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On the Production
by 井口健二
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■ヘルボーイ2、アラトリステ、草原の女、きつねと私の12ヶ月、252、ロック誕生、ザ・ムーン、ブラインドネス(追記)
レベルテが発表した全6巻に及ぶ壮大な作品で、史実に基づ
く戦いや実在の人物の行動に絡めて、物語のヒーローが活躍
するというものだ。
実際、主人公のアラトリステは架空の人物だが、その物語の
スケールと、恐らくは栄光の時代へのノスタルジーなどで、
特にスペイン国民には熱狂的に迎えられた作品のようだ。そ
れが没落に向かう状況であることも物語に深みを与えていそ
うだ。
また映画では、ブレダ開城のシーンにベラスケスの絵画をモ
ティーフにするなど、巧みな構成も用いられている。
その主人公役に、アメリカ人のモーテンセンが全編スペイン
語の台詞で挑んでいるものだが、元々剣客というのは寡黙な
方が似合うし、口元もあまり動かさない台詞をアフレコして
いるから違和感は感じなかった。
そして共演者には、『バンテージ・ポイント』などのエドゥ
アルド・ノリエガ、『コレラの時代の愛』で主人公の青年時
代を演じたウナクス・ウガルデ、『トーク・トゥ・ハー』の
ハヴィエル・カマラ、『美しすぎる母』のエレナ・アナヤ、
『パンズ・ラビリンス』のアリアドナ・ヒルなど多彩な顔ぶ
れが集められている。
なお、監督のアグスティン・ディアス・ヤネスは本作が3作
目。全ての作品でゴヤ賞に最多ノミネートされている才人だ
が、実は第2作として準備中に頓挫したSF大作があるとの
こと、ぜひともその作品も実現してもらいたいものだ。

『草原の女』“珠拉的故事”
今年1月に紹介した『胡同の理髪師』のハス・チョロー監督
による2000年の長編デビュー作。内モンゴル自治区の冬を背
景に、都会に出稼ぎに行ったまま帰ってこない夫を待つモン
ゴル族の女性の姿を描く。
主人公のゾルは、幼い息子とともに草原に建てられたゲルで
暮らしている。彼女の生活は165頭の羊と馬などの世話に追
われているが、牧草地に雪の積もった冬はその牧草を集める
作業などで大忙しだ。しかも雪原には腹を空かせたオオカミ
も出没する。
そんな過酷な暮らしの中でも、彼女は都会に行ったまま何年
も帰ってこない夫を待ち続けている。なおモンゴルの女性に
は、「冬に怠けていると、冬眠して蛇になってしまう」とい
う言い伝えもあるそうだ。
そんな彼女の許を1人の男が訪れる。彼女は、夫の居ない間
に他人を雇うことを拒否するが、男には家族もなく、仕事を
求めて草原を彷徨っている風だった。そして男は、異常に火
を恐れることから逆にガル(火)と村人から呼ばれるように
なる。
やがて男は、ある切っ掛けから彼女のゲルの近くに自分のゲ
ルを建てることを許される。しかし彼の過去にはいろいろな
経緯がありそうだった。
最初は遠方に建てられたゲルが徐々に近づいてくるなど、微
妙な表現も含めて、草原に暮らす男女の生き様が描かれる。
その物語の展開は多少甘いようにも感じられるが、まあそれ
もお話と言うところだろう。
謎めいた小道具がいろいろ登場し、それが最後に収斂して行
く脚本はなかなか見事なものとも言える。
内モンゴル自治区を描いた作品では、最近の砂漠化をテーマ
にした作品を何本か観たが、本作は砂漠化ではないものの、
やはり厳しい冬の生活が描かれている。放牧という生活の糧
のためではあるが、これも大変なことだ。そんな民衆の生活
が丁寧に描かれる。
主演は、実際にモンゴル族のハス・カオワ。出演作も多いベ
テランで、その中には2002年の日中合作映画『王様の漢方』
もあるものだ。

『きつねと私の12ヶ月』“Le Renard et L'Enfant”
前作『皇帝ペンギン』でアカデミー賞長編ドキュメンタリー
部門を獲得したフランス人のドキュメンタリスト=リュック
・ジャケ監督による2007年の作品。
前作ではペンギンの擬人化が多少気になった人もいたようだ
が、本作はさらに1歩進めて、動物の生態は描いているが物
語は完全なフィクションとされている。因に、フランスでの
配給はディズニーが担当したようだ。
そのお話は、1人の少女が森でキツネを見掛け、そのキツネ

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09月14日(日)
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