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On the Production
by 井口健二
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■ハンティング・パーティ、受験のシンデレラ、なつかしの庭、丘を越えて、ブレス、ブラックサイト、ゼア・ウィル・ビー…、紀元前1万年
映画は、終末医療の部分では感動作となるが、同時に東大受
験のテクニックに関しては、昔の伊丹十三映画のようなマニ
ュアル趣向で、結構受験の役に立つ情報が満載されている。
それも、かなり盲点のようなものもあって、一々頷けるもの
ばかりだった。
その他にもいろいろ細かな設定や、特にお金の出所、そのや
りとりなどにも工夫があって、細かいことにも神経の行き届
いた作品のように感じられた。脚本は、和田の原案からテレ
ビドラマで活躍中の武田樹里が担当している。
出演は、昨年リメイク版の『転校生』に主演した寺島咲と豊
原功輔。また浅田美代子、田中実らが共演。他に、清水圭、
橋爪淳、林真理子、梶原しげる、辰巳琢郎らがゲスト出演。
なお本作は、モナコ国際映画祭に出品されて、作品、主演男
優、主演女優、脚本の4冠を達成したそうだ。
『なつかしの庭』“오래된 정원”
朴正熈大統領暗殺を描いた問題作『ユゴ|大統領有故』のイ
ム・サンス監督が、1980年代の韓国民主化運動の活動家の姿
を描いた作品。韓国の代表的文学者ファン・ソギョンによる
同名の原作の映画化。
物語の主人公は、1980年5月18日に起きた光州事件から辛く
も脱出した活動家のヒョヌ。しかしその後に逮捕され、長期
の刑に服することになる。そしてその罪は、1995年の特別法
の制定により解消されて釈放となるが、それまでには長い歳
月が流れる。そしてその間に起きていたことは…
主人公は、逃亡生活の中の一時期を、美術教師ユンヒによっ
て田舎の家に匿われていた。そんな過去の思い出と共に、当
時の事件の様子が再現されて行く。
日本の学生運動を始めとする民衆の政治活動は、70年安保以
降は局地的なものに限定されていってしまった印象だが、韓
国では、1979年10月26日の朴正熈大統領暗殺によって戒厳令
が発令され、12月12日の全斗煥の粛軍クーデターによって軍
政化、戒厳令の解除などを要求する民衆との抗争がエスカレ
ートして行った。
そして光州事件となるが、その実態はマスコミ統制によって
韓国民には全く知らされず、僅かに海外の報道を傍受するし
かなかった。この映画の中では、NHKの番組のヴィデオを
観たという台詞が使われていた。
そんな当時の暗部を抉るような物語が展開して行く。そして
その物語を、『ユゴ』では見事なアクションで捉えたサンス
監督が、今回は一転、男女の細やかな情愛の世界の中で描き
切って行く。
出演は、『チャングムの誓い』のチ・ジニと、『サッド・ム
ービー』などのヨム・ジョンア。特にチは、17年の長い年月
に渡る物語を見事に演じている。
光州事件に関しては、この後に『光州5・18』と題された
作品もあって、これからいろいろな側面が明らかにされて行
くことになるようだ。その中で、男女関係を中心に置いた本
作は、最初の取っ掛かりとしては良い感じのものになりそう
だ。
なお本作は、3月に東京と大阪で開催される「韓流シネマフ
ェスティバル2008春」の1本として上映される。
韓流シネマフェスティバルの関連ではもう1本、崔洋一監督
『ス』の試写も行われたが、スケジュールの都合で観られな
かった。また東京開催のフェスティバルでは、3月1日から
5月30日までの間に全部で14作品の最新韓国映画が上映され
ることになっている。
『丘を越えて』
猪瀬直樹が2004年に発表した原作小説『こころの王国』を、
今野勉脚本、高橋伴明監督で映画化した作品。1930年頃の東
京を舞台に、菊池寛が主宰する文藝春秋社に出入りする男女
の姿が描かれる。
主人公の細川葉子は、樋口一葉が住んだことでも知られる下
谷竜泉寺町で母親の女手一つで育てられ、女学校も出して貰
った。ところが、折からの不況で勤め口がない。そんなとき
知人に文藝春秋社を紹介され、面接を受けることになる。
その出版社にも採用の枠はなかったが、菊池に気に入られた
葉子は個人秘書として仕事を貰えることになる。こうして勤
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03月02日(日)
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