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On the Production
by 井口健二
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■蛇にピアス、おくりびと、ギララの逆襲、ブーリン家の姉妹、窓辺のほんきーとんく、ベティの小さな秘密、背/他2本、P.S.アイラヴユー
見事に感動的な作品に仕上げられている。なお監督は『陰陽
師』などの滝田洋二郎が見事に演出している。
出演は、本木雅弘、広末涼子、吉行和子、余貴美子、笹野高
史、山崎努。特に、本木は、劇中チェロの演奏家と納棺師の
両方に挑戦しており、それを見事に演じているのはさすがと
いう感じがした。
因に、本作の物語の発案は本木からだったそうで、それはた
またま彼が納棺師の仕事を実際に観たことによるそうだが、
そんな彼の思いも込められた作品にもなっているようだ。
また音楽には、久石譲が13本のチェロによる新曲を提供して
おり、その他にもチェロの演奏曲が次々登場して物語を豊か
にしている。
山形県庄内平野の大自然を背景に、見事な人間ドラマが展開
される。物語のテーマは非日常的なものではあるけれど、そ
れはファンタスティックとさえ言えるものになっており、そ
れでいて見事に人間性に溢れた感動的な物語が展開される。
今年観た日本映画の中では出色の作品だった。
『ギララの逆襲〜洞爺湖サミット危機一発』
2006年に『日本以外全部沈没』を発表した河崎実監督のパロ
ディ新作。前作のときは東宝作品の公開中の封切りが妨害さ
れた(?)とかで話題になったが、今回も全国公開はサミット
の開催後、ただし北海道では、サミット開催中に先行上映と
なるようだ。
オリジナルの『宇宙大怪獣ギララ』は、1967年に当時の怪獣
映画ブームに乗って製作された松竹唯一の特撮怪獣映画。そ
の怪獣ギララを復活させた作品で、この復活乃至リメイクの
企画自体はかなり以前からあったようだが、それがこういう
形で実現したものだ。
洞爺湖サミットに世界の首脳が集まった折りも折り、札幌に
宇宙から飛来した宇宙大怪獣ギララが出現する。この事態に
日本政府は各国首脳に避難を要請するが…
この要請に対して、敵前逃亡はしないとアメリカ大統領が発
言したことから、首脳会議は急遽G8大怪獣対策本部に変更
される。ところが各国首脳が次々提案する作戦はことごとく
失敗。さらに首脳会議そのものも、この機に乗じた悪の組織
に乗っ取られる。
その間にもギララは、昭和新山などのエネルギーを吸収して
強大化。ついには地球存亡の危機を迎えるが…
この各国首脳をそれぞれの国の外人タレントが演じて、台詞
はちゃんとした各国語、それに丁寧な字幕が付くというもの
で、これはなかなか良くできていた。こういうところをちゃ
んとやることがこの種の作品では重要で、作者はそれを判っ
ているという感じのものだ。
しかも、次々提案される作戦はどれも支離滅裂ではあるが、
それなりにお国柄を反映し、さらに最近の国際的な話題など
も織り込んだもので、それぞれニヤリとさせるものになって
いる。その上、途中からしゃしゃり出てくる元首相の大泉は
…といった寸法だ。
『日本以外…』同様、特撮はチープ感をもろに出しているも
ので、それもパロディだということを理解してあげないと困
ったことになってしまうが、まあとりあえずは笑って観ても
らえればいいものだ。
とは言え、物語や脚本はそれなりに周到に考えられて作られ
ており、細かいところを観ていくと結構良くできている。そ
れに俳優たちが熱心に演じてくれているところも嬉しいもの
で、特に主演の加藤夏希の頑張りには拍手を送りたいところ
だった。
『ブーリン家の姉妹』“The Other Boleyn Girl”
ナタリー・ポートマンとスカーレット・ヨハンセン共演で、
16世紀のイングランド王ヘンリー8世の時代を描いた作品。
ヘンリー8世は、兄の急死によりイングランド王となると共
にその寡婦であったキャサリンと結婚したが、誕生した子は
娘しか成長せず、男の世継ぎ希望するヘンリーは、離婚を認
めないローマ教会に対してイギリス国教会を設立などして、
ブーリン家の長女アンとの再婚を可能にする。
しかし、アンとの間にも結局は娘しか誕生することはなく、
この母親の違う2人の娘が、後のメアリー1世とエリザベス
1世になって歴史を作って行くことになる。そんな時代を背
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06月29日(日)
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