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On the Production
by 井口健二
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■バベル、蟲師、さくらん、ママの遺したラヴソング、しゃべれども しゃべれども、主人公は僕だった、パフューム
ハンが行われたということだ。そして最終的に選ばれたロケ
地は、一部は機材をヘリコプターで運搬する程の山奥だった
りもしたようだが、その効果は充分に映画に現れている。
試写会の舞台挨拶で監督は、「探せば意外とあるものです」
と語っていたが、それでもそれを探し出し、そこでロケ撮影
を敢行する熱意は感じ取りたいところだ。
一方、実在しない蟲の映像化はCGIで行われているものだ
が、昆虫的なものから書に変化したものまで、多様な蟲が見
事に描き出されている。特に、オダギリや蒼井の顔面や身体
を這い回る書と化した蟲は、無気味ではあってもグロテスク
ではなく、その辺の表現も見事だった。
因に、オダキリ、江角、大森の配役は、監督や原作者の希望
とされているが、蒼井に関してはオーディションで選ばれた
ものだそうだ。2005年8〜11月の撮影時期から考えると、ま
だブレイク以前のことのようだが、初々しくて、正に最適な
配役を得たと言えそうだ。
『さくらん』
女流写真家の蜷川実花が、安野モモコの原作とタナダユキの
脚本、土屋アンナの主演を得て作り上げた江戸・吉原の遊郭
を舞台にした作品。2月開催のベルリン映画祭で特別招待作
品のオープニングを飾る。
江戸・吉原。華やかな花魁道中の横を、1人の少女が女衒に
連れられ通り抜けて行く。そしてその先の玉菊屋という見世
に預けられた8歳の少女は、「きよ葉」と名付けられて禿と
なり、花魁への道を歩み始める。
吉原と言われると、落語などでもいろいろ聞いてきたから、
それなりの予備知識は持っていたつもりだが、いざ映像で見
せられると、成程こんなだったのかと目を見張る部分も多か
った。
と言っても、ここに登場する吉原は、安野、タナダ、蜷川の
感性で再構築されたもので、実物とは違うのだろうと思いつ
つ、それでもその色彩感覚や造形の素晴らしさには、こんな
吉原があってもいいんじゃないかと思わせてしまう世界だ。
もちろん描かれるのは遊女の世界、きれいごとの話ばかりで
はないし、騙し騙されの男女の物語も展開する。しかし主人
公のきよ葉=後に日暮は、客に「なめんじゃねえよ」と言い
放ち、気に入らない遊女には飛び蹴りを食らわせるという規
格外れの豪快さ。
そんな主人公をど真中に据えて、ちょっと不思議な感覚の青
春映画が展開される。もちろん遊郭という特殊な世界の話で
はあるのだけれど、逆にその特殊さが、不思議だけれど現代
社会には通じてしまいそうな、そんな感覚も覚えた。
そして物語は、落語の「紺屋高尾」や「品川心中」などの遊
郭噺にでも出てきそうな生き生きとした人間模様が描き出さ
れ、その感覚も僕には嬉しいものだった。
出演者は、豪快な花魁を見事に演じた土屋を筆頭に、椎名桔
平、成宮寛貴、木村佳乃、菅野美穂、石橋蓮司、夏木マリ、
市川左團次、安藤政信、永瀬正敏、美波、山本浩司、遠藤憲
一、小泉今日子。
また美術スタッフとして、美術の岩城南海子、衣装スタイリ
ストの伊賀大介、杉山優子、花の東信、グラフィックデザイ
ンのタイクーングラフィックスなど、30歳前後の若い顔ぶれ
が揃っているのも魅力的な作品だった。
『ママの遺したラヴソング』
“A Love Song for Bobby Long”
スカーレット・ヨハンソンとジョン・トラヴォルタ共演作。
ヨハンソンは一昨年のゴールデングローブ賞で主演女優賞候
補に選ばれた。
ニューオーリンズで1人の女性の葬儀が営まれる。その葬儀
の参集者は少ないが、みな彼女を愛していたようだ。そして
その訃報は数日後に娘のパーシーに伝えられる。遅延は、彼
女のボーイフレンドが伝言を怠ったためで、彼女は直ちに亡
き母の暮らした町へと向かう。
実は、彼女は幼い頃に母親と別れ、祖母に育てられていた。
そんな母子だったが、母親は彼女に住んでいた家を遺してい
た。ところがその家には2人の見知らぬ男たちがおり、彼ら
はその家をパーシーと共に母親から相続したと主張する。
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01月31日(水)
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