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On the Production
by 井口健二
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■雪の下の炎、ジョニー・マッド・ドッグ、コード、マーターズ、ミュータント、伯爵夫人
現地で当事者だった子供たちを集めて撮影された作品では、
ブラジル映画の『シティ・オブ・ゴッド』が思い浮かぶもの
だが、本作ではその作品にも劣らない鮮烈さと壮絶さで、現
代社会の一面が刔り取られている。
これが目を背けてはいけない世界の現実ということだ。なお
撮影後には、内戦で苦しむ子供たちのために、ジョニー・マ
ッド・ドッグ基金が設立されているそうだ。
『コード』“Le Code a change”
3月12日から六本木で開催される2009フランス映画祭で上映
される作品。
2003年6月に紹介した『シェフと素顔と、おいしい時間』な
どのダニエル・トンプソン監督が、現代人の恋模様を巧みな
アンサンブル劇で描き出す。
6月21日の夏至の日、各所で路上音楽祭が開催されているパ
リ・ベルヴィル地区にあるアパルトマンの一室で、主人公の
友人やそのまた友人などが集って開かれる夕食会。それは気
軽な毎年恒例の集いだったが…そこに集まる人々の上辺とは
裏腹な想いが描かれて行く。
それは夫婦の危機であったり、不倫であったり、また長く疎
遠な父親と娘の関係であったり、いろいろな人生の機微が綴
られる。そして物語は翌年の6月21日へと飛び、その1年間
の変化などが描かれる。
上辺だけを繕って臨むパーティ、その上辺が徐々に剥がされ
る。ただそれだけの物語なら過去にもいろいろな作品があり
そうだが、本作ではそこに1年の間隔を置くことで、その間
の変化がいろいろと際立たせられる仕組みとなっている。
本作では、その構成の見事さにまずは拍手を贈りたくなって
しまう。そしてそこで明らかにされるいろいろな状況が、見
事に登場人物たちの本音と建前を描き出す。しかもそれが決
して全て解決されるものではないことも、人生そのものとい
う感じがする。
人生なんて全て順風満帆ではないし、上辺を繕いながらもい
ろんなことが人々を苦しめ、迷わせている。それは悲劇や喜
劇というほど大袈裟なことではなくても、多分この物語に出
てくる程度のことは、よくある悩みなのかも知れない。
他人の生活を覗き見ているような作品ではあるけれど、観終
って悪い気分にはならなかったし、そんな人生の一時の風景
が心地よく描かれた作品と言えそうだ。
なお題名の「コード」には、最初「暗号」のことかと思って
観に行ったものだが、本作では「ドレス・コード」などに使
う「規定」というような意味だったようだ。その「規定」が
少しずつ変化して行くという物語だ。
『マーターズ(仮題)』“Martyrs”
3月12日から六本木で開催される2009フランス映画祭の中で
13日の金曜日に「ホラー・ナイト」と銘打たれて上映される
作品。
長く虐待を受けていたと思われる少女が保護される。最初は
他人を寄せつけなかった少女は、やがて1人の少女に心を開
くようになる。そして15年の歳月が流れ、虐待を受けていた
少女はその犯人を突き止める。しかしそれは…
虐待の様子が執拗に再現され、それ事態がかなり怖気を振る
う描写となっている。しかもその一方で、復讐の鬼と化した
少女の殺戮の様子や、そこに現れる謎の存在との葛藤など、
ホラー描写のオンパレードと行った感じの作品だ。
しかしこの作品はそれだけで終るものではない。
題名のMartyrは、英語もフランス語も同じキリスト教の殉教
者のことのようだが、物語では後半その題名の意味が徐々に
明らかにされて行くことになる。
僕自身は余り題名の意味は考えずに観ていて、ナチスか大金
持ちの秘密実験にでも絡むのかなと考えていたが、殉教者だ
そうで、物語はかなり壮大なバックグラウンドを持つものに
もなっている。
ただ、まあもう1歩捻りがあっても良かったかなという感じ
ではあったが…それでも通り一遍の物語に終らせないのは、
さすがは近年、『ハイテンション』『ミラーズ』のアレクサ
ンドル・アジャなど、俊英を誕生させているフランスホラー
映画界というところだ。
出演は、虐待を受けていた少女役に2007年11月紹介『中国の
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03月08日(日)
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