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On the Production
by 井口健二
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■かいじゅうたちのいるところ、誰がため、ウディ・アレンの夢と犯罪、泣きながら生きて+製作ニュース
加担するデンマーク人売国奴の暗殺を実行していた。
その成果は絶大で、彼らにはナチスから高額の懸賞金が掛け
られ、その行動は日増しに危険の度を高めて行く。しかし愛
国心に満ち溢れる2人は、危険も顧みず任務を遂行していっ
た。そしてフレメンには女性諜報員の恋人もできるが…
そんなある日のこと、指令に従って要人暗殺に向かった2人
は、その標的の取った態度に疑問を感じ始める。またフレメ
ンの恋人が2重スパイと指摘される。その一方で指令を発し
た人物が、実は連合国側からの指示のない暗殺も指令してい
た疑いが強まってくる。
果たして2人の犯した殺人は、彼らの信じる正義だったのか
…強まる疑念の中、彼らの信念が試されて行く。
日本における第2次大戦はただの侵略戦争だったから、中国
や朝鮮の人にとって日本人は侵略者でしかなかったが、ヨー
ロッパではナチスが政治理念であるために、侵略された各国
にもナチスの信奉者が現れるなど様相は複雑だった。
そんな複雑さが背景の物語ではあるし、またデンマーク政府
が現在も当時の捜査資料を非公開としているために、事件の
全貌は未だに明らかではないようだ。ただし、戦後2人には
アメリカ政府から「自由勲章」が贈られるなど、その栄誉は
称えられているものだ。
つまり、彼らは国民の英雄ではあるが、行ったことは殺人。
でも、そこが戦場だと考えれば殺人も認められて栄誉が称え
られるのか…。何とも哀しい物語だ。

『ウディ・アレンの夢と犯罪』“Cassandra's Dream”
今年3月に2008年の『それでも恋するバルセロナ』を紹介し
たウディ・アレン監督による2007年の作品。
因にアレン監督は、以前から1年1作のペースをほぼ完璧に
守っており、その2009年度分は“Whatever Works”という作
品が海外ではすでに公開済で、2010年公開予定の作品も撮影
完了しているとのことだ。
そして本作は、2006年6月に紹介した『マッチ・ポイント』
で始まったロンドン3部作の締め括りとされているもので、
実は3部作2作目の“Scoop”は観せて貰っていないが、い
ずれも、ちょっとした出来心が招く重大な犯罪が描かれてい
たようだ。
本作の主人公は、ロンドンに住む兄弟。頭も顔も良いとされ
る兄は父親の経営するレストランを手伝っているが、本人は
もっと大きな仕事をしたいと夢見ている。それでもそれなり
に堅実に人生を歩んでいたが、ある日1人の女性と出会って
しまう。
一方の弟は、元サッカー選手で現在は自動車の修理工をして
いるが、ちょっとアルコールとギャンブルの依存症で、ギャ
ンブルでは時々大当たりを出したりもしている。しかし結婚
を控えて自宅購入資金のために大きな勝負に打って出て…
こんな2人が、最初は「カサンドラの夢」と命名した小さな
ボートを購入するところから、やがて重大な犯罪に巻き込ま
れ、徐々に人生の転換を迫られて行く。
まあ、ほとんどの観客は、自分はそんなことにはならないと
信じて観ていることになると思うが、何処かで一歩を踏み外
すとこんな事態にならないとも言い切れない。そんな人生の
転換期が、ユーモアと皮肉を込めて描かれる。
『…バルセロナ』の喧噪とも言える台詞やナレーションの氾
濫に比べると、本作の物語は淡々と進むが、行われているこ
とは重大。しかしそれが実に巧みに主人公たちを誘導し、そ
うしなければいけないように仕向けられてしまう。
この作品を観ていると、アレンには詐欺師の才能があるなと
も思えてくる。それくらい言葉巧みに物語が進められて行く
ものだ。出演者は、兄弟役にユアン・マクレガーとコリン・
ファレルが扮する他、トム・ウィルキンスンらイギリスの俳
優たちで固められているようだ。

『泣きながら生きて』
2006年11月3日にオンエアされたフジテレビ製作のドキュメ
ンタリー番組を放送後3年を経て劇場公開するという作品。
一般的にテレビ番組を改めて劇場で公開する場合には、製作
者が当初からその認識の許で番組を製作していない限り、隣

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11月08日(日)
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