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On the Production
by 井口健二
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■英国王給仕人に乾杯、悪夢探偵2、戦場のレクイエム、ソウ5、クローンは故郷をめざす
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『英国王給仕人に乾杯』
         “Obsluhoval jsem anglického krále”
第2次大戦前から、共産政権樹立、そしてその後までのチェ
コの歴史を、1人の給仕人の目を通して語った歴史絵巻。
1997年に亡くなったチェコの反体制作家ボフミル・フラバル
が、1971年に執筆した原作の映画化。因にこの原作は、ソ連
支配下にあっては発表が禁じられ、地下出版により流布され
たものだそうだ。
また、監督のイジー・メンツェルも、1967年に同じフラバル
原作による“Ostre sledované vlaky”(厳重に監視された
列車)の映画化でアカデミー賞外国語映画部門を28歳で受賞
し、当時は「プラハの春」の時代に一躍国際的スター監督と
なったが、その後は弾圧され、当時の作品は次々上映が禁止
されたという。
そんな2人のコンビでは、過去5作品が映画化されており、
今回は6本目、フラバルの死後では初めての作品となる。
物語の主人公は、生涯を一給仕人として過ごしてきた男。体
格は小柄で、「お前は小さな国の小さな人間、それを忘れな
ければ人生は美しくなる」という給仕長の教えの下、百万長
者になることを夢見て人生を送って行く。しかしその人生は
歴史に翻弄されたものとなる。
最初は、駅のホームの駅弁売り。発車間際にゆっくり釣銭を
勘定して余分に金を取るのが手口の主人公は、一方で小銭を
ばらまき、紳士淑女が右往左往する姿を観ることも楽しみと
している。
そんな主人公は、やがて田舎のビアホールから、高級娼館、
プラハの高級ホテルへと人生の階段を昇って行くが…
物語の舞台となるチェコのズデーデン地方は、元々はドイツ
系住民とチェコ系住民が一緒に暮らしていた場所だったよう
だ。しかし、ナチス支配下ではチェコ系住民が排斥され、戦
後はドイツ系住民が追放されてしまう。
そんな中で主人公はチェコ系の男性だが、ドイツ人女性を愛
したり、ユダヤ人に教えを請うたり…あるときは要領よく、
またあるときは気儘に人生を送って行く。そんな主人公は金
持ちになったために共産政権下で投獄されたりもする。
物語は波乱万丈と言う程のものではないが、今も続く世界の
歪みの中で、人々が受けた苦しみや簡単には言葉で言い表せ
られないものが見事に描かれた作品だ。

『悪夢探偵2』
2006年10月31日付で紹介した塚本晋也監督によるシリーズ作
品の第2作。前作ではいきなり事件に遭遇したが、今回は事
件に絡めて悪夢探偵・影沼京一の生い立ちや背景なども語ら
れる。つまり本作は、『悪夢探偵・ビギンズ』といった感じ
でもある作品だ。
その事件は、同級生をいじめた少女がその同級生の登場する
悪夢を見るというもの。最初はいつものように、「いやだ、
いやだ」と言って取り合わない京一だったが、やがてその少
女の周囲で不可解な死亡事件が発生、重い腰を上げることに
なる。
そして依頼者と共にいじめ被害者の同級生の家を訪ねた京一
は、異常に恐がりだったというその同級生に自分の母親に似
たものを感じ取る。そこで京一は、同級生の行為を止めるた
め、依頼者の少女の悪夢に侵入してその同級生に会おうとす
るのだが…
悪夢の中のシーンと、京一の回想と、現実とが綯い交ぜにな
って、なかなか面白い物語が展開する。そこにいじめなどの
現代的な問題や、またある種の超能力者だったらしい母親と
京一との絆のようなものもうまく描き込まれていた。
出演は、悪夢探偵役に前作に引き続いて松田龍平。依頼者役
に300人のオーディションで選ばれたという三浦由衣。同級
生役に『誰も知らない』などの韓英恵。また、光石研、市川
実和子、内田春菊、北見敏之らが共演している。
因に、本シリーズは元々が3部作で構想され、その第2作が

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10月26日(日)
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