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On the Production
by 井口健二
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■シナモン+、東京少女、ちーちゃんは…、アドリブナイト、はじらい、4ヶ月3週と2日、ジプシー・キャラバン、アイ・アム・レジェンド
に出ているときだけ現代と交信できることが判明し、主人公
は100年前の青年と話を交わすようになるが…
物語の設定は、過去にも幾らでも類例を挙げることのできる
ものだが、そんな物語が、現代の女子高生を主人公に見事に
再構築されている。そして展開も、ある種定石通りのもので
はあるが、そこでの道具立てが期待以上に決まっていた。
特に2人が新月の日に銀座で行うデートのシーンは、明治村
に残された当時の建造物と現代の建物が対比されて、銀座の
歴史も感じさせてくれる見事な展開になっている。
そこに描かれた銀座に100年の伝統が息づいているという事
実は、試写会場を出て海外ブランドショップの並ぶ銀座方面
を眺めたときに、最高の皮肉にも思えたものだ。
監督の小中和哉は、2004年『ULTRAMAN』などでSF
特撮の第1人者と呼ばれているようだが、彼の監督デビュー
作の『星空のむこうの国』は、当時NHK少年ドラマシリー
ズの再来を目指すともされていたもので、その趣旨は本作で
も充分に感じられた。
3月に紹介した『きみにしか聞こえない』といい、この作品
といい、このままではSF界からも無視されかねない作品だ
が、何とかこのような作品が無視されないよう、ちゃんと評
価される形にしたいものだ。

『ちーちゃんは悠久の向こう』
日日日と書いて「あきら」と読むらしいライトノヴェル作家
のデビュー作の映画化。原作はいろいろな賞も受賞している
ようだ。
幼いときからずっと一緒だったちーちゃんとモンちゃん。高
校生になっても同じクラスで学ぶ2人はいつも一緒。でも部
活は別で、モンちゃんは弓道部、ちーちゃんはオカルト研究
会に入っている。
そして、部室で古いガリ版刷りの「学園七不思議」を見つけ
てちーちゃんは、モンちゃんを誘ってその探索を始めるが…
それは全部を指示通りに巡り終えたとき、願いが叶うと言い
伝えられているものだった。
映画を見続けていると、ある種の隠された設定には気が付き
易くなる。この作品の設定は、ある過去の話題作と同じもの
で、原作の発表時期から見ると、作者もその映画を観てこの
作品を発想したものだと思われる。
ただしそれはいわゆるパクリとかではなく、同じシチュエー
ションを使って自分ならどんな物語を作れるかという部分に
立つもので、その部分では本作は見事に新たな物語を構築し
ているものだ。
とは言え、やはり気付いてしまうのは仕方ないもので、この
映画化ではかなり早い部分でその示唆があって、それからは
その設定が生じさせるはずの問題を如何にうまく演出処理し
ているかに興味を引かれて映画を観ることになった。
まあ簡単に言えば、気が付かなければもう一度観て確認しな
ければならないことを、最初から確認しながら観ていた訳だ
が、逆に初めて観ながらの確認(?)というのもこの上なく
新鮮なもので、それだけでも結構楽しめたものだ。
ただ結末は、これでは甘いと感じられたが、これは原作に書
かれたものなのだろうか?
主演は、進研ゼミなどのCFに出演の後、アニメ版『時をか
ける少女』の主人公の声優で映画デビューした仲里依紗と、
映画『バッテリー』で3000人のオーディションから選ばれた
林遣都。他にモデル出身の高橋由真。また、堀部圭亮と西田
尚美が脇を固めている。

『アドリブナイト』(韓国映画)
第79回オール読物新人賞を受賞した平安寿子による同名の短
編小説を、韓国で映画化した作品。
物語は、末期ガンで死期の迫った老人の隣人たちが、10年前
に家出した老人の1人娘を捜そうとするもの。ところが捜す
人たちにも娘は幼い頃の印象しかない。そんな隣人たちがソ
ウルの繁華街で面影のある女性を見つけるが、彼女は人違い
だと言い張る。
しかし事情を聞かされ、嘘でも良いから老人を看取ってくれ
と頼まれた彼女は…
前回紹介した『カンナさん大成功です!』は、整形美容が日
常化している韓国の方が理解されやすかったと書いたが、本
作の場合も家族関係が希薄になった日本より韓国の方が似合

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12月10日(月)
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