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On the Production
by 井口健二
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■ブラッド・ブラザーズ、ダウト−あるカトリック学校で−、チェ28歳の革命/39歳別れの手紙(再)
任の女性教師役にエイミー・アダムス、さらに生徒の母親役
ヴィオラ・デイヴィスの3人がゴールデン・グローブ賞の助
演賞にノミネートされている。
脚本と監督は、本作の元になった戯曲でトニー賞とピュリッ
ツァー賞演劇賞をダブル受賞しているジョン・パトリック・
シャンリー。マイクル・クライトン原作『コンゴ』などの脚
本家が、1990年“Joe Versus the Volcano”以来のメガホン
を取ったものだ。因に、ゴールデン・グローブ賞の脚本賞の
候補にもなっている。
規律について語る憎々しげなストリープの演技は迫力満点だ
し、さらに彼女とホフマンの2人だけの対決シーンは見応え
充分に作られている。

『チェ28歳の革命/39歳別れの手紙』(再)
11月16日付で紹介した作品だが、その後でスティーヴン・ソ
ダーバーグ監督と主演ベニチオ・デル=トロの来日記者会見
が行われ、自分も質問したのでその報告をしておきたい。
会見は、12月18日に東京神田駿河台にある明治大学の記念講
堂を使用して実施されたもので、かなり広い会場の前半分に
マスコミ、後半分には学生と一般も入るという公開形式で行
われた。
その会見の前半はマスコミ対象のものだったが、そこで僕は
2本の作品のスタイルが全く違うことについて監督に質問を
してみた。
その回答は、「監督には2つの人種がいて、その1つは物語
が何であっても自分のスタイルを貫く人、もう1つは物語に
合せてスタイルを変える人。自分はその後者で、今回の2作
品では、『28歳の革命』に関しては、チェ自身が著わした
キューバ革命を総括した本などもあり、その全体を見渡す作
品を作れた。しかし『39歳別れの手紙』では、チェ自身の
日記などを基にしたが、それは1日先の生死も判らないよう
な緊迫したものだった。だからそのような緊迫感や恐怖を描
くスタイルにした」とのことだった。
実はここで、僕は前の質問と一緒に、「この2作品が監督の
フィルモグラフィー上でどちらが先になるか」という質問も
していたのだが、それがはぐらかされそうになった。そこで
マイクを握ったまま質問を繰り返したのだが、これがちょっ
と会見の進行を妨害する形になってしまった。ただし、監督
からは「2作品は常に対比するものとして構想していたし、
色使いも一方は暖色を基調にし、他方は寒色を多くするなど
常に相互関係を考えながら作った。したがって2本は1つの
作品として考えている」との回答を貰えた。
監督の全体像を考えるときに、作品の変遷は足掛かりとなる
もので、2作品の順番というのは情報として重要なものだ。
今回は、作品の構想としては『39歳』が先にあり、その後
に『28歳』が出てきたことはプロダクションノートなどで
も明らかにされているが、その監督としての位置づけが聞き
たかったものだ。同時というのはどう解釈すれば良いのかは
判らないが、とりあえずの情報としては得られた。
なお監督は、会見の中で「芸術の表現手段として、何が一番
観る人に思いを伝えられるかを常に模索している。今は映画
が一番だと思っているが、もっと良い方法が見つかれば将来
的に映画を捨てる可能性もある」とも発言しており、そうな
ったときに、そこに至る作品の変遷は考察してみたくなりそ
うだ。
なお、マイクを放さなかったのは、後ろに一般の観客もいる
場所では、マスコミの意地を見せたかったりもしたもので、
その辺ご了承くださいというところだ。
        *         *
ということで1年が過ぎたが、今年1年はフリーターだった
こともあって、映画は昨年の311本を大幅に越え、試写会+
映画祭のマスコミ上映+サンプルDVDを合せて丁度400本
となった。映画祭の報告はまだ書けていないが、その他の作
品の紹介はかなりの本数を掲載することができた。来年は再
就職の計画もあり、今年ほどにはできないかも知れないが、
とにかく来年も映画は見続けていきたいと思っているので、
よろしくお願いします。

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12月28日(日)
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