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On the Production
by 井口健二
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■屋根裏のポムネンカ、山形スクリーム、妻の貌、クヌート、3時10分、決断のとき+製作ニュース
ただし物語の構成にはかなり弱いものがあって、特にクライ
マックスの展開に関しては、それぞれのシーンの見た目は良
いが全体を通すと辻褄が合わない。つまりキーとなっている
あれは、あそこにあってはおかしいのだ。
とまあ、マニアとしてはそんなところに大きく引っ掛かって
しまうものだが、その他の御都合主義に関しても、もう少し
捻りがあればもっと面白くなるような感じのものも多かった
し、肝心の歌があれでは誰の心を擽りたいのかもよく判らな
い部分もあった。
結局、全体的に脚本の練り込み不足が感じられて、それは竹
中らが協力しても基本的な弱さは補い切れなかったようだ。
でもこの作品では、竹中が初めて本格的なコメディ映画の監
督に挑戦している訳で、それはこれから先の作品に期待した
いものだ。
主演は『神童』『君にしか聞こえない』などの成海璃子。他
に波瑠、紗綾、桐谷美玲、AKIRA、マイコ、生瀬勝久、
由紀さおり、温水洋一、沢村一樹、そして竹中直人が共演。
さらに荻野目慶子、石橋蓮司、赤井英和など、大勢のゲスト
が登場する。
これが日本のコメディ映画の現状として観たらよいという感
じの作品だ。

『妻の貌』
広島在住の映像作家=川本昭人が50年以上に亘って原爆症の
妻を撮影した作品。
原爆症といっても、この夫人の場合は戦後もかなり経ってか
ら甲状腺癌の形で発症したもので、いわゆるケロイド等があ
る訳ではない。しかし甲状腺の異状は、常に気怠さが付き纏
うなど、精神的な負担が大きいものとされている。
そんな夫人は、それでも12年に亘って寝たきりの夫の母親の
介護を続けたという。それは病人に病人の世話をさせるとい
う厳しいものだったが、それでも献身的な夫人の介護は、お
互い若い頃にはあったという嫁姑の確執を超えた見事な介護
ぶりだった。
それに合わせて、子供や孫の成長や親類縁者との交流なども
描かれて行く。実際ほとんどのシーンはそういった家族の記
録なのだが、そこに広島→原爆症という陰が色濃く描かれて
行く。それは広島の人なら描かなければいけないことなのだ
ろう。
僕自身、自分の母親が甲状腺腫を患った(母は広島関係者で
はないが、若い頃に受けた放射線治療が原因だったようだ)
ことがあり、その病気には多少の知識もあった。自分の母親
は手術も成功して健在だが、本作の夫人のような状況も理解
できるものだ。
そんな病気を抱えながらも生き続けなければならない。それ
は広島→原爆症だけに限られるものではないが、逆にその状
況であることによって、特に映画祭などでは取り上げられる
機会も増えるのだろうし、それを利用すると言っては語弊が
あるが仕方ない面もある。
ただ、このようなことは広島→原爆症に限らず、他の難病で
も起こっていることだということは理解したい。病気という
ものは本人とその周囲にもいろいろな影響を及ぼす。それを
理解して病気と付き合わなければいけないものなのだ。
なお本作は、2001年に短編映画として製作されて神奈川映像
コンクールでグランプリを受賞した作品に、川本監督の以前
の短編作品などを挿入し、新たな長編作品として再構成した
もののようだ。
ただし、音声の繋がりなどの編集に多少ぎこちなく感じると
ころがあったが、それは意図的なのかどうか、その辺りがち
ょっと気になった。

『クヌート』“Knut und seine Freunde”
ベルリン動物園で母グマが育児放棄した後に人工飼育され、
その是非が話題になったホッキョクグマを巡るドキュメンタ
リー。
人工飼育中の仔グマを安楽死させろと主張した輩がどういう
立場の人間か知らないが、すでに成長している生物を殺せと
言えるのは相当に偏った考え方の持ち主なのだろう。言論は
自由だが、人間として言うべきことではないように感じる。
そんなクヌートの物語。ただし映画はそのようなことには殆
ど触れない。わずかにナレーションで触れる程度だ。実際そ
れは瑣末なことだしそれで充分なものだ。しかしそのお陰で

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06月14日(日)
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