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On the Production
by 井口健二
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■プライスレス、スルース、ジェシー・ジェームズ…、いつか眠りにつく前に、つぐない、ぼくたちと駐在さんの700日戦争、フランチェスコ
また前作では、邸内にいろいろなからくり人形が置かれてい
たようだが、今回は屋敷自体がハイテク化されていて、その
遊びもいろいろと面白かった。
もちろん主演2人の演技も存分に楽しめるところで、特にロ
ウの最初はおどおどした様子から時に傲慢になったり、さら
には色香を漂うわせるなどの変化ぶりは、ブラナーの演出も
あるのだろうが、見事なものだった。
なお台詞の中にhalf-breedという言葉が出てきて、これはい
わゆる混血ということだが、辞書で引くと蔑称ということに
なっている。これは以前に『コンスタンティン』の字幕でも
話題にしたが、通常の混血はhalf-bloodedとされるもので、
これを蔑称とすると日本語でもズバリの言葉はあるが、多少
使い難いものだ。
このため『コンスタンティン』では、片仮名のままの字幕で
意味不明にしてしまっていたものだが…今回の字幕は、「雑
種」これなら差別用語でもないし、なるほどと思えた。

『ジェシー・ジェームズの暗殺』
     “The Assassination of Jesse James
              by the Coward Robert Ford”
ブラッド・ピットの主演で、西部劇で有名な強盗犯の最後を
描いた作品。ピットは本作が出品されたヴェネチア映画祭で
主演男優賞も受賞している。
1881年9月7日、最後の列車強盗を実行したフランク&ジェ
シー・ジェームズ兄弟と強盗団一味は、その後はばらばらに
なり、各地に身を潜めて暮らすようになる。ジェシーもそれ
以前から偽名で地方名士の顔を持ち、家族と共に静かに暮ら
す計画だった。
その最後の犯行現場に現れた1人の若者、彼は以前からの一
味のメムバー=チャーリー・フォードの弟だったが、その場
でジェシーに受け入れられた若者ロバートは、一味が解散し
た後もジェシーの傍で世話係を務めることになる。
南北戦争当時、南軍のゲリラだったジェームズ兄弟は、敗戦
後に仲間と共に強盗団を結成したが、一部に彼らの行動を義
賊のように扱う新聞もあり、また大衆小説の主人公にされる
などして、民衆の人気を勝ち得ていた。
そんなジェームズ兄弟に憧れる若者は多く、ロバートもその
1人だった。それが思いもよらずジェシーの傍に居られるこ
とになる。そして彼の憧れのジェシーは、彼の思い通りの人
物だったのだが…それが、暗殺してしまうまでになる葛藤が
描かれる。
ヴェネチアでの主演賞はピットだったが、映画で注目される
のはこのロバート・フォードを演じたケイシー・アフレック
の方だろう。『ハリウッドランド』などのベン・アフレック
を兄に持つケイシーだが、本作での弟という立場や、臆病者
と呼ばれる雰囲気は見事に演じられていたものだ。
この他、フランク役に『ライトスタッフ』のサム・シェパー
ド、チャーリー役に『チャーリーズ・エンジェル』などのサ
ム・ロックウェル、さらに踊り子/歌手役で、『テラビシア
にかける橋』にも出ていたズーイー・デシャネルらが共演し
ている。
撮影はカナダで行われているが、舞台となる風景は忠実に再
現され、また登場人物が使用する銃器なども、記録に残るか
ぎり実物と同じものが使用されているそうだ。特に、ジェシ
ーの銃は骨董品的な当時のものを現在のスミス&ウェッソン
社が修理して、本物と同じシリアルナンバーまで打ち込まれ
ているとのことだ。
映画では暗殺後のちょっと異様なロバート・フォードの行動
なども史実に則して描かれ、当時の雰囲気が良く伝わってく
る感じの作品。2時間40分の上映時間が正に堪能できる作品
だ。

『いつか眠りにつく前に』“Evening”
老境の女性が思い出す結ばれなかった恋の物語。
『マディソン郡の橋』も同じような設定の物語だったと感じ
るが、1995年の作品が流れ者の男との不倫関係で、別れが必
然であったのに対して、本作は別れる理由もないと思われる
2人が、別れざるを得ない運命に晒される。それはもちろん
フィクションではあるけれど、よりドラマティックに描かれ
た物語だ。

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12月30日(日)
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