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On the Production
by 井口健二
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■ワン・ラブ、レイヤー・ケーキ、カポーティ、サムサッカー、ジダン、ファントマ
が、初監督作品としても及第点を出していいだろう。
クレイグ以外の出演者では、コルム・ミーニイ(『新スター
トレック』のオブライエン)、マイクル・ガンボン、ケネス
・クラナム、ジョージ・ハリス、ジェイミー・フォアマンな
ど渋めのイギリスの映画人に加え、『カサノバ』のシエナ・
ミラーが色を添えている。
なお題名意味は、層構造のケーキ、つまり日本で言う所謂ケ
ーキのことで、階層構造の社会では一番上が一番甘いという
ことを言いたいようだ。それは甘いだけではないのだが。
『カポーティ』“Capote”
作家トゥルーマン・カポーティが『冷血』を書いた経緯を描
き、今年のアカデミー賞では主要5部門にノミネートされ、
フィリップ・シーモア・フォフマンが主演男優賞を受賞した
作品。ホフマンは映画の製作総指揮にも名を連ねている。
1959年11月15日、カンザス州ホルカムという田舎町で起きた
一家4人惨殺事件。その新聞記事に目を止めたカポーティは
事件に興味を持ち、幼馴染みで、後に発表される『アラバマ
物語』の作者でもあるネル・ハーパー・リーと共に現地に赴
き取材を始める。
当時のカポーティは、『ティファニーで朝食を』で名声を得
ていたが、その作品は図書館の禁書リストにも入っていた。
そんな中で名声を利用するなどして徐々に取材を深め、遂に
犯人が逮捕されると、その犯人とも面会できるようになる。
そして直接犯人を取材する内、カポーティは犯人の一人に共
感し、死刑判決を減じようと尽力することに…ところが彼の
作品は、犯人が死刑にならないと完結しないのだった。しか
も朗読会で一部が発表された作品は好評に迎えられ、人々の
期待は高まって行く。
発言を得るためには嘘も吐くし誤魔化しもする。そんな作家
の二面性が綴られる。自分も物書きの端くれであるから、こ
の作品のカポーティの姿には大いに共感する。しかし、ここ
には作家と言うだけではなく、人間としての悩み苦しみが描
かれている。
実際にカポーティは、1966年に『冷血』を発表した後は、ほ
とんど本格的な作品は出さないままアルコールやドラッグな
どの依存症となり、1984年に心臓麻痺で亡くなっている。そ
の苦しみは尋常なものではなかったということだろう。
そして映画は、その苦しみを共有しようとするかのように、
犯行の様子の再現から死刑執行までのカポーティの心象を克
明に綴って行く。特に、彼が心情を吐露する数々の発言は、
観客の胸に突き刺さるものだ。
主演のホフマンは、少し異様な感じもするカポーティを見事
に演じており、主演賞を実力で勝ち得たことがよく判る。共
演にはキャサリン・キーナー、クリス・クーパー、ボブ・バ
ラバンなど実力派が並ぶ。
脚本を手掛けたのは現役俳優のダン・ファーマン。監督は、
過去にはCMとドキュメンタリー作品しかないべネット・ミ
ラー。彼らは12歳の時からの友人で、その2人が高校時代の
サマー・シアターで知り合ったというホフマンと共に作り上
げた作品だそうだ。
『サムサッカー』“Thumbsucker”
原題には、I am worried about my future,just like youと
いう1行が添えられている。
ウォルター・キルンの原作から、1990年代のアメリカン・カ
ルチャーの立て役者と言われたマイク・ミルズが脚色、初監
督した作品。僕としてはだから何なの言う感じだが、映画は
普通に見て、将来に不安を抱える思春期の心理を上手く描い
た作品に思えた。
主人公は、17歳になっても指しゃぶりが止められない。元ス
ポーツマンの父親はそんな息子を叱りつけるし、歯列矯正の
歯医者は催眠術を試したりもするが、彼が本当に抱えている
問題は将来に対する不安だ。しかし大人たちは誰もそんなこ
とに気付いてくれない。
そんな彼が、学校での異常行動からADHD(注意欠如他動
性障害)と診断され、抗鬱剤の服用を勧められる。そして、
薬物の使用をためらう親の反対を押し切って服用を開始。そ
の効果はみるみる現れるが…
精神病の大半は、精神病医が判断の付かない症例に対して勝
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06月30日(金)
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