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On the Production
by 井口健二
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■パティシエの恋、恋愛上手…、ボディJ、花は散れども、6年目も恋愛中、センターオブジアース、ダイアリーオブザデッド、ブラインドネス
とは思えなかった。
それにしても、グウィネスとペネロペの共演というのも豪華
なもので、特にペネロペの如何にもセレブな感じがよく出て
いた。一方、グウィネスは実生活でもロックミュージシャン
と結婚しているから、弟はそんな姉を念頭に書いた脚本でも
あるのかな。
なお監督は次回作の脚本も進行中だそうで、同じような傾向
の作品ならそれも楽しみだ。
『ボディ・ジャック』
幸福の科学出版から2006年5月に刊行された光岡史朗原作の
小説の映画化。
最近多発している通り魔事件。それは過去の霊に身体を乗っ
取られた者たちの仕業だった。そして主人公の身体が幕末の
土佐藩士の霊に乗っ取られ、乗っ取った藩士は通り魔の真犯
人(霊)を発見し、犯行を止めようとするのだが…
この乗っ取った藩士の割り出しや真犯人の割り出しなど、そ
れぞれ推理的な要素も絡めた物語が展開される。
ところで主人公には、実は元学生運動の活動家という過去も
あって、その社会改革に賭けた思いと、幕末の藩士たちの思
いが重なってボディ・ジャックが起きたという設定もあるの
だが、実はそれがどうにも時代設定の辻褄が合わない。
実際、主人公が学生運動をしているは明らかに70年安保で、
その主人公が壮年になっているとは言っても演じているのが
高橋和也では明らかに40歳前後。それなら描かれている現代
が1990年頃かというと、その辺も明確ではない。
原作も2年前の発表だから、その辺は同じなのかも知れない
が、映画で観せるなら、ここはそれなりに気を使ってほしい
感じはしたものだ。僕は自分の中で解釈して辻褄を合わせた
が、それでも宣伝の人に確認するまで釈然とはしなかった。
まあその辺に引っ掛かりつつも、お話は現代の事象を上手く
反映しているものだし、それはそれで納得はするのだが…。
やはり一般の観客に対してはそれなりの手は打ってほしいと
ころだ。
共演は、土佐藩士役に故田宮二郎の息子の柴田光太郎。お父
さんを思い出させる風貌は役柄に良く合っていた。他に『さ
くや妖怪伝』などの安藤希。さらに、小林且弥、美保純、笠
智衆の孫の笠兼三らが出ている。
監督は、『真木栗ノ穴』などのプロデューサーの倉谷宣雄。
初監督作品のようだが、70年安保当時の映像にエコマークは
気を付けてもらいたかったものだ。もっとも、闇市に掲げら
れた星条旗に、平気で星が50個付いていたりするのが日本の
映画だが。
『花は散れども』
1912年生まれ、今年96歳の新藤兼人監督作品。
大正期の田舎の尋常小学校の様子と、戦後しばらく経っての
同窓会、さらにその後の物語が描かれる。その間の戦時中の
ことは、昨年5月に紹介した『陸に上がった軍艦』に描かれ
ており、それも観ておくと分り易いが、観ていなくても問題
はなさそうだ。
主人公は没落した一家の末弟。土地屋敷は人手に渡り、今で
は土蔵に住んでいる。それでも成績は優秀で級長も務めてい
るが、希望する上の学校には行けそうにない。そんな彼を、
担任の先生は上手く指導し、また副級長の女子も心に掛けて
くれている。
しかし、高等小学校で2年間学んだ後の主人公は、町に出て
そのまま音信不通となってしまう。そして30年が経ち、担任
の先生の定年を祝って開かれた同窓会に、脚本家となった主
人公も呼ばれるが…
この同窓会で級友たちの語る戦時中の苦難の歴史には、新藤
監督の思いが明確に現れている感じがする。それは前作から
引き継がれた今の日本に対するメッセージのようでもあり、
その監督の思いはしっかりと受け止めたいと感じた。
ただし物語はここから急展開を始める。そしてそれは深く人
間的なものになって行く。この転換の上手さが脚本家として
も大ベテランである新藤監督の面目躍如という感じのもの。
つまり、己が思想を観客に押し付けることなく納得させる。
その辺にも上手さを感じてしまった。
物語の全体は、今ではなかなか見つけられない全身全霊を教
育に捧げた教師の姿であり、一方、戦前戦後を生きた日本人
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08月17日(日)
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