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On the Production
by 井口健二
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■TAXiC、おやすみクマちゃん、酔いどれ詩人になる前に、北極のナヌー、エディット・ピアフ、ルーツ・タイム
キー旅行」「雪だるまさんと春の訪れ」と続く。
どれも題名から想像される通りの物語だが、案外楽しんで観
ていられるのは、自分が童心に還ったというより、それなり
に普遍的なテーマが捉えられていることにもありそうだ。
104本の中から選び抜かれたというところはあるだろうが、
作品の質はそれなりに高く、大人の目でも充分に楽しめた。
なお、日本語版の吹き替えをケロポンズという女性デュオが
担当しているが、全国各地で親子向けのステージショウを展
開しているという2人のパフォーマンスは、この題材にはピ
ッタリはまっている感じのものだ。
また、8月4日〜9月14日の東京都写真美術館ホールの上映
では、1962年製の「こぐまのウシャテック」という9分の作
品が1日1回19時の回に併映される。試写はなかったが、シ
リーズの原点となる絵本の映画化ということで、かなり貴重
な作品のようだ。
『酔いどれ詩人になる前に』“Factotum”
1994年に亡くなったアメリカの詩人・小説家チャールズ・ブ
コウスキーの自伝的な小説の映画化。脚色と監督は、2004年
3月に『キッチン・ストーリー』を紹介しているノルウェー
出身のベント・ハーメル。2005年製作で監督初の英語作品と
いうことになる。
主人公は自称作家だが、作品が売れている訳でもなく、それ
でいて生活のために職に就いても長続きはしない。そして、
溢れ出す言葉を綴り続けなければならないと言っては、常に
ノートに何か書き付けている。
そんな主人公は、バーで拾った女と一緒に暮らしているが、
正に酔いどれてセックスに明け暮れているという状態だ。そ
して仕事は、氷の配達やタクシー運転手、ピクルス工場、バ
イクの部品倉庫など転々とするが、どれも長続きはしない。
そんな時、突然競馬の予想が次々に当り出し小金を稼ぐが、
それが原因で女の心は離れて行ってしまったりもする。また
別の女と彼女のパトロンの家に居候になったり、両親の家に
帰れば、彼の人生を認めない父親に冷たく追い出されたりも
する。
そんな売り出し前の作家の姿が描かれる。でも、まあ原作者
は最終的に作家になった訳だから、その点は安心して観てい
られるという作品だ。それにこの主人公が、たまに無頼にな
ってみせたりもするが基本的に優しくて、多分女性にとって
は堪らない魅力の持ち主であっただろうことが見事に描かれ
ている。
出演は、主人公にマット・ディロン。『クラッシュ』でオス
カー助演男優賞にノミネートされた翌年の作品だが、本作の
方が断然名演技に見えてもインディペンデントの作品は、な
かなか評価されないのが常というところだ。
共演はリリ・テイラーとマリサ・トメイ。他に今年2月に紹
介した『ダウト』にも出ていたフィッシャー・スティーヴン
ス。さらに無記名のカメオ出演も多数あるようで、つまり、
それだけ俳優たちの興味を引く作品だったということになる
ようだ。
原作者は日本でも人気があるようだが、その読者の期待は裏
切らない作品になっていると思われる。今時こんな作家がい
るのかどうかも判らないが、観ている間は多少憧れも感じた
ものだ。
『北極のナヌー』“Arctic Tale”
ナショナル・ジオグラフィック製作による初の劇場公開用作
品で、今後30年間で消滅してしまうかも知れないと言われる
北極の自然を記録したドキュメンタリー。
北極の氷原で暮らす白クマの母子と、北極海に住むセイウチ
の一族が、温暖化の進む中で生き抜いて行く姿が描かれる。
しかし今年はなんとか生き延びても、来年、また再来年と環
境はどんどん厳しくなって行く。
映画は、広大な雪の斜面に掘られた雪洞で冬に生まれた小熊
が、初めて外に出るところから始まる。一方、海中ではまだ
臍の緒を付けたままのセイウチの赤ん坊が、母親ともう1頭
の雌と共に泳ぎ始めている。
そして物語としては、この小熊とセイウチの赤ん坊の成長を
追って行くものだが、そこには、温暖化の影響で海の凍結が
遅くなったり、凍結しても柔であったり、またセイウチの一
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07月20日(金)
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