ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460302hit]

■再会の街で、鳳凰、黒い家、エンジェル、ザ・シンプソンズ、その名にちなんで、SAW4
ところで物語の中には、グォ・タォが演じる男性の副主人公
がいて、この男の設定が死体を担いで歩いているところを咎
められ殺人の罪に問われたとされている。そしてこの男が、
友の遺体を故郷に連れ帰ろうとしたと主張しているのだが…
実は今回の東京国際映画祭「アジアの風」部門で上映された
『帰郷』という作品が同じような男を描いていた。
遺体を担いで歩くなんてことは、落語の「黄金餅」以外では
あまり想像できなかったが、『帰郷』を観ていると昔のキョ
ンシー映画を思い出して、なるほど中国では遺体は故郷に帰
すものだと納得した。『鳳凰』の中では台詞しか出てこない
が、その実態は『帰郷』の方で観ることができた。
実は『帰郷』は事情があって全編を観られなかったもので、
このページでの紹介はしない予定だが、映画祭でのちょっと
した相乗効果と言えそうな組み合わせで面白かった。

<特別招待作品>
『黒い家』(韓国映画)
1997年に発表された貴志祐介の日本ホラー小説大賞受賞作を
韓国で映画化した作品。
同じ原作からは1999年に日本でも映画化があり、その作品も
確か東京国際映画祭で観た記憶がある。しかし原作発表から
10年を経て、映像表現の方法も格段に変化した今、この原作
にはピッタリの映画化が実現したと言えそうだ。
保険会社に勤める主人公に、ある日掛ってきた電話は、女性
の声で「自殺でも保険金は出ますか」と尋ねてきた。その質
問に対して幼い頃に目の前で弟に自殺された記憶に苦しむ主
人公は、必要以上に思い止まるよう説得するのだったが…
そんな彼が手掛けている案件は、最初は保険金詐欺のように
始まる。だがそれは、彼を思いも寄らぬ恐怖に引き摺り込ん
で行くことになる。
原作は、日本での映画化の前に読んでいて、日本版の映画を
観たときには物足りなく感じたことを覚えている。その物足
りなさが何なのか当時はよく判らなかったが、結局のところ
サイコパスというテーマの部分が、当時は僕も理解できてい
なかったのかも知れない。
実際、日本映画のときは、出演者は髪を振り乱すような狂気
は演じていても、それはサイコパスを演じていたのではなか
ったようにも思える。それが今回の韓国映画で、同じ登場人
物が一種淡々と演じられる姿には、本当の意味での恐怖が味
わえたものだ。
そしてそれを支える映像演出も確かなもので、上映中には驚
愕の声や、手で顔を覆って指の隙間からスクリーンを観てい
る女性の姿も数多く見られた。基本的にホラー小説の映画化
なのだから、これくらいにはなって欲しいという感じの観客
席の様子だった。
特に、後半の相手が本性を現してから始まるノンストップの
恐怖演出には、久し振りにホラー映画の醍醐味を堪能した感
じがした。
なお監督のシン・テラは、本作が商業映画は初監督というこ
とだが、壺を得た演出には感心した。因に監督は、10数本の
短編作品を手掛けた後、2005年には自主映画で長編SF作品
も製作しているとのことだが、その作品も観てみたいものだ
し、今後もこのような作品を作り続けてくれることを期待し
たい。

<特別招待作品>
『エンジェル』“Angel”
『8人の女たち』などのフランソワ・オゾン監督が、初の英
語作品としてイギリス出身の女流作家エリザベス・テイラー
の原作を映画化した作品。
原作者のテイラーは1912年生まれ75年没。当然映画スターと
は別人だが、結婚後の1945年頃から小説を発表。その作品は
ニューヨーカー誌やEQMMなどにも掲載された人で、没後
30年を迎えた2005年頃から再評価が始まっているようだ。
本作は、そのテイラーが1957年に発表した長編小説に基づい
ている。
時代は20世紀初頭。イギリスの片田舎の雑貨店の2階で母親
と共に暮らすエンジェル・デヴェレルは、いろいろな想像を
広げながら、その想像を文章に綴ることが好きだった。
それは学校では教師の失笑を買い、家でも母親や伯母の理解
は得られないものだったが、ある日ロンドンの出版社に送っ

[5]続きを読む

10月31日(水)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る