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On the Production
by 井口健二
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■ターミネーター4、コネクテッド、地下鉄のザジ、ウィッチマウンテン+製作ニュース他
オリジナルの『セルラー』については、2005年1月に作品を
紹介しているが、サスペンスからユーモアまでが1時間35分
の上映時間の中に見事にバランスされた作品だった。その作
品がリメイクでは上映時間が1時間50分になっている。
その長くなった15分には、主人公の家族関係などが描かれた
りもしているが、主にはアクションが強化されている。オリ
ジナルのアクションはそれほど大掛かりなものではなかった
が、リメイクではカーチェイスから銃撃戦、さらに格闘まで
かなりの物量で描かれた。
ただまあ、多少やり過ぎの感じは否めないところで、それを
単純に面白いと思えるかどうかは、観客の心境にも拠りそう
だ。僕自身はオリジナルへの思い入れもあるから、どちらか
と言うと退いてしまった部分もあるが、そんなことを気にし
なければ、その物量を楽しめば良い作品だろう。
出演は、『エレクション』などのルイス・クー、テレビドラ
マ『流星花園』のバービー・スー、『エグザイル/絆』のニ
ック・チョン。そして誘拐犯を、『王妃の紋章』などの若手
俳優リウ・イエが演じている。
監督は、ジャッキー・チェンの製作の許『ジェネックス・コ
ップ』シリーズなどを手掛けてきたベニー・チャン。元々が
アクション得意の監督だが、今回はその持てる力を最大限に
投入したものだ。
携帯電話の充電器を手に入れるエピソードなど、ストーリー
展開はほぼオリジナルの通りだが、それがとにかく拡大され
ている。そこにはハリウッド映画よりタブーが少ない感じの
部分もあって、今後も続くかも知れない香港版リメイク映画
の方向性も示しているようだ。
なお最近の情報では、最初はイギリス映画で、その後にハリ
ウッドでリメイクされた“The Italian Job”(ミニミニ大
作戦)を、インドの映画会社が契約してリメイクする計画も
進んでいるようで、その辺の動きにも注目したいところだ。
『地下鉄のザジ』“Zazie dans le métro”
1957年の『死刑台のエレベーター』で鮮烈な監督デビューを
飾ったルイ・マルが、1960年に第3作として発表した作品。
その作品が、ディジタルリマスターによる完全修復版で帰っ
てきた。
フランスの人気作家レーモン・クノーのベストセラーから、
監督と、監督の第4作『私生活』にも協力するジャン=ポー
ル・ラブノーが共同で脚色。原作は口語表現を駆使した実験
的な作品で映画化不可能とも言われていたようだが、それを
見事にスラップスティックな映画に仕上げている。
物語は、母親と共にパリにやってきた少女ザジが、母親が愛
人との蓬瀬を過ごす間を、叔父の家に預けられる。そのザジ
はパリで地下鉄に乗るのが楽しみだったが、その日のパリの
メトロはストライキ決行中。やむなく街に出たザジに、いろ
いろな冒険が待ち構えている…というもの。
出演は、ザジ役に事実上この1作だけを残したカトリーヌ・
ドモンジョ。叔父の役には、1989年『ニュー・シネマ・パラ
ダイス』で国際的に評価されるフィリップ・ノワレが扮して
彼の出世作となっている。
他に、1963年『地下室のメロディー』などのカルラ・マルリ
エ(デビュー作)、1983年『ギャルソン!』などのユベール
・デシャンらが共演。
僕にとっては学生時代にテレビで観て以来の再見となった。
当時はヌーヴェルヴァーグの先駆けとも言われた作品で、そ
れなりに小難しくも評価されていたと思うが、見直しての感
想は普通に楽しい作品だった。
巻頭パリに向かう列車の運転席からの映像に始まって、当時
のパリを彷徨うザジの姿が観光映画のように描かれて行く。
そしてその間には、移動しているのに同じ建物が繰り返し現
れる映像や、ザワークラウトの皿を投げ合うなどのスラップ
スティックな仕掛けもいろいろ用意されている。
ロリータ趣味らしき男性が登場したり、叔父さんがゲイで女
装の踊り子であったり、はたまた緊急事態であるはずなのに
話し込んでしまう男性たちなど、昔観たときは理解できなか
った部分も、今観るとそれはそれとして理解できてしまう。
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05月31日(日)
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