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On the Production
by 井口健二
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■ランボー最後の戦場、グーグーだって猫である、アクロス・ザ・ユニバース、スカイ・クロラ
ようだが、僕が観たのは上記を含めて3作目で、前2作がか
なり強烈なキャラクターの登場する作品だったのに比べると
大人しい作品に観えた。
それでも、基調となる人への思いやりの様なテーマはしっか
りと描かれているもので、それは心地よいものだった。それ
に以前に猫を飼っていた身としては、登場する猫の愛らしさ
には思わず相好を崩してしまうものだ。
因に犬童監督は、1982年『赤すいか青すいか』、99年『金髪
の草原』に続いて3作目の大島原作の映画化となるもので、
試写会の舞台挨拶でも大ファンと称していたが、それは確か
なようだ。
一方、主演の小泉も大島のファンとのことで、また自身が猫
好きであることも本作には良い効果をもたらしているように
見える。
なお、映画の物語は原作者の年譜に従うと1995年から98年頃
を背景にしているものだが、ここには生きる勇気などが凝縮
して描かれている。

『アクロス・ザ・ユニバース』“Across the Universe”
『ライオン・キング』のブロードウェイ・ミュージカル版を
手掛け、映画では『タイタス』『フリーダ』を監督している
ジュリー・テイモアが、満を持して映画ミュージカルに挑戦
した作品。しかも登場する33の楽曲が、全てビートルズとい
う画期的な作品だ。
物語の背景は1960年代。主人公はリヴァプール!!の造船所で
働いていたが、ある日職を辞してアメリカ行きの貨物船に乗
り込む。一方、アメリカの若者たちは義務兵役でヴェトナム
戦争に狩り出され、日々その戦死者が増加していた。
そんな時代、アメリカにたどり着いた主人公は1人の青年と
意気投合し、彼の両親の家で開かれる感謝祭のディナーに招
かれ、そこで青年の妹と巡り会う。
やがて、ニューヨークにやってきた主人公と青年は、女性歌
手のコンドミニアムで共同生活する若者たちのコミューンに
加わり、そこでいろいろな出会いと別れを経験することにな
る。こんな物語が、ビートルズの数々の名曲に乗せて綴られ
て行く。
1960年代。音楽やアートに若者文化が勃興し、もしかすると
若者が最も元気だった頃かも知れない、そんな時代の若者た
ちの物語。しかし、そこにはヴェトナム戦争が影を落とし、
反戦運動や学園紛争も起き始めている。
監督と原案も務めたテイモアは、1952年生まれということな
ので、1960年代にはちょっと出遅れているかもしれないが、
そんな彼女が多分憧れを感じて見ていた時代を描いているの
だろう。そんな気分は1949年生まれの僕には痛いほどに判っ
た気がした。
ちょっとドラッグや、ちょっとセックスも登場するが、若者
が今よりもっと純粋で希望を持ち、何かしようと、何かでき
ると思っていた時代。そんな素晴らしい時代が描かれる。そ
してそこには素晴らしい恋も待っている。
主演は、この作品の後に『ラスベガスをぶっつぶせ』に抜擢
されたジム・スタージェス、『敬愛なるベートーベン』など
のジョー・アンダースン、『シモーヌ』『ダウン・イン・ザ
・バレー』『ママが泣いた日』などのエヴァン・レイチェル
・ウッド。
その他、脇役には、本業は歌手やダンサーのデイナ・ヒュー
クス、マーティ・ルーサー・マッコイ、T.V.カーピオらが
配されている。さらに、『フリーダ』のサルマ・ハエック、
ミュージシャンのボノ、ジョー・コッカーらのゲスト出演も
見ものだ。
それにしても、ビートルズの楽曲が見事に当時の世相を切り
取っていたことが、この作品で良く判った。その歌詞の意味
を改めて理解できたのも嬉しかった。
ただし、主人公の名前がジュードというのは、どう考えても
ネタバレになる気がする。
それから、クライマックスにはAll You Need Is Loveが流れ
るが、そこにShe Loves Youが挿入されるのは、多分BBC
の世界同時中継Our Worldの時と同じタイミングと思われ、
当時の生放送を見ていて喝采した記憶のある者としては、嬉
しい再現だった。

『スカイ・クロラ』
『攻殻機動隊』押井守監督による、劇場用のアニメーション

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05月04日(日)
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