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On the Production
by 井口健二
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■春よこい、カスピアン王子(特)、ラスベガスをぶっつぶせ、闇の子供たち、長い長い殺人、リボルバー、ブルー・ブルー・ブルー
期待を抱かせる特別映像の上映と会見だった。
映画は、完成された本編を観なければあまり語ることはでき
ないが、取り敢えず予告編にも出てくるロンドンの地下鉄駅
での導入部分の展開は、心魅かれるものにもなっているし、
今回観られた特別映像も併せて、5月の公開が一層楽しみに
なってきたところだ。

『ラスベガスをぶっつぶせ』“21”
マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授が計算能力に長
けた学生を使ってカード賭博に挑み、ラスヴェガスのカジノ
で数100万ドルを荒稼ぎした実話に基づくとされる2002年発
表の書籍“Bringing Down the House: The Inside Story of
Six M.I.T. Students Who Took Vegas for Millions”を映
画化した作品。
その手口はブラックジャックを標的としたもので、その手法
は場に晒されたカードを一定範囲ごとに+1、±0、−1で
カウントを続ける。そしてその数字がある値に達したら、残
りカードは予測できるので、それに従って勝負を仕掛けると
いうものだ。
この手法はカウンティングと呼ばれ、1962年に公表されてい
るもので、カジノ側も当然心得ている。従って、長時間に渡
ってテーブルに座り続け、あるときから突然勝ち続けたら、
それはカウンティングを行っていたとしてマークされてしま
う。
そこで教授が編み出した手法は、1人がカウンティングを行
い、それがある数値に達したら合図を送る。そしてやってき
た仲間には、符丁でその数値を知らせるというもの。これな
ら、その2人が仲間と見破られない限り、安全にカウンティ
ングが駆使できる。
物語の主人公は、MITで学び、ハーヴァードの医学部にも
合格した学生。しかし彼には数10万ドル掛かると言われる学
資の工面ができていなかった。一方、その学生は高い計算能
力を身に付けており、それが数学科の教授の目に留まる。そ
して教授のブラックジャック・チームに誘われるが…
実話の背景は1993年とのことで、今ではカジノ側のセキュリ
ティもさらに高くなっていると思われるが、映画には、生体
認証などを駆使した最新セキュリティと、昔ながらの警備員
との確執なども描かれて、単純に勝負に勝つだけの物語では
なくしている。
そのフィクションの部分が、どれほど真実に近いかは判らな
いが、その部分もそれなりに面白く描かれていたものだ。
出演は、製作も兼ねるケヴィン・スペイシーと、ジュリー・
テイモア監督の“Across the Universe”にも主演している
ジム・スタージェス。他に、ケイト・ボスワース、ローレン
ス・フィッシュバーンらが共演。
監督は、2001年『キューティ・ブロンド』などのロバート・
ルケティックが軽快に纏めている。

『闇の子供たち』
タイを舞台に、人身売買、幼児売春、さらに生体臓器移植に
つながる闇の世界の現実を描いた梁石日による同名の原作の
映画化。
見終っての感想は一言「恐ろしい」に尽きる。こんな人非人
のなすようなことが現実に行われているのか? 確かに今の
社会の動きを見ていると、あってもおかしくない話だろう。
そしてそれは、自分も感じる男の性として、必ずしも否定で
きない話だ。
そのことは、原作者の視点もそこにあると感じられるものだ
し、監督の感覚も同様のようだ。そんな自分自身に対する後
ろめたさのようなものが、一層、この映画を「恐ろしい」も
のにしている。
主人公は、タイに単身赴任している新聞社の特派員。その彼
にある日、本社の社会部デスクから心臓移植のためにタイに
向かう少年について、その受け入れ側の様子などを取材する
依頼が届く。
それは日本国内では認められない子供のドナーによる臓器移
植を行うもので、アメリカでは手続きが煩雑で金も多く掛か
るが、タイでは費用も安く、また医療水準はアメリカに劣ら
ないという。こんな情報を基に、主人公は闇ルートに通じた
情報屋から取材を始めるが…
そこには、信じられないような現実が存在していた。それは
人身売買された子供の生体から心臓を取り出し移植するとい

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03月30日(日)
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