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On the Production
by 井口健二
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■エッチを狙え、さそり、アンナと過ごした4日間、シャンソニア劇場、HIGH WATER、牡丹灯籠、サブウェイ123、HP/謎のプリンス
ってテイストはかなり異なるものなのだが…
ただ、その熱っぽさがちょっと物語から浮いている感じもあ
って、何となく物語の全体がしっくりとしていない。アクシ
ョンのハードさは、さすが香港映画のレヴェルの高さを感じ
させるし水野もよく頑張っているだけに、その辺が多少もっ
たいない感じもした。
なお、エンディングテーマを中村中がカヴァーしていて、そ
の歌いっぷりがオリジナルとは違う本作のイメージを表わし
ているようだ。それなら思い切ってこの歌を巻頭に持って行
って、そのイメージを強く打ち出しても良かったように思え
たが。

『アンナと過ごした4日間』“Cztery noce z Anna”
昨年の東京国際映画祭コンペティションに出品され、審査員
特別賞を受賞した作品。
実は映画祭でも観ているのだが、昨年は映画祭の報告をしな
いままになっているので本作の紹介もしていなかった。幸い
日本公開が決まったので改めて紹介できるものだ。
物語の主人公は、病院の焼却場で働いているちょっと魯鈍?
かも知れない男性。年老いた祖母と2人暮らしだが、目撃し
ただけのレイプ事件の濡れ衣を着せられたり、指輪の窃盗を
疑われたり…、それでも実直に生きている男だ。
そんな男が、祖母の死去を切っ掛けに飛んでもない行動に出
る。彼が目撃したレイプ被害者の看護婦に祖母が使っていた
睡眠薬を飲ませ、彼女が熟睡している間に彼女の部屋に忍び
込み始めたのだ。そんな男の、哀しくも微笑ましい4日間が
描かれる。
監督は、ポーランド出身で1962年ロマン・ポランスキー監督
の『水の中のナイフ』の台詞などにも協力し、後にベルギー
に渡って1970年にはコナン・ドイル原作『勇将ジェラールの
冒険』を監督するなどしたイェジ・スコリモフスキ。
俳優として1997年『マーズ・アタック!』などにも出演し、
2007年には『イースタン・プロミス』に顔を出して復活をア
ピールした監督が、監督としては1991年以来17年ぶりに手掛
けた作品ということだ。
初期のスターリン批判、後には「連帯」への加担などで2度
に渡って祖国を追われた監督が、17年ぶりに手掛けたのはポ
ーランドを舞台にした社会の矛盾の中に生きる男の姿を描い
た作品だった。
降り続く雨や雪などが寂しい風景を作り出す中で、それでも
主人公は懸命に生きている。そしてちょっとした出来心、そ
れも彼は相手に被害を及ぼすようなことはしない。それどこ
ろか彼がしたことは…
そんな主人公の姿が、ユーモラスな演出と共に、愛しくなる
くらいに切ない物語の中で描かれる。それでも彼の置かれた
立場には、現実の厳しさが観客にも突きつけられる。そんな
現代に生きることの苦しさが表現されているような作品だっ
た。
出演は、共に舞台出身のアルトゥル・ステランコとキンガ・
プレイス。的確な演技は落ち着いて観ていられたものだ。

『幸せはシャンソニア劇場から』“Faubourg 36”
1936年、人民戦線時代のフランス。フォブールと呼ばれるパ
リ下町に建つ劇場を背景に、不況に喘ぐ劇場関係者たちが、
ナチスの陰や共産主義の台頭など世情不安の中を生き抜いて
行く姿を描いた作品。
映画は、警察の取調室で1人の中年男が取り調べを受けると
ころから始まる。彼の罪状は殺人。そして物語では、彼がそ
の罪を犯すまでの経緯が綴られて行く。
それは前年の大晦日、劇場がギャングのボスのものとなり、
閉鎖が宣告されたことが発端だった。主人公はそんな劇場で
長年裏方として働いてきた男性。しかしこの事態で失業し、
同時に舞台の花形だった妻にも逃げられてすっかり落ち込ん
でしまう。しかも息子が警察に補導され、無職の彼は息子の
養育権も取り上げられる始末。
そんな時、劇場の封鎖を破った芸人がこっそり興行を始めて
いた。そこにギャングの連中が乗り込んで来るが共産かぶれ
の元照明係がその前に立ちはだかり、主人公は行き掛かりで
占拠を宣言、ボスから1カ月の期限で劇場を借りることにな
る。
そして始まったオーディションには、昔の仲間やいろいろな

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07月05日(日)
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