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On the Production
by 井口健二
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■セルラー・シンドローム、バカバカンス、敵こそ我が友、キング・ナレスワン、ミー・マイセルフ、ST3、シチズン・ドッグ、ダイブ!
出演は、須田邦裕、奥田恵梨華、渋川清彦。基本的には脇役
で頑張っている若手たちのようだが、しっかりとした演技を
してくれるのは見ていて安心感があった。それに須田は実際
にオムライスを作っているようで、その手際にも感心した。
上映前の監督の挨拶では、「自主映画のようなものです」と
言っていたが、意ばかり先走っているようないわゆる自主映
画とは違って、映画というものがよく判っている地に足が着
いた感じのする作品。これからも頑張って欲しいと思える監
督の作品だった。

『敵こそ、我が友』“Mon Meilleur Ennemi”
2006年『ラストキング・オブ・スコットランド』で、フォレ
スト・ウィティカーにオスカー主演賞をもたらしたケヴィン
・マクドナルド監督によるドキュメンタリー作品。
ナチの戦犯でありながら、1983年にフランス政府によって逮
捕されるまで南米ボリビアで勢力を保ち、一時は南米に第4
帝国の設立を目指したクラウス・バルビーの生涯を追う。
バルビーはドイツ生まれだが、1942年から44年までフランス
のリヨンで現地のゲシュタポを指揮し、特に、ドゴールの命
を受けてレジスタンスの統一を目指していたジャン・ムーラ
ンの逮捕処刑に関与したとされている。
しかし、それ自体は戦犯の容疑ではなく、彼がリヨンの孤児
院から34人の幼いユダヤ人の子供を強制収容所に送ったこと
が、最終的な罪の根拠となっている。実際、戦時中の戦闘員
に対する行為は裁判の対象とされず、それが裁かれた東京裁
判とは違う様相を見せる。
それはともかくとして、映画は、戦後のバルビーが対共産主
義戦略の一環としてアメリカ諜報機関の手先となっていたの
ではないかと言う疑問を検証して行く。
その戦後に、バルビーがアメリカ陸軍情報部(CIC)に所
属していたことは事実のようで、その庇護の下、彼とその一
家はフランスの訴追を逃れてボリビアに移住している。そし
てボリビアでは、チェ・ゲバラの活動を恐れるアメリカの意
向に沿って、その逮捕にも貢献したということだ。
しかしそれは、彼自身にとっては第4帝国の創設の夢へとつ
ながり、彼の許には各国からの訴追を逃れた元ナチの残党た
ちが集まり始める。そして彼らはボリビアの軍事政権の設立
にも関って行くが、結局その軍事政権が麻薬組織とつながっ
たことから、アメリカ政府は世論に押されて彼を見捨てるこ
とになる。
まさに、戦後の隠された歴史と言えそうな物語だ。しかしこ
こに描かれたバルビーの人生は、よくいう歴史に翻弄された
と言うものではない。彼自身が信念のものとに繰り広げたも
のだ。ただしそれは、明かな犯罪者の人生でもある。
そして映画は、その犯罪者を利用しようとして、結局は民衆
に多大な被害をもたらしたアメリカのやり方を痛烈に批判し
ているものでもある。南米の、今まであまり詳しくは知るこ
ともなかった側面が描かれた興味深い作品であった。

『キング・ナレスワン』“ตำนานสมเด็จพระนเรศวรมหาราช”
5月31日に開催されるタイ式シネマ・パラダイスの1本とし
て上映される作品。
14〜18世紀に亙って栄えたタイ(シャム)のアユタヤ王朝に
あって、西暦1600年前後に王位に就き、中興の祖と讃えられ
るナレスワン大王の生涯を描く3部作の第2章。ビルマの支
配下に置かれたタイ中部で、アユタヤ王朝を独立に導く戦い
が描かれる。
上映時間169分の超大作。事前の情報では2部作とあったの
で、2作一緒の上映かと思っていたら、第1章は別に167分
あるそうだ。これで製作中と言われる第3章も同様の長さな
ら、合計は8時間半近い超大作となる。
第1章では、ナレスワンが、傀儡政権と化していたタイ王朝
からの人質としてビルマにいた頃の話が中心となるようで、
第2章ではそのビルマに反旗を翻すまでが描かれる。なお、
映画祭では第1章も上映されるが、試写会は第2章のみ行わ

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04月27日(日)
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