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On the Production
by 井口健二
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■幼獣マメシバ、僕とママの黄色い自転車、モーニング・ライト+製作ニュース
物語としてはその謎を解いて行く過程での少年の成長が丁寧
に描かれる。それは他人への愛と、他人の吐いた嘘への許し
の物語だ。そしてそこには少年の愛犬の存在も上手く活かさ
れていた。
さらに、少年が行く道に沿って登場するいろいろな人物が彼
の旅をサポートし、また少年からいろいろなものを受け取っ
て行く。それらは、時にユーモラスに、時にシリアスに描か
れて観客に感動を与えて行く。
主演は、2004年『いま、会いにゆきます』などの名子役・武
井証。母親役を鈴木杏香、父親役を阿倍サダヲ。他に西田尚
美、甲本雅裕、柄本明、鈴木砂羽、市毛良枝らが共演してい
る。特に父親役の阿倍は、普段とはかなり違う役柄だ。
少年が黄色い自転車に乗って遠くの母を訪ねて行くという事
前に紹介されたストーリーを読んだときには、かなり無茶な
展開だなとも思ったものだが、物語はちゃんと辻褄が合うよ
うに作られている。脚本は、2002年『パコダテ人』などの今
井雅子。
なお、原作での旅の同行者は猫だそうだが、映画化ではジャ
ックラッセルテリアが表情豊かに演じている。その体重は猫
よりかなり重いと思うが、主演の武井が自転車の載せ降ろし
でしっかり抱いている姿が印象的だった。

『モーニング・ライト』“Morning Light”
ロサンゼルスからハワイ・ダイアモンドヘッドまでの太平洋
を舞台に、総距離4120kmに及ぶ外洋ヨットレース=トランス
パシフィック(トランスパック)に挑んだ若者たちの姿を追
ったディズニー製作のドキュメンタリー作品。
ディズニーのドキュメンタリーというと、1950年代にアニメ
ーションの参考用に撮影されたとも言われる動物の生態など
を写した『自然の冒険』シリーズが有名だが、本作はそんな
ディズニーが初めて人間を被写体に選んだということでも話
題になっていたようだ。
その内容は上記の通りヨットレースに絡むものだが、実はそ
れまでに外洋経験はほとんどない若者たちが応募によって選
ばれ、初挑戦するというもので、その訓練の模様から実際の
レースの顛末までが描かれている。
因に題名は、ウォルト・ディズニーの兄で会社の経営面を担
当していたロイ・ディズニーが所有する艇の名前で、ロイは
トランスパックには16回出場、その内2回でスピード記録を
打ち立てる程のヨットマンとのことだ。
そんなロイが、若者たちに夢を与えようと企画したヨットマ
ンへの挑戦を記録した作品でもある。そこには大学生を中心
に最初は30人が集まり、そこから15人が選ばれて半年間に及
ぶハワイでの訓練が開始される。しかし実際にレースに参加
できるのは11人だけだ。
しかもその11人を選ぶのも、その前にスキッパーと呼ばれる
艇長を決めるのも、すべて訓練生たちが自主的に行うという
建て前で、そこでの人間模様も作品の彩りとなっている。そ
れらがコーチたちへのインタヴューと若者たちのモノローグ
によって綴られて行く。
そしてレースでは、艇のサイズ別のクラス優勝が最大の目標
とされるが、同じクラスにはクルー全員がプロというライヴ
ァル艇が参加。技術や天候の変化を先読みする能力、そして
判断、決断などのいろいろな状況が描かれる。
ヨットを描いた作品では、3月に日本映画の『ジャイブ』を
紹介したばかりだが、本作ではもっと現実的なヨットの全体
像が見られる作品にもなっている。なお「ジャイブ」という
言葉の意味も本作では解説されていた。
お金持ちの道楽という感じもするヨットレースだが、本作の
エピローグで紹介される訓練生たちの進路を見ると、この企
画が彼らに夢と希望を与えたことは確かなようだ。
        *         *
 以下は製作ニュースだが、今回は映画紹介が少なかったの
で、たっぷりと報告しよう。
 まずは続報というか、そろそろ本気のところが聞きたいと
思っていた“The Hobbit”の映画化に関して、ファンタシー
系の映画雑誌Empireが、監督ギレルモ・デル=トロと製作者
ピーター・ジャクスンに対しインタヴューを行ったようだ。

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05月03日(日)
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