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On the Production
by 井口健二
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■第169回
ロサンゼルスの市街地で戦闘を繰り広げるというもの。解説
には、『ブラックホーク・ダウン』と『インディペンデンス
・デイ』を一緒にしたような作品と紹介されていた。
 そしてこの計画に、2006年の『テキサス・チェーンソー/
ビギニング』を手掛けたジョナサン・リーベスマン監督の起
用が報告されている。因に、脚本は今年4月頃にモリッツの
手元に届いたそうで、モリッツは直ちにその映画化を決定。
さらにオファーを受けたリーベスマン監督は、8月にはサン
タモニカからダウンタウンまでのロサンゼルス各所でロケハ
ンを行い、VFX合成用の背景映像の撮影もすでに行ってい
るとのことだ。
 またリーベスマン監督は、CGIで描写されるエイリアン
本体の演出も自ら手掛けるとのことで、監督のSF的センス
にも期待したい。なお監督は、他にもいくつもあった作品の
オファーを全て断って本作の企画に飛び込んだそうだ。因に
監督のデビュー作は、ロアルド・ダール原作“Genesis and
Catastrophe ”(誕生と破局:短編集『キス・キス』所載)
というものだそうで、これも気になるところだ。
 一方、ロサンゼルスを舞台にした市街戦ということでは、
韓国映画の『ディー・ウォーズ』が日本はソニー配給で近く
公開されるが、本作のVFXには市街描写が得意のソニー・
イメージワークスが参加するものと思われ、一層の迫力ある
市街戦を期待したいものだ。
        *         *
 12月に『ワールド・オブ・ライズ』(Body of Lies)が日
本公開されるレオナルド・ディカプリオとリドリー・スコッ
ト監督が再び組み、イギリスの作家オルダス・ハックスリー
が1932年に発表した小説“Brave New World”(すばらしい
新世界)を映画化する計画が報告されている。
 ハックスリーの原作は、同じくイギリスの作家ジョージ・
オーウェルが1949年に発表した『1984年』と並ぶアンチ
ユートピア小説の古典とされてるものだが、オーウェル作品
がネット社会を予言したとも言われる視覚的な未来図を描い
ているのに対して、ハックスリー作品は人間の精神的な面を
中心的に描いていて、映像化は困難とされていた。
 実際、『1984年』が原作発表から7年後の1956年に最
初の映画化が行われ、ずばり1984年にも映画化されたのに対
して、『すばらしい新世界』の映像化は、テレビはあるもの
の映画では製作されていなかったようだ。
 また今回の報道でも、スコット本人が「自分ではこのよう
な題材は選ばないだろう。しかしディカプリオの会社が映画
化権を所有していて、僕にオファーしてきた。そこでこれは
大きなチャレンジだと考えた。2人の偉大な先人が、60年と
75年前にこれらの予見の物語を描いた。中でもハックスリー
の原作を脚色するのは本当に難しいことと思える。しかし、
今が正にその予見に向かうかどうか時代にあって、これは本
当に大きなチャレンジになる」と述べて、製作への意欲を示
しているものだ。
 物語は、人間の生涯の身分から生殖まで管理された未来の
理想社会を舞台に、その管理者の立場にいた男と、無管理の
「蛮人保存地区」で生まれ育ったが管理社会に迎えられるこ
とになった男の運命が描かれる。今後の人類が向かって行く
かも知れない未来の管理社会、もちろんそこには映像的な未
来シーンも描かれることにはなるだろうが、その中での人間
の葛藤が主なテーマとなる作品だ。
 スコット監督は、『ブレードランナー』でも未来社会に生
きる人間の精神的な葛藤を描いていたが、ハックスリーの原
作はさらに人間そのものの存在にも迫るもので、確かに脚色
は難しいがやりがいのある作品と言えそうだ。
        *         *
 ところでスコット監督には、もう1本、SF映画の計画が
発表されている。その作品の題名は、“The Forever War”
(終りなき戦い)。アメリカのSF作家ジョー・ホールドマ
ンが1975年に発表したデビュー長編の映画化で、この原作は

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10月15日(水)
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