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On the Production
by 井口健二
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■チーズとうじ虫、ダスト・トゥ・グローリー、THE WINDS OF GOD、ママン、ハイテンション、狩人と犬、森のリトルギャング
玉石混淆。ある意味ではお祭り騒ぎのような雰囲気も見事に
伝えられていた。
先にツール・ド・フランスの模様を、スポンサー付きチーム
の内部から記録したドキュメンタリーを見たが、ある意味非
情というか殺伐としたその作品に対して、本編は人間的と言
うかいろいろな暖かさが描かれてていた。
もちろんその中には、本来は3人のライダーが交代で乗ると
ころを、1人で最後まで行くという鉄人的なレーサーの姿も
描かれ、彼がうわ言のように同じ言葉を繰り返す姿には壮絶
さも感じさせたが、全体的にはユーモラスなシーンも随所に
織り込まれて、見ていて楽しいドキュメンタリーだった。
それと、本作ではいろいろとナレーションが入って解説して
くれるのも、理解し易くて良い感じのするものだった。
『THE WINDS OF GOD』
1988年から今井雅之が自らの原作演出で演じ続けている「神
風」特攻隊を描いた舞台劇の映画化。同じ作品は1995年に一
度映画化されており、また昨年テレビドラマ化もされたよう
だが、今回はそれを、海外での上映を目指して英語台本で再
映画化したものだ。
そこで今回のリメイク版の主人公は、ニューヨーク在住の芸
人コンビ。一方が日系人なので、侍をモティーフにしたコン
トを演じているが評価はされていない。そんな2人が、次は
ラス・ヴェガスで一旗上げようと出発した直後、交通事故に
巻き込まれてしまう。
その彼らが目覚めたのは1945年夏の国分航空隊基地。そこで
彼らの魂は特攻の出陣を待つゼロ戦飛行士の身体に宿ってい
たのだ。そして隊員たちが次々に出陣して行く中、平和な時
代を知る2人は戸惑い、他の隊員たちの行動に反発するが…
プロローグの舞台は現代のニューヨークで、そこでの台詞は
当然英語。その後に日本に舞台が移るわけだが、その日本人
も台詞は英語ということなので、そのつなぎがどうなるか気
になっていた。でも、実に素直につないでいて、それはちょ
っと感心したものだ。
その英語の台詞回しはかなり大袈裟な感じだったが、英語圏
以外の観客も対象にするとなると、これくらいはっきりした
発音の方が判りやすいと思えたものだ。また翻訳も、時々ア
メリカ映画に出てくるような言い回しなどもあって、良い感
じだった。
ただし内容は、最初のニューヨークシーンでグラウンド・ゼ
ロを写して、その後で特攻の意味を考えるとなると、いくら
「神風」は民間人を攻撃目標にしなかったと言われても、そ
の論理は理解し辛い。結局、自爆テロと同じと捉えられるの
が落ちになりそうだ。
ここで特攻が人間性を否定したもので、テロと同じ論理のも
のだということが言いたいのなら、このやり方は正しいと思
われる。でも、映画の後半で愛する人のために特攻に行くな
どという台詞が出てくると、僕は製作者の意図を計りかねて
しまうものだ。
つまり、平和ボケした若者に特攻の精神を教えるということ
になると、それはテロリストの論理と何ら変らない。結局の
ところ自爆テロを行う女性たちだって、愛するもののために
行っていると言い出すだろう。民間人を対象とするかどうか
は詭弁でしかない。
僕にはそうとしか捉えられなかったし、それで良いのなら構
わないのだが…
『ママン』“Ma mère”
原作者ジョルジュ・バタイユの死後、1966年に発表された遺
作を映画化した2004年の作品。
原作は、そのスキャンダラスな内容から映像化不能と言われ
ていたようだが、今の映画界はそれを克服できたようだ。実
際、本作には相当の映像は登場するが、それを描くことので
きる自由を享受したい。と言っても、日本ではかなりぼかさ
れてしまうが。
物語は、主人公の17歳の青年が母親の許を訪れるところから
始まる。それまで彼は父親と共に暮らしていたが、自堕落な
父親の生活態度を煩わしく思っていた彼は、父親のもとを離
れ、崇拝する母親(ママン)のところにやってきたのだ。
ところが、平穏な日々がやってくると思った生活は、直ぐに
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06月29日(木)
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