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On the Production
by 井口健二
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■PUSH、男と女の不都合な真実、アンを探して、副王家の一族、携帯彼氏、脳内ニューヨーク+製作ニュース
介した『あなたは私の婿になる』も髣髴とさせる作品だ。
実は、本作の試写を観る直前に『あなたは…』の宣伝担当者
から電話で同作の意見を聞かれたのだが、そこで『あなたは
…』の男性主人公が、元々女性主人公を好きだったという持
論を述べたら、女性の担当者は意外という反応だった。
しかし『あなたは…』の彼は、元々恋愛感情がなければ彼女
に3年も従っている訳はないし、すでに彼には恋心があった
と観るのが男性の心理だろう。その辺の感覚が、多分男性の
脚本家ピーター・チアレッリによって見事に描かれていたも
のだ。
それに対して本作の脚本家はニコール・イーストマンらの女
性陣。実は僕自身、バトラーの演じたキャラクターの心理に
は多少の違和感を覚えるのだが、その辺が女性の眼なのかと
思うと、ちょっとニヤリとするところだ。
つまり本作と『あなたは…』は、良く似たシチュエーション
でありながら真逆の描き方がなされているもので、それぞれ
は男性の心理と女性の心理を見事に描いているようだ。それ
を比較してみるのも面白い。
因に、『あなたは…』の監督は女性で本作の監督は男性とい
うところにも、その特徴が明確に現れたようだ。
観るなら両方観るべし、そして異性と意見を述べ合ってみる
のも面白そうだ。

『アンを探して』
『赤毛のアン』の舞台プリンス・エドワード島を訪れた日本
人の少女と彼女を取り巻く人間模様を描いた作品。
少女は、祖母がインターネットで知り合ったという島在住の
女性を訪ねて1人でやってくる。その女性は日本人の建築家
と結婚してその場所に住んでいるが、その夫はすでに亡く、
女性は亡夫以外の男性を敬遠しているようだ。
そして少女は、島を訪れた目的として50基以上あるという灯
台を順に見に行き始めるが…実は彼女には隠した別の目的も
あった。それは一緒に来るはずだった祖母が心に秘めていた
人生の1頁を捲るものでもあった。
物語の中では、村岡花子訳の『赤毛のアン』の一部が朗読さ
れるなどモンゴメリの作品を意識したものになっているが、
『アン』の現代版は作らないというコンセプトで、第2次大
戦にまで遡るいろいろな出来事が織り込まれる。
そんな物語が、6月に公開された『はりまや橋』などの新人
女優穂のかが演じる主人公を中心に、ロザンナ、吉行和子、
さらにジョン・ウェインとの共演歴もあるというカナダ人俳
優ダニエル・ピロンらの共演で描かれる。
因に、とんねるず石橋貴明の娘で子供の頃はハワイで成長し
たという穂のかは、自身の英語は堪能だそうだが、映画では
たどたどしい英語でシャイな少女を好演していた。
物語の原案と製作は、『KAMATAKI』などクロード・
ガニオン監督のパートナーとして知られるユリ・ヨシムラ・
ガニオン。脚本と監督は、『KAMATAKI』で助監督を
務めた宮平貴子。
僕自身は『赤毛のアン』に思い入れのある人間ではないが、
映画では小説に書かれたアンの言葉が主人公たちを導いて行
く。そんな物語が、現地ロケされたプリンス・エドワード島
の自然の中で丁寧に描かれていた。
また物語の背景には第2次大戦が存在するが、戦争を美化す
ることなく描いていることにも好感が持てた。
なお、劇中でロザンナ扮する未亡人が亡き夫について語るシ
ーンがあり、それはロザンナ本人の思いにも重なって感動的
なシーンになっていた。ずるいと言えばずるい仕掛けかもし
れないが、それも映画というところだろう。

『副王家の一族』“I vicerè”
19世紀後半から20世紀初頭のイタリア、シチリア島を舞台に
した歴史ドラマ。
当時のイタリアはまだ国家統一が成されておらず、その中で
のシチリア島はスペイン・ブルボン家の領地としてスペイン
国王に任命された副王によって統治されていた。
主人公はそんな副王家に長男として生まれる。しかし厳格な
父親のしつけは厳しく、常に拷問まがいの心身の鍛練に明け
暮れていた。そしてそんな主人公は、父親の弟で旅行などに

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08月23日(日)
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