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On the Production
by 井口健二
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■同窓会、天安門、落語娘、次郎長三国志、コレラの時代の愛、ホット・ファズ
とが重要な作品のように感じられる。特に、自分が愛してい
ることを解っていながら将来に不安を抱く女性の心理などが
巧みに描かれていた。
しかし映画では、同じ時期に起きたベルリンの壁の崩壊など
の映像を交えながら、ある意味当時の若者たちの活動の熱気
へのオマージュみたいなものも感じられる。それが物語の後
に続く軍事訓練などで冷めていく様子には、監督の哀しみも
感じるものだ。
因に、この大学生参加の軍事訓練の実施によって軍隊と学生
との融和が謀られ、学生運動が沈静化したというのは事実の
ようだ。そんな歴史に振り回された若者たちの姿が描かれ、
この辺が政府の逆鱗だったかとも思われた。
なお、チョウ・ウェイ役を、2003年東京国際映画祭でグラン
プリを受賞した『暖〜ヌアン(日本公開名:故郷の香り)』に
主演のグオ・シャオドンが演じていて、当時会場でサインを
もらったことを思い出した。

『落語娘』
永田俊也による同名原作小説の映画化。
子供の頃から落語好きで、大学在学中は落研のプリンセスと
呼ばれた女性が、いざ本物の落語界に入ってみると、そこは
男尊女卑が罷り通る世界。それでも何とか師匠を見つけ弟子
入りはするが、今度はその師匠が粗相をし出かして謹慎処分
になってしまう。
そんな中でも必死に頑張る彼女にもたらされたのは…
原作は知らずに観に行った。去年は『しゃべれどもしゃべれ
ども』があったし、またまた落語家の話か…、でもまあ主人
公が女性ならちっとは違うかな?何て思いながら、正直期待
半分という感じで観に行ったのだが、これが物語の意外な展
開に恐れ入った。
その展開は、謹慎中の師匠が、過去に演じようとした噺家が
次々不慮の死を遂げたという禁断の落語に挑戦する…という
もの。それにはテレビ局のプロデューサーがバックにいて、
オカルト番組の仕立てとなるのだが…
この「緋扇長屋」と称する禁断の噺を演じるシーンも登場す
るが、これが意外と良く出来ていて、その高座の様子も楽し
めた。もちろん噺自体は原作者の創作だが、それを如何にも
落語の一席らしく仕上げてあるのにも感心したところだ。
しかも、そこまでの展開がそれなりの因縁話で、VFXも使
ってちゃんとファンタスティックに描かれていたのも嬉しく
なった。最近の映画で嬉しいのは、こういうシーンが真剣に
作られていることで、こういうところにもファンタシーが認
知されていると感じられるのだ。
出演は、若手女優のミムラとベテランの津川雅彦。ミムラは
「景清」「たらちね」「寿限無」を演じているが、『しゃべ
れども…』の国分同様、なかなかの出来に観えた。それに子
役の藤本七海が演じる「景清」も良い感じのものだった。
その他にミムラは、出囃子の太鼓なども叩いており、台詞を
喋りながらも手を止めずに叩き続ける姿には感心した。それ
でも、映画の中では評論家風情のなぎら健壱が呟く、「熊が
オカマになってら」というのも理解できるところで、その見
識にも納得したものだ。
その他の物語の展開も、いちいち納得できるもので、最後の
種明かしまで存分に楽しめる作品になっていた。

『次郎長三国志』
日本映画の父と呼ばれる牧野省三の孫で俳優の津川雅彦が、
叔父にあたる監督マキノ雅弘の手掛けた名物シリーズを、映
画監督マキノ雅彦としてリメイクした作品。
幕末期に清水港に権勢を張り、街道一の大親分と謳われた清
水の次郎長を中心に、女房のお蝶や子分たちが織りなす物語
が展開される。
そのお蝶との祝言の最中、捕り方に家を囲まれた次郎長は、
配下の大政、鬼吉、綱五郎らと共に囲みを破って渡世修業の
旅に出る。そして3年、各地で男を上げた次郎長は、法印の
大五郎や森の石松らの子分も増えて清水に戻ってくる。
しかし、さらに地元で相撲興行を打ったり、花会を開いたり
と、世間に名前を轟かせて行く次郎長には、甲州に勢力を張
る黒駒の勝蔵や、極悪人の三馬政など仇も増えていた。
こんな物語を、次郎長に中井貴一、お蝶に鈴木京香、また岸

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05月25日(日)
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