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On the Production
by 井口健二
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■線路と娼婦とサッカーボール、歓喜の歌、ミスター・ロンリー、アディクトの優劣感、裸の夏、カンナさん大成功です!、SS
裏で人間的な繋がりがいろいろあったり、その辺の展開では
かなり御都合主義ではあるのだが、そんな無茶なという感じ
の解決法は、ある意味ちょっとファンタスティックであった
りもして、それは面白く感じられた。
オリジナルの落語は聞いたことがないが、その原作のことは
映画からは想像もできないというか、それくらいに本作は映
画として成立している。これは原作の脚色としてはなかなか
難しいもので、それを成し遂げたというのは立派なことと言
えるものだ。
脚本監督は『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』
などの松岡錠司。なお、劇中のコーラスは、辻志朗氏の指導
の許、出演者たちによって歌われているようだ。

『ミスター・ロンリー』“Mister Lonely”
結局、自分自身に自信がないというのかな、他人を演じるこ
とが自分のアイデンティティになってしまった人たち。そん
な人たちを描いた物語。
主人公は、パリの街角でマイクル・ジャクスンに成り切って
踊る若者。一応、仕事も斡旋されて老人ホームで営業したり
もしている。そんな営業先で、彼はマリリン・モンローを演
じる女性と出会う。
彼女はチャーリー・チャップリンと結婚して、子供はシャー
リー・テンプル。彼女たちはスコットランドの小さな村で、
他にも同じような人たちと共同生活をしていると語り、彼に
も参加を呼びかける。
そして、一目でマリリンに恋をしたマイクルは、スコットラ
ンドへと向かうのだが…そこにはマドンナや、女王や、法王
や、リンカーンや、あかずきんたちがいて。
脚本、監督は、1995年にラリー・クラークが監督した『KI
DS』の脚本を、弱冠19歳で執筆したハーモニー・コリン。
その後は監督にも進出したが、2002年クラーク監督の『ケン
・パーク』の脚本を発表して以降は、PVや写真集などを手
掛け、映画で目立った仕事はしていなかったようだ。
そんな若き才能が、久々に開花したとも言える作品だ。そし
てそれは、以前の彼が手掛けてきた若者の世界よりもう少し
年上だけれど、しかし今でも迷いから抜け出すことの出来な
い、そんな社会からはみ出した人たちに目を向けていた。
ここに提示される迷いは、もちろん若者に顕著なものだとも
思えるが、もっと大人であってもあまり変わりはしない、た
だそれを隠せるようになっただけのような気もする。そんな
社会に対する疎外感が見事に描かれた作品だ。
出演は、『天国の口、終りの楽園』などのディエゴ・ルナ。
『ダンシング・ハバナ』でも披露したダンスでマイクルに成
り切る。他には、『マイノリティ・リポート』のサマンサ・
モートンらが共演。
また、監督のヴェルナー・ヘルツォークやレオス・カラック
スらが重要な役で登場する。特に、ヘルツォークが神父役を
演じるパナマのFlying Nunの話は意味も深く素敵だった。

『アディクトの優劣感』
アンダーグラウンドでの実体験に基づく作品を発表している
という作家・池間了至の原作に基づき、青山、原宿、六本木
界隈の若者たちの生態を、ディジタル静止画像の連続映像化
(Digital Photomation=デフォメと名付けたようだ)で描
いた作品。
静止画像で物語を描くというと、『12モンキーズ』の元と
なった1962年クリス・マルケル監督の『ラ・ジュテ』を思い
出すが、ディジタル時代にそれが見事に融合した作品と言え
そうだ。なおスチル撮影は、台湾のスチルカメラマン林盟山
が担当している。
自殺した恋人がパソコンに残した遺書。そこには、ドラッグ
への依存症から抜け出すことの出来なかった若者の末路が綴
られていた。
いろいろなドラッグに手を出し、主観的妄想の中に身を置く
若者たち。その仲間の一人が違法薬物の所持で逮捕される。
しかし、警察の目から隠されたドラッグを手に入れた若者た
ちは…
僕自身は、ドラッグは一度も経験したことはないが、描かれ
た映像はその擬似体験のようなものであるらしい。と言われ
てもそれも判断はできないのだが、監督たちの実体験は別と

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11月30日(金)
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