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On the Production
by 井口健二
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■Girl's BOX、山桜、Swedish Love Story、船山にのぼる、花影、妻の愛人に会う、マンデラの名もなき看守、噂のアゲメンに恋をした!
いる。それはまさに、山桜の花びら1枚にも神経を行き届け
させたとまで言われているものだが、CGIも使ったと思わ
れるその表現は見事だった。
それにしても、主人公の台詞がこれほど少ない映画も珍しい
だろう。これはもしかして、主人公たちの台詞は原作に書か
れたものだけなのではないかと思わせるくらいのものだが、
この難しい役柄を田中が見事に演じている。
特に田中の目の演技は、なるほど彼女が選ばれた理由が判る
というもの。篠原監督も田中も時代劇は初めての挑戦だった
そうだが、現代感覚も踏まえたその挑戦は見事に成功したと
言えそうだ。
共演は、篠田三郎、檀ふみ。さらに富司純子、高橋長英、永
島暎子、村井国夫ら、一つ一つの所作も丁寧な脇役陣が物語
の雰囲気を存分に高めている。
『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』
“En Karlekshistoria”
2月10日付で紹介した『愛おしき隣人』のロイ・アンダーソ
ン監督が、弱冠26歳で発表した1969年のデビュー作。
なお本作は1971年に『純愛日記』の邦題で日本公開されてお
り、今回はそのディジタル・リマスター版。因に今回の邦題
は、国際的に使用される英語題名となっている。
ストックホルムを舞台に、15歳の少年と14歳の少女の恋物語
が描かれる。確か以前の公開時には、北欧の進んだ男女関係
が話題になったような気もするが、今では日本でもそれなり
にありそうな話という感じのものではある。
それは時代の変化ということにもなるのだろうが…ただし、
それを認めて育んで行こうとする社会の大らかさは、到底今
の日本が追いついている訳ではない。その北欧の大らかさが
この映画の素晴らしさであり、その辺の意識の違いは如何と
もしがたいものだ。
一方、この映画は少年と少女を中心に描いてはいるが、その
周囲の大人たちにも目は向けられている。そこには、アンダ
ーソン監督が現在も追求している「人間の置かれた状況に関
する茶番劇」といった視点がすでに目指されているようで、
いろいろ面白いエピソードも登場する。
特に少女の両親の物語は、当時のスウェーデンの状況も踏ま
えて描かれているだろうが、現代の日本にも通じそうなとこ
ろもあり、いろいろ考えさせられた。
とは言え映画の中心は少年と少女の恋物語な訳で、その部分
は、まあ子を持つ親としてはいろいろ考えてしまうところも
あるが、子の立場に立ってこんなふうに一途に初恋が遂げら
れたら、それはそれで素晴らしいこととも言えるだろう。
出演は、数千人の中から選ばれたというアン・ソフィ・シリ
ーンと、当時の著名女優の息子のロルフ・ソールマン。共に
デビュー作だが、2人とも現在も現役の俳優として、またソ
ールマンは監督としても活躍しているようだ。
それともう1人、この映画では当時美少年と歐われたビヨル
ン・アンドルセンもデビューを飾ってる。役柄は主人公の少
年の仲間というものだが、この作品の翌年にルキノ・ヴィス
コンティ監督の『ベニスに死す』に出演したもので、当時の
ファンの人には懐かしいものになりそうだ。
なお、この作品は1970年のベルリン映画祭に出品され、グラ
ンプリの金熊賞は逃したが、国際批評家賞など4冠を受賞し
ている。因にこの年はグランプリ受賞作はなかったものだ。
『船、山にのぼる』
2003年12月16日付で、『ニュータウン物語』という作品を紹
介している本田孝義監督によるドキュメンタリー。広島県の
江の川に作られたダム湖に沈む村を巡って、それを記念する
事業を実施する人たちの姿を記録した作品。
ダム湖に沈む村と言われると、先ず「ダム建設反対運動」が
思い浮かぶ。このダム建設でも反対運動はあったようだが、
この作品ではそれが終結するまでの経緯は簡潔に語られ、そ
こからの未来に向けた行動が中心に描かれる。
もちろん村が無くなるのは悲しいことだが、その文化を受け
継いで新たな歴史に向かって行こうとしている村人たちを如
何に励ますか、そのモニュメントとして計画は動き出す。
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02月24日(日)
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