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On the Production
by 井口健二
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■第22回東京国際映画祭・コンペティション以外(2)
中国四川省の成都を舞台に、当地を襲った大地震を背景とし
た過去未来2つの物語が、それぞれ香港のフルーツ・チャン
監督と、中国ロック界の父とも呼ばれるミュージシャン=ツ
イ・ジエンの初監督挑戦で描かれる。
なお、元々は11月に日本公開される韓国ホ・ジノ監督による
『きみに微笑む雨』を含めた3話構成で企画されたが、ホ作
品が独立した映画となったため、本作は2話で78分の短めの
作品になっている。
その第1話は、2029年を背景にした未来もの。雑踏で父親と
逸れ、その後の2008年3月の大地震で養父も失った少年と、
その大地震の時に少年に命を救われた少女。しかし2人の再
会は思いも寄らぬ出来事がきっかけとなる。
ロックはカンフーに通じるところがあると考える師匠の許、
修錬に励んでいた少年が訪れたライヴハウスで、少年はやく
ざといさかいを起こす。そして支配人に大怪我を負わす。そ
の監視映像で少年を確認した少女は支配人の従姉妹だった。
そして第2話は、1976年が背景。その町の茶店は歴史のある
名店だったが、そこで培われた伝統の文化も共産主義体制下
で終えるかも知れなかった。そこに革命前の店の持ち主が戻
ってくるまでは…
その前店主は、ウェイトレスの少女に長壺と称する2尺以上
の長い注ぎ口を持つヤカンの使い方を伝授する。そして茶の
真髄を伝えて行く。しかし革命支持者たちはそれが気に食わ
ないようだ。
2作品に繋がりがあるものではない。どちらもお話自体は他
愛ないものだし、映像的にもさほど驚くようなものもなかっ
た。ただお話としてはそれぞれに面白い部分もあり、もう少
し膨らまして、ホ監督作品と同様の独立した作品として観せ
てもらいたい感じは持った。

『心の森』(natural TIFF部門)
スウェーデン北部の森林を舞台に、その樹上に家を作ろうと
する3人の男性と1匹の犬を撮影したドキュメンタリー。
元々スウェーデンには樹上に食物などの保存庫を作る風習は
あったようで、その伝統などを検証しながら樹上の家の建設
に着手する。
ツリーハウスというのは、日本も愛好家が居るように世界中
にあるものと思っていたがそうでないようで、本作の中では
役所に許可を求めたら前例が無いから勝手にやっていいとい
う話になっていた。もっとも日本でも個人の敷地内なら許可
は不要なのかな?
そんな樹上での建設の日々の記録映像に併せて、作家やジェ
ンダー研究家や宗教家などへのインタヴュー、さらにスウェ
ーデン人のノーベル文学賞受賞作家がむかし住んでいたとい
う森林地帯の住まいを訪ねる映像などが挿入される。
その中では、家にはポーチがあるべきだ…など都会の集合住
宅との対比が語られる部分もあって、いろいろな面からの人
間と森との関わりが検証されて行く。お陰でツリーハウスに
もポーチが付くことになる。
ということで、樹上の家が出来るまでが描かれるものだが、
作品中では特にこれといった事態が起きる訳でもないし、被
写体は森林がほとんどで、森の静かさと同様に淡々とした作
品と言えるものだ。それに最後にはちょっと幻想的な映像も
観られた。
ただしこの家は、樹齢100年以上とされる松の木に作られる
のだが、この樹がかなり真っ直ぐに生えているもので、余り
どっしりという感じではない。それで恐らく縦方向の強度は
計算されているのだろうが、横風を受けたときにどうなるこ
とか。
画面では家の作られた位置が地上からはかなり高いようにも
見え、ここに風を受けると梃子の原理で根元に掛かる力は相
当になるはず、その辺が多少心配にはなった。

『カンフー・サイボーグ』(アジアの風部門)
『トランスフォーマー』から着想したと思われる香港製VF
Xアクションコメディ。危険な任務を人間に代って遂行させ
るために開発されたロボット警官の第1号を巡る物語。
主人公は職務に忠実な熱血型の刑事。ある日のこと彼の相棒
として新たに人工知能を装備して開発されたロボット警官の
第1号が配属される。ただし、その警官がロボットであるこ

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10月23日(金)
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