映画のベスト1に選ばれ、
来年2月から全国主要都市の映画館で順次公開される。
脚本・監督は真利子哲也。すでに短編映画では各地の映画祭
などで受賞している人のようだが、製作費200万円、撮影期
間2週間という作品にも係わらず、その実績は伊達ではない
という感じのしっかりした作品だった。
物語は、若いボクサーと漫画家を中心としたもの。その漫画
家は、幼馴染みの元チャンピオンをイメージにしたキャラク
ターで10年前に発表した作品が一部にカルト的な人気を得て
いるらしい。
そんな漫画家が、次作の取材のため訪れたボクシングジムで
1人の若いボクサーと出会う。そのボクサーは両親を亡くし
て祖母と2人暮らしだったが、アルバイトも失職し先の生活
は不透明になっていた。

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11月22日(日)
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