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On the Production
by 井口健二
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■裸足のギボン、デッド・サイレンス、ビルマ/パゴダの影で、窯焚、ジェリーフィッシュ、軍鶏、死神の精度、靖国
話術を扱っているらしい)
それにしても腹話術の人形というのは、そのままでもちょっ
と無気味な感じもするもの。その人形が殺人鬼、しかもその
手口は舌を引き抜くというのだから、これはかなりの無気味
さだ。さらに古い劇場が背景とされるなど、その雰囲気がた
まらない作品だった。
因に人形のビリーという名前は、『ソウ』で登場する人形と
同じもので、その辺も遊び心のようだ。また『ソウ』に登場
するビリーは手作りだったが、今回は専門家の手になるもの
だそうで、その人形の無気味さも見事に描かれていた。
『ソウ』で造り出したソリッドシチュエーションとは違い、
どちらかと言うとオーソドックスなホラー作品。巻頭には、
地球の周りを複葉機が飛ぶモノクロ時代のユニヴァーサルの
ロゴが登場し、その後にも無声映画の字幕に似せたテロップ
が用いられるなど、往年のユニヴァーサル・ホラーの味を再
現しようという思いも込められていたようだ。
『ビルマ、パゴダの影で』
“In the Shadow of the Pagodas: The Other Burma”
1962年の軍事クーデター以来、45年を超える軍政が続くビル
マ(ミャンマー)の現状を描いたドキュメンタリー作品。
ビルマの民主化運動というとアウン・サン・スー・チー女史
の軟禁が思い浮かぶが、それとは別にビルマ国内には、シャ
ン族、カレン族、ラカイン族など130を超える少数民族が存
在し、彼らもまた軍政による弾圧を受けている。
この作品は、それらの少数民族の存在に目を向け、弾圧の中
で困窮する彼らの生活が描かれる。特には、ビルマ−タイの
国境地帯で、ビルマ国内の村に居住しながら軍隊が来る度に
タイに越境して難民生活を送るカレン族の人々や、両親をビ
ルマ軍に殺され、タイの難民村に設立された学校で学ぶ子供
たちの姿も紹介される。
実際、これらの難民の存在は今までにも少しずつ紹介されて
はいたものだが、隣国のタイやバングラディシュの政府が表
向きの取材を禁じているなど、なかなか実態が掴めないもの
で、それらが取材されていたのは価値あるものと言える。
しかし、弾圧の実態が難民による証言だけで描かれるのは、
如何にもインパクトが乏しいもので、特にそこで難民学校の
子供たちへの取材が長々と続くのは、子供の証言が大人の心
を揺さぶることは確かであっても、何かが不足しているよう
に感じられた。
弾圧の実態を映像取材することが極めて困難であることは理
解する。しかし、例えば弾圧に至る歴史的な背景や、それが
スー・チー女史らの民主化運動とどのように関わっているか
など、より具体的な経緯の紹介がないと、これがビルマの実
態を描いているのかどうかすら不明になる。
また弾圧を受けるからにはそれなりの理由もあるはずだが、
その辺の説明も明確でないと、何か実態が把握できない歯痒
さも感じてしまう。勿論それは、他で調べれば判ることかも
知れないが、どうせならこの作品の中で、そこまでも描き切
って欲しかったものだ。
監督自身は充分に判っていて、今更繰り返すまでもないこと
と判断したのかも知れない。しかし、一般観客へのアピール
を考えるのなら、いろいろな配慮は必要だったと考える。こ
れでは、アピールすべき重要な問題が、ただ眼前を通り過ぎ
るだけで終ってしまいそうなのも、心配に思えたところだ。
『窯焚−KAMATAKI−』
カナダ生まれで、1970年代には日本に在住、79年にATG作
品『Keiko』でデビューしたクロード・ガニオン監督の
2005年作品。同年のモントリオール映画祭で最優秀監督賞な
ど5冠を達成、2006年のベルリンでも部門特別賞を受賞して
いる。
大福帳をさげたたぬきの置物でも有名な日本六古窯の一つ信
楽を舞台に、父親の死によって心を閉ざした日系カナダ人青
年の再生を描く。その青年が、世界的な陶芸家とされる叔父
の家に身を寄せ、日本文化や叔父の生活態度に翻弄されなが
ら自分を見つめ直す。
日本六古窯とは、瀬戸、常滑、越前、信楽、丹波立抗、備前
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01月27日(日)
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