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On the Production
by 井口健二
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■ボンボン、女帝、フランドル、キャラウェイ、それでも生きる子供たちへ、300、ルオマの初恋、イノセント・ワールド
シェイクスピアの原作がこんなにアクション満載になってし
まうとは…人の頭上を飛び越えたり、屋根から屋根へ飛び移
ったり、よくぞやってくれたという感じの作品だ。
一方、映画の中には、ウーやシュンによるちょっと不思議な
仮面舞踊も挿入され、その振り付け師の名前などの紹介はプ
レス資料になかったが、それぞれ興味深かった。また壮大な
宮廷の外観などの風景にはCGIも使われていたようだが、
それも見事だった。
ただし、『ハムレット』と言われると、ファンタシー好きの
僕などは父王の幽霊のシーンを期待してしまうものだが、そ
れは今回は登場しなかったようで、それだけがちょっと残念
だったかなという感じの作品だ。
『フランドル』“Flandres”
フランス映画祭上映作品。
本作は昨年のカンヌで審査員グランプリを受賞している。
フランス北部の農村地帯フランドル。人影もまばらで寒々と
した風景の中、性に奔放な女と男たちの繋がりが綴られて行
く。ところが、そんな村の若者たちに召集令状が届き始め、
彼らは戦地へと駆り出されて行く。そして彼らは、そこで地
獄を見ることになる。
一方、それは彼らを待つ女にも、悲劇をもたらす。
戦場に駆り出される若者と、故郷に残された女性という構図
は、アンソニーミンゲラ監督の『コールド・マウンテン』に
も似ている。しかし、ミンゲラ作品でも描かれた戦争の愚か
しさは、現代の戦争を描くこの作品ではさらに狂気を伴った
悲劇を描き出す。
フランスが参戦しているその戦争がどこで行われているかは
明示されないが、砂漠とジャングルのある国で、ゲリラとの
戦いに巻き込まれているようだ。そこで彼らはゲリラ掃討作
戦に従事するが、それは男と見れば銃殺し、女は輪姦すると
いう凄絶なものだ。
ミンゲラの作品では、戦争は愚かしく描いても、人間の尊厳
は保たれていたと思う。しかし現代の戦争を描くとき、人間
の尊厳の欠片もそこには描かれない。イラク戦での捕虜虐待
などがそれを現実として報じているものだ。
戦時でもジュネーブ条約などは遵守されると信じていたが、
それが反故にされたのは何時ごろからなのだろう。戦争が国
の威信をかけた戦いであった時代から、主義や教義を旗印に
したものに変ったとき、戦争の意味も変ってしまった。
なおこの作品では赦しも描かれる。だがそれは、戦争の狂気
が起こした罪に対するものではないことは確認しておくべき
だろう。この映画の制作者は、戦争犯罪は赦してはいない。
むしろそこでの微かな善を描こうとしているかのようだ。
監督のブリュノ・デュモンは、1999年発表の『ユマニテ』で
もカンヌで審査員グランプリを受賞しているが、メッセージ
性の強い作家として論議を呼ぶことが多いようだ。しかし本
作のメッセージは、僕には素直に受け取れるものだった。
『キャラウェイ』
Webなどで作品を発表している日高尚人という監督による
プロローグ+10作品の短編集。
プロローグは、デートに出かける男女をマルチスクリーンで
描いた実験的作品。本編の1本目は最近男と別れた女性に架
かってくる電話の話。2本目はSF映画を話題にする若者た
ちの話。3本目は25歳童貞男の焦りを描いた作品。
4本目は両親のいない兄弟の機微を描いた作品。5本目は女
の殺し屋を主人公にした物語。6本目はカップルの日常会話
を描いた作品。7本目は昼休みの公園で1輪の花を巡る2人
の男の物語。
8本目は新聞配達と投入口に挟まった手紙の話。9本目はド
ラゴ★ボールに奇跡を願う男の話。10本目は別れた男女の最
後の一瞬を描く物語。
という11本だが、何と言うかテーマも何もばらばらな11本の
寄せ集めというような作品。しかも、それぞれの話は何か当
り前すぎるというか、一応の落ちはあるが捻りはあまりなく
て、正直なところは、見ていて物足りなさを感じ続けた。
ところが、実はこの作品にはちょっとした仕掛けがあって、
この仕掛けが過去に類例のあるものかどうかは判らないが、
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03月20日(火)
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