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On the Production
by 井口健二
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■ゾディアック、インビジブル・W、ジェイムズ聖地へ…、寂しい時は…、毛皮のエロス、鉄板英雄伝説、ストレンジャー・C、ボラット
たと言っているようだが、その物語もまた不思議な雰囲気の
中で綴られて行く。
英語、タイ語、広東語、日本語が何の障害なく交わされる。
特に浅野は、いかにも日本人らしい英語で、その辺の演出の
付け方もこの不思議な物語に見事にマッチしていた。
撮影監督のクリストファー・ドイルや、脚本、美術などのス
タッフも前作と同じということで、全てが監督の意志の下に
が統一されて、破綻のない映像が造り出されている感じがす
る。そんな安定感のある作品だ。
殺人が背景にあってこの雰囲気の展開だから、間違いなくフ
ィルムのアールということになるのだろうが、映画はそれ以
上に浅野が演じる主人公の孤独感や、その中でも人との繋が
りを求める焦燥感のようなものが描き出される。
その点では極めて現代を感じさせてくれる作品でもある。そ
の孤独感、焦燥感が、多国籍の人々の中で暮らしているとい
う主人公の設定で増幅され、見事に描き出されていた。
『ジェイムズ聖地へ行く』“James'Journey to Jerusalem”
1月に紹介した『パラダイス・ナウ』にイスラエル側製作者
として参加したアミール・ハレルが手掛けた2003年の作品。
とあるアフリカの村で次期司祭に任命された青年が、村人た
ちの期待を背負って聖地エルサレムへの巡礼に出る。ところ
が、青年はイスラエルに到着するなり逮捕され、何故か不法
労働者として働かされることになる。しかし青年は、それを
試練と受けとめる。
一方、純朴な青年はいろいろな人に気に入られ、また、青年
にはちょっとした能力があって、それらがいろいろ作用して
徐々に頭角を現して行く。そして、イスラエルのユダヤ人社
会の中で純朴なズールーの青年が見たものは…
聖書で「約束の地」と呼ばれるエルサレムのイメージは、緑
の草原が広がり、ミルクと蜂蜜の香りに溢れているというも
のだそうだ。でもそんなものが現実のエルサレムにあるはず
もなく、その現実は青年にも突きつけられるのだが、それを
青年は自分なりに解釈してしまう。
そんな純朴な現代のおとぎ話のような作品だが、そこに、い
ろいろ現代人が抱える問題点が描かれているのも面白いとこ
ろだ。
ただし映画は、中東イスラエルを舞台にしていながら不思議
なほどに危機感がない。確かにテレビで「爆弾テロがありま
した」というような報道がされていはいるが、主人公たちが
それに巻き込まれるようなこともなく、その危機感も全くな
いものだ。
『パラダイス・ナウ』のときも、物語は爆弾テロを描いてい
るが、主人公たちの生活には危機感もなく、平穏な風景が描
かれていた。実は以前に映画祭で観た作品では、もっと徹底
して全く平和な世界が描かれていたものもあり、それは不思
議な感じだった。
もちろん、イスラエルやパレスチナの映画だからといって紛
争を描かなければいけないものでもないし、それを素直に受
け取れない自分の方が間違っているのかも知れないが…
そして本作は、その点を除けば全くの普通に寓意に満ちた物
語であって、普通に観て面白く描かれた作品と言っていいも
のだ。なお、映画ではキーワードとして「フライヤー」とい
う言葉が登場するが、これは「搾取される人」の意味のヘブ
ライ語だそうだ。
『寂しい時は抱きしめて』“Lie with Me”
カナダ在住の官能小説家タマラ・フェイス・バーガーの原作
を、夫で映画監督のクレメント・ヴァーゴと共同で脚色し、
ヴァーゴが監督、テレビシリーズ『ミュータントX』などで
知られるローレン・リー・スミス主演で映画化した作品。
主人公のライラは、肉体的なsexでは絶頂感を知っている
が、本当の愛は知らない女性。関係の冷え切った両親や、結
婚が間近なのに元彼との関係を切れない従姉妹などもいて、
本当の愛情というものがますます判らなくなっている。
そんな彼女が、ある日、立ち寄ったクラブでデイヴィッドに
目に留める。しかし彼は女性連れで、2人は互いに見つめ合
いながら、別の肉体とsexを行うことになる。それでも忘
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04月10日(火)
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