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On the Production
by 井口健二
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■マリー・アントワネット、Life、ユメ十夜、神童、情痴、オール・ザ・キングスメン
同じような作品では、数年前に東京国際映画祭で上映された
『きょうの出来事』を思い出したが、何かピンと外れのよう
な感じのした商業監督の作品より、本作の方が内容的にもし
っかりしているし、纏まりも良いし、何よりずっと瑞々しく
て良い感じがしたものだ。
監督・脚本はぴあフィルムフェスティバル・技術賞受賞者の
佐々木紳。
主演は『仮面ライダー555』などの綾野剛で、音楽も担当
している。同じく『555』の泉政行、村上幸平の他、岡本
奈月、今宿麻美、忍成修吾らが共演。

『ユメ十夜』
1906年に夏目漱石が発表した「こんな夢を見た」で始まる10
篇の短編集を、実相寺昭雄、市川崑、清水崇、清水厚、豊島
圭介、松尾スズキ、天野喜孝+河原真明、山下敦弘、西川美
和、山口雄大監督で映画化したオムニバス。
出演は、小泉今日子、うじきつよし、香椎由宇、石原良純、
藤岡弘、緒川たまき、松山ケンイチ、本上まなみ、戸田恵梨
香、石坂浩二。
この原作について、漱石本人が「余は吾文を以て百代の後に
伝えんと欲する野心家なり」と友人に書き送っているそうだ
が、それを100年後の今年に映画化したものだ。
僕は原作は読んでいないが、一応原作に則ったお話にはなっ
ているのかな? それなりに理路整然としたものもあるが、
かなり支離滅裂なものもあり、それぞれ面白かった。
基本的には、100年前の風景の中で展開するものが多いが、
中には平然と現代を取り入れている監督もいるし、CGI作
品もありで、その辺はまた監督の個性も良く反映されている
感じのものだ。
監督の個性ということでは、監督の名前と作品をランダムに
見せられても、多分その組み合わせは判ってしまうのではな
いか、それくらいに各監督の個性が明瞭に発揮されている感
じがした。
個人的な好みでは、ホラー調の第三夜清水崇作品、怪物が登
場する第十夜山口作品辺りは話の纏まりも良いし、映画とし
ても面白く感じられた。でも、第六夜の松尾作品のハイテン
ションな凄さには、ちょっと唖然とさせられた。
松尾監督の作品は、『恋の門』と、オムニバス『フィーメイ
ル』の1篇を見ているが、この映画を根本から破壊しようと
するような勢いは、既成の監督にはかなり困難だろう。それ
を平然とやってのけるところが松尾監督の凄さだ。
その他の監督も、それぞれの個性が豊かに作品を作り出して
いる。実相寺のレトロ調や、市川の侍の描き方も、実にそれ
ぞれの個性という感じがした。なお、第一夜の脚本は久世光
彦で、監督共々これが遺作となったものだ。

『神童』
1999年の手塚治虫文化賞及び文化庁メディア芸術祭マンガ部
門優秀賞を受賞した、さそうあきら原作の映画化。
神童と呼ばれる少女ピアニストを主人公に、神童であるが故
に、人々から注目される中で生きることの悩みや苦しさを描
いた作品。
喋るより前に譜面を読みピアノを弾いていたという13歳の少
女と、ピアノが好きというだけで音大ピアノ課を目指してい
る19歳の青年との出会い。それは、周囲の期待が重荷になり
かけていた少女に、再びピアノを弾くことの楽しさを呼び戻
すが…
これに、彼女の父親の死の謎や、彼女自身の病や、巨匠との
出会いなどのエピソードを絡めて物語は進んで行く。
テレビでも音大を舞台にしたマンガ原作のドラマが放送され
ていたが、本作の原作はそのクラシック漫画ブームの先駆け
となった作品のようだ。その原作が、ブームの中で映画化さ
れたものだ。
主演は、『ウォーターズ』の成海璃子と『DEATH NO
TE』の松山ケンイチ。
ピアノ演奏がテーマの作品だけに、演奏シーンはふんだんに
登場する。そこで、成海は以前にピアノを習っていたことが
あるようだが、松山は2カ月の特訓の成果ということだ。音
楽は、ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ショパン、シュ
ーベルト、モーツァルトなど8曲が演奏される。
と言っても、実際の演奏は当然吹き替えだが、その吹き替え
の担当は、松山は、テレビドラマでも主人公を担当したとい

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12月29日(金)
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