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On the Production
by 井口健二
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■ショートバス、選挙、ジーニアス・パーティ、監督・ばんざい!、イラク−狼の谷−、怪談、ベクシル−2077日本鎖国−
紙からは「魅惑的な主人公を描いたカリカチュア」という評
価が出されている。僕の観る限りここには戯画化したような
演出もないし、恐らく事実が写されているだけなのだが…。
それが戯画に見えてしまうほどの馬鹿馬鹿しさなのだ。
想田は、多分アメリカでの選挙運動はよく見ているのだろう
が、その日本在住者とは違う目線が、恐らく在住者が撮る以
上に不思議な光景を描き出す。
まあ正直なところは、どうせこんなものだろうと予想してい
た通り部分もあったが、現実に映像で見せられるその異様さ
には改めて驚かされる。認識を新たにもさせてくれたし、見
せてもらって良かったとも感じられた。
因に、川崎市議は今年4月の統一選挙で通常の選挙が行われ
たが、舞台となった選挙区に山内和彦の名前はなかったよう
だ。定数+1で争われたこの選挙区では、山内を除く現職の
他に、元議員秘書という新人が自民党公認で立候補したが、
唯一人落選している。
この辺の事情も<観察>していてくれると面白かったと思う
が、それはないのかな?

『ジーニアス・パーティ』
『アニマトリックス』で話題になったスタジオ4℃の呼び掛
けで、日本のアニメ界で活躍する7人のクリエーターが競作
した短編集。
顔触れは「ポポロクロイス物語」の福島敦子、「超時空要塞
マクロス」の河森正治から、「マインド・ゲーム」の湯浅政
明、「カウボーイビバップ」の渡辺信一郎まで、本来の監督
だけでなく、設定やメカ、キャラクターなどのデザインを手
掛けている人たちが、それぞれオリジナル作品を作り上げて
いる。
作品の内容は、それなりにストーリー性のあるものから前衛
的なものまで種々雑多で、ストーリーもSFから青春ものま
でいろいろだが、基本的には未来もののSF的な題材が多く
なっていたようだ。
中には、どんな宗教にかぶれているんだか、ナレーションで
延々と薄っぺらな御託を並べているような作品もあって、こ
れはどうかと思ったが、その1本を除けば全体的な作品の粒
は揃っている感じがした。
映像は、効果のつもりか、わざとらしくぎくしゃくした描き
方のものもあったが、ほとんどはCGIの効果で、視点移動
などもスムースだし、またデフォルメやメタモルフォーゼな
ども、見ていて気持ちの良い作品が多かった。
ただ、前衛的な作品では、ルネ・ラルーやノーマン・マクラ
ーレン、それに久里洋二などを見てきた世代としては、今の
時代に最新技術を使ってもっと何かできるのではないか、と
いう感じもした。
当時の限定された技術の中で見事な作品を描いていたラルー
やマクラーレンらが、現代の技術を駆使したら、一体どんな
作品が作られるか、そんな作品が見たかったところだが、そ
れはまあ追々生まれてくることを期待したい。
なおストーリーでは、2番目の河森作品『上海大竜』が、設
定などもいろいろ細かく考えられている感じで面白かった。
ただ、敵対する存在というか、その背景が明確に提示されな
いのだが、その辺りも含めて長編に仕上げて欲しい感じもし
たものだ。

『監督・ばんざい!』
北野武監督の第13作。「ウルトラ・バラエティ・ムービー」
と称されていて、いろいろなジャンルの映画がサンプルのよ
うに登場する。
前にも書いたと思うが、北野映画は嫌いではない。ただし初
期の頃は見逃していて、僕が試写で観たのは「キッズ・リタ
ーン」からだと思うが、概ね好きな作品だ。その好きな理由
は、どの作品もそこに生の人間の存在が感じられるところだ
ろう。
特に、たけし本人が主人公を演じているときは、彼自身が醸
し出す人間臭さが好きなのだと思う。それはそれとして今回
の作品には、これも人間臭さではあるのだが、いろいろな意
味での迷いが感じられた。
映画の中でも出てくるが、北野監督は「ギャング映画は二度
と撮らない」と宣言しているのだそうだ。その監督が、最初
に「ギャング映画」のサンプルを提示する。これで「本心は
またやりたいのだろうな」と感じてしまうのは単純かも知れ

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05月10日(木)
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