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On the Production
by 井口健二
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■ラブファイト、フロンティア、その土曜日7時58分、ビバ!監督人生!!、ファン・ジニ、LOOK、レッド・クリフ
感じの作品だ。従ってこの作品は、その手の作品がお好きな
人にしか勧められないが、そういう人には満足してもらえる
作品だろう。
出演は、日本では知られていない俳優がほとんどだが、中で
キーとなる役を、2004年1月紹介『いつか、きっと』に主人
公の娘役で出演していたモード・フォルジェが演じている。
なお巻頭タイトルバックには、暴動の様子が描写されるが、
現実のニュースリールの抜粋のような作りで、かなり巧みに
構成されている感じがした。

『その土曜日、7時58分』
        “Before the Devil Knows You're Dead”
シドニー・ルメットによる映画監督45作目に当る作品。奇し
くも、1957年に第1作の『12人の怒れる男』の発表から50年
目の作品ともなっている。そしてその作品は、ルメットの過
去の名作群に勝るとも劣らない作品になっていた。
映画はフィリップ・シーモア・ホフマンとマリサ・トメイ、
2人のオスカー受賞者によるベッドシーンから開幕する。そ
して物語の発端は、とある宝石店の強盗事件。ショッピング
モールの一角にある小さな店が襲われる。しかしその事件の
裏側にあるものは…
ここから、カメラは時間を遡ったり、いろいろな登場人物の
視点を縦横に描写して、出来事の全貌に迫って行く。それは
弱い人間がふと魔が差して起こしてしまったものであり、誤
算の積み重なりが重大な事件を起こしてしまうものだ。
こんな誤算が引き起こす事件の物語では、コーエン兄弟監督
の『ファーゴ』を思い出すが、コーエン兄弟の作品がドミノ
倒しのように事件を拡大させたのに対して、ルメットの作品
では過去を検証することで事件が収斂し、また拡大して行く
様が描かれる。
しかもそこにはいろいろな仕掛けが施されていて、それはあ
る意味、あざとい感じもするくらいなものだが、それこそが
映画でしか味わえない醍醐味とも言えるものだ。
共演は、イーサン・ホーク、アルバート・フィニー。他に、
『スパイダーマン』シリーズのローズマリー・ハリス、『カ
ポーティ』のエイミー・ライアン(本作で助演賞受賞)らが
出演している。
脚本は、劇作家のケリー・マスタースンが1999年にオリジナ
ルの映画用台本として発表したが、その後映画化の機会には
恵まれていなかった。その脚本をルメットが取り上げ、人物
設定などを改変した上で映画化を実現したものだ。
因に原題は、この前に‘May you be in heaven a full half
hour’という言葉が付いて、アイルランドでの乾杯の掛け声
だそうだが、乾杯の時にDevilとは剣呑な話だ。
もっとも同じ言葉の前には、別に‘May you be 40 years in
heaven,’が付くこともあって、これなら判るような気もす
るが、映画の巻頭には前者がテロップとして挿入されていた
ようだ。

『ビバ!監督人生!!』“情非得已之生存之道”
8月23日から開催される台湾シネマ・コレクションで上映さ
れる内の1本。2008年上半期の台湾映画興収第1位を記録し
た作品。
新作に取り掛かった監督の試行錯誤と言うか、いろいろな出
来事を綴った作品。同趣向の作品では、フェリーニ『8½』
や、北野武『監督ばんざい』などが思い浮かぶが、作品の雰
囲気は韓国のホン・サンス監督の『浜辺の女』などが近いよ
うに感じた。
主人公の監督は、今迄アイドルドラマを撮ってきたが、一念
発起、社会派ドラマをモキュメンタリーで撮ることを思いつ
く、そしてその準備を始めるが、主演俳優に逃げられたり、
資金繰りが頓挫したり、さらに監督自身のスキャンダルまで
出てきて…
監督・主演は、2001年『ミレニアム・マンボ』などに主演し
た後、現在はテレビドラマの監督としても活躍しているニウ
・チェンザー。彼の初の長編映画監督作品で、主演も務めて
いるものだ。
物語の途中では、ヤクザが映画の製作に首を突っ込んできた
り、新人女優とのスキャンダルが芸能紙に売られたり、投資
家に対するナイトクラブでの接待など、さもありなんという
お話が展開される。

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08月03日(日)
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