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On the Production
by 井口健二
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■夕凪の街桜の国、明るい瞳、パンズ・ラビリンス、アーサーとミニモイの不思議な国、JUST FOR KICKS、リーピング、天然コケッコー
るか見出して行くファニーの姿を描いている。これは多分、
現代人の多くが自己を見失って暮らしている中で、最も大切
なものが何かを描いた作品とも言えるものだ。
ドイツの森林地帯が美しく描かれ、ここでなら誰でも変われ
そうな雰囲気も漂う。そんな現代人のオアシスのような作品
でもある。
主人公のファニーとその兄ガブリエルを演じるのは、3月に
紹介した諏訪敦彦監督の『不完全なふたり』にも出演してい
たナタリー・ブトゥフとマルク・チティ。また、ドイツの森
の住人オスカーを、2004年11月紹介の『戦争のはじめかた』
に出演のランス・ルドルフが演じている。
なお、監督はチャールズ・チャップリンの大ファンなのだそ
うで、映画には数々のオマージュも描かれているものだ。
『パンズ・ラビリンス』“El Laberinto del fauno”
『ブレイド2』などのギレルモ・デル=トロ監督によるダー
ク・ファンタシー。本作は今年のアカデミー賞で、撮影、美
術、メイクアップの3部門で受賞した他、脚本、作曲、外国
語映画部門にもノミネートされた。
遠い昔、地下にあった王国の姫が地上に憧れ、従者の目を盗
んで王国を脱出する。ところが、地上に着いた姫は記憶を失
い、王国に戻れないまま生涯を終えてしまう。しかしその姫
の心は少しずつ子供たちに引き継がれていった。
一方、地下の王国もいつの日か姫の心を持った子供が帰って
くることを信じ、世界中にその入り口を設けて待ち続けた。
だが、長い年月の内にその入り口も一つずつ朽ち果て、王国
もその力を失って行く。
そして、時代は第2次大戦末期の1944年。ノルマンディ上陸
作戦が開始され、スペインではフランコ政権の圧制に反対す
るゲリラ戦が続いていた。そのゲリラ掃討のため山中に設営
された駐屯地。そのそばで、最後の入り口がいま正に朽ち果
てようとしていた。
その駐屯地に1人の少女が向かっていた。そこでは、義父の
残忍な司令官の大尉が彼女の運命を変えようとしていた。そ
の運命に翻弄されながらも少女は王国の入り口となる迷宮を
見つける。だが、少女にはさらなる試練が待ち構えていた。
第2次大戦/フランコ政権と言われても、今の若い人には多
少判り難いかも知れない。でも、近代銃器がありながらどこ
か中世風の雰囲気というのは、ファンタシーゲームの世界感
にも似ていて、そんな感じで理解されればいいかなとも思っ
てしまうところだ。
目的に向かって試練を一つづつクリアして行く展開も、特に
ゲーム世代の人たちには理解しやすいものだろう。近い将来
にゲーム化される可能性もないとは言えない。その予習のた
めに観ておくのも良いかも知れない。
海外でも、おそらく日本でもダークファンタシーという括り
で宣伝されることになりそうだ。確かにダークな「死」も多
く表現される作品ではある。それに残虐な描写も少しは登場
する。しかし、全体は希望を描いたものであり、その達成が
見事な情感で描かれる。
出演は、主人公の少女役に1994年生れのイバナ・バケロ。監
督の構想では主人公はもっと幼い年代だったがオーディショ
ンに現れた彼女を見て、脚本を書き替えたのだそうだ。
その他、大尉役にはセザール賞受賞者のセルジ・ロペス、母
親役に2003年5月紹介の『ベアーズ・キス』に出演のアリア
ドナ・ヒル、主人公を助ける地元女性役に2002年6月紹介の
『天国の口、終りの楽園』で主人公たちを惑わす女性を演じ
たマリベル・ベルドゥ。
そしてパン(ファーン)役を、『ミミック』から『ヘルボー
イ』まで、デル=トロ監督作品には欠かせないダグ・ジョー
ンズが演じている。
本作は、スティーヴン・キングが昨年度の第1位に選出した
ということだが、それも大いに頷ける作品だ。
『アーサーとミニモイの不思議な国』
“Arthur et les Minimoys”
リュック・ベッソンが2002年に発表した子供向けのファンタ
シー小説に基づき、自らの脚色監督で映画化した作品。
作品の成立の経緯は、先にパトリス・ガルシアという人の描
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04月30日(月)
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