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On the Production
by 井口健二
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■すんドめ、ユゴ、アニー・リーボヴィッツ、アース、ペルセポリス、眠れる美女、ぜんぶフィデルのせい、俺たちフィギュアスケーター
削除されたのは、閣下と若い女性の官能シーンだそうで、そ
の直後に女性の母親が捜査官に向かって語るシーンが映像で
描かれていたようだ。
でも、そのシーンをカットしたからと言って、映画の描きた
かったことが損われているものではない。学生逮捕者に対す
る拷問シーンの再現なども含みながら、当時の韓国の実態が
再現されて行く。
監督は、1998年の『ディナーの後に』が鮮烈な印象を残すイ
ム・サンス。主演はペク・ユンシク、ハン・ソッキュ、ソン
・ジェホら。また、人気歌手のキム・ユナが現場に居合わせ
た歌手役で出演して、「悲しい酒」「北の宿から」などを日
本語で聞かせてくれる。
描かれた物語は真実かどうか。監督は「日本人にはコメディ
として観てもらっていい」と発言しているそうだ。
『アニー・リーボヴィッツ』
“Annie Leibovitz: Life Through a Lens”
初期のRolling Stone誌の表紙を飾り続けた女流写真家を題
材にしたドキュメンタリー。実の妹が監督となって製作され
た作品で、功なり名を遂げた姉の姿を、そのまま撮影した作
品という感じのものだ。
1949年生まれ。1967年に軍人だった父親の赴任により家族で
フィリピンに渡り、そのとき手にしたカメラで家族写真から
撮影を始める。1970年に単身サンフランシスコに移住して、
絵画と写真を学びながら、当時は新興雑誌だったStone誌の
仕事を開始、同年ジョン・レノンのカヴァーストーリーを手
掛けて評判となる。
1975年のローリングストーンズのツアーに同行。彼らがバッ
クステージでくつろぐ写真は、友人にしか撮れないとも言わ
れ、一躍名声を得る。そして1980年、レノンの死の数時間前
に撮ったヨーコとのポートレートはStone誌の追悼号の表紙
を飾ることになる。
1983年Vanity Fair誌に移籍。ロックミュージシャンだけで
なく、映画スターやセレブを被写体にした写真を撮り続け、
Fair誌を飾ったデミ・ムーアの妊婦ヌード写真では論争も巻
き起こした。
そして現在は、ファッション誌からCMまで手広く扱い、特
にその被写体に合わせて創造される背景の巧みさには、他の
追随を許さないものがあるようだ。
こんな彼女の人生が描かれているものだが、映像ではオノ・
ヨーコを始め、ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ベ
ッド・ミドラー、ウーピー・ゴールドバーグらへのインタヴ
ュー。さらに、ジョージ・クルーニー、キルスティン・ダン
スト、キーラ・ナイトレー(「オズの魔法使い」の写真スト
ーリーのようだ)の撮影風景なども織り込まれていて、それ
は観ていると面白い。
ただ、例えばローリングストーンズのツアーへの同行では、
当然あったはずのドラッグの問題は言及はされるが実態はぼ
かされている感じだったり、また戦火のサラエボ取材にも同
行し、死も看取ったスーザン・ソンタグとの関係が、本当は
どうだったのかという点も中途半端な感じで、その辺は身内
が監督していることの限界も感じられた。
まあ、全体的にはきれいごとに終始してしまっている感じだ
が、1970年代から現代までのポップカルチャーの流れを垣間
見られるところは、それなりに面白くも描かれていた。
『アース』“Earth”
BBCの製作で、地球の生態系の現時点での姿を描いたドキ
ュメンタリー。
北極圏の白熊の子育てから始まり、その部分は先に紹介した
『北極のナヌー』とも似ているが、北極から南極までを網羅
的に描いている点では、本作の方が見所も多いし、映像も堪
能できる。またそれは、地球にはまだ自然がこんなに残って
いるのだと思わせる反面、その自然が最早風前の灯火である
ことも明確に伝えている。
地球の温暖化は、北極の氷を蝕むだけでなく、雨季乾季によ
って司られてきたサバンナの気候を不安定にし、また海水温
の上昇によってクジラの餌であるプランクトンを減少させる
など、ざまざまな影響を生じさせているようだ。そんな地球
の自然の、今置かれている状況が見事に描かれている。
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10月20日(土)
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