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On the Production
by 井口健二
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■ブラック会社…限界、谷中暮色、海角七号、スペル、バカは2回海を渡る、きみがぼくを見つけた日、倫敦から来た男、戦慄迷宮(追記)+他
監督・脚本・編集は、2005年にオダギリジョー主演の『BIG
RIVER』などを撮っている舩橋淳。撮影は2009年『禅』など
の水口智之。なお撮影にはパナソニックのHDカメラが使用
されているようだ。
その他に、CGIによる五重塔の再現などもあるが、それは
ちょっと趣向が違ったもので、僕としては実景の中に、谷中
の何処からでも観えたという当時の人たちが観ていた塔の景
観なども再現して欲しかった。
谷中五重塔は、僕自身もほとんど知らない東京の原風景。実
際に焼失から50年も経つと憶えている人も少なくなってくる
頃かも知れない。そんな記憶を呼び戻す最後のチャンスとし
ても貴重な作品のように思えた。他にもこんな原風景は日本
中にありそうだ。

『海角七号』“海角七号”
台湾で『タイタニック』に次ぐ史上第2位の興行成績を納め
たという作品。敗戦後の日本人の引き揚げによって引き裂か
れた日台の男女の思いが、現代の台南の海浜を舞台に蘇る。
主人公の1人は、台北でのバンド活動に挫折し故郷の台南の
町に帰ってきた台湾人男性。そしてもう1人は、本来はモデ
ルだが北京語が話せるために通訳兼雑用係のように使われて
しまっている日本人女性。
その女性が、仕事で訪れた現地で、近く開催される音楽祭に
招請された日本人歌手との折衝役として働くよう頼まれると
ころから物語は始まる。しかも彼女は、前座を務める即席の
地元バンドの面倒を見る羽目にも陥る。
一方、男性は郵便配達のアルバイト中、宛先が日本統治時代
の住所で書かれているために、配達不能になっている手紙の
束を見つける。それは、敗戦後に帰国しなければならなかっ
た日本人教師が、教え子の台湾人女性に宛てた切々たるラヴ
レターだった。
そして男性は、地元バンドのリードヴォーカルに引っ張り出
されるのだが、そのバンドは少女から老人まで多様な人々が
寄せ集められたまとまりの無いメムバーで…そんな状況を背
景に、日本人と台湾人の2組の男女の切ない恋が描かれる。
この男性を、実際に一時は挫折を経験したという人気歌手の
笵逸臣、女性を『ピンポン』『頭文字D』などに出演の後、
台湾で中国語を勉強していた田中千絵。そして日本人歌手を
「地球上で一番優しい歌声」と言われる中考介が本人と教師
の2役で演じている。
それにしても、住所や氏名までもが日本風に付け替えられた
日本統治時代。それは台湾人にとって屈辱の時代のようにも
思えるが、その背景でこのような美しい作品が作られる。し
かも、台湾では史上空前の大ヒットになったという。その事
実には日本人として何とも不思議な感覚に捕われる。
因に、台湾の映画事情では国産と外国映画の格差が激しく、
国産映画の興行成績は常に外国映画の2桁下辺りで、従って
台湾映画で第1位と書かれていても、その興行はさほど大き
なものではない…という話を以前に聞いたことがある。
だからこの作品が、『タイタニック』に次ぐ史上第2位の興
行成績を納めたというのは、台湾映画界にとっては正に未曾
有の出来事だったようだ。そんな大ヒットをこの映画は成し
遂げているのだ。しかもこの内容で…
今年4月に紹介したドキュメンタリーの『台湾人生』と併せ
て観ると、日本人として何かを考えなければいけないような
気持ちにもさせられた。

『スペル』“Drag Me to Hell”
『スパイダーマン』で評価の高いサム・ライミ監督が、彼の
原点であるホラーに回帰したとされる作品。
銀行の融資担当で次期支店次長の席も見えている女性銀行員
が、窓口に来たジプシーらしい老婆の返済期限の延期要請を
自分の出世欲も絡んで断ってしまったことから、その老婆に
恐怖の呪いを掛けられる…
出世欲も絡んでとは書いたけれど、こんな状況は社会生活を
していればいくらでもありそうなもの、そんなことで呪いを
掛けられては給ったものでは無い。でも主人公には呪いが掛
けられ、それによって飛んでもない災厄が次々に襲い掛かっ
てくることになる。

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09月20日(日)
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