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On the Production
by 井口健二
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■マッチ・ポイント、DEATH NOTE、夜のピクニック、カーズ、キンキー・ブーツ、いちばんきれいな水、フラガール
場させ、彼女をキー・プレイヤーの一人として物語の設定の
説明や、主人公の心情の吐露などをさせており、これが見事
にうまく機能していた。
脚色は、テレビシリーズの『金田一少年の事件簿』などを手
掛ける大石哲也。これからもちょっと気にしたい名前だ。た
だし、主人公の正義感が変質して行く過程、もしくは歪んだ
正義感に酔って行く過程は、もう少し映像的に丁寧に描いて
欲しかった感じは持った。
主人公の夜神月を演じるのは藤原竜也。若手では抜群の演技
力と言われているようだが、今回は特に雰囲気などもはまっ
ているように感じた。一方のL役は松山ケンイチ。彼も昨年
は新人賞を総嘗めのようだが、今回はちょっと役を造り過ぎ
の感じがする。
また、映画独自のキャラクター・秋野詩織役は香椎由宇。昨
年から大活躍だが、今まで以上に存在感が出てきて良い感じ
だった。他に、鹿賀丈史、藤村俊二、瀬戸朝香、細川茂樹、
戸田恵梨香らが共演。そして、CGIで登場する死神の声を
中村獅童が担当している。
後編を見なければ最終的な評価は下せないが、でも前編は、
僕の予想を越えて面白い作品だった。10月公開の後編が楽し
みだ。

『夜のピクニック』
恩田陸原作、『博士の愛した数式』に続く第2回本屋大賞を
受賞した小説の映画化。
原作者の出身高校で現在も行われているという、全校生徒が
24時間掛けて80キロの行程を歩き抜く「歩行祭」を背景にし
た青春ドラマ。
主人公は3年生の女子、これが終われば受験体制となる最後
の歩行祭で、彼女は同級生の男子に話し掛けることを密かに
誓っている。しかし、2人の間には簡単に話し掛けることを
許さないある秘密があった。そんな2人を級友たちは温かく
見守っているが…
2人の秘密は、観客にはかなり早くに明かされる。従って観
客は彼らと秘密を共有しながら、その秘密がどのような形で
他の級友たちに明かされて行くかを見て行くことになる。そ
こにアメリカに転校した親友の弟などが絡んで、物語は意外
な方向に展開して行く。
さらにアニメーションや、騙し絵的な背景など映像的な興味
も引っ張りつつ、実にヴァラエティに富んだと言うか、サー
ヴィス精神満点の映画が展開して行く。しかもそれが、変に
浮いたり、嫌みになったりすることなく展開するところも見
事な作品だ。
監督は長澤雅彦。去年『青空のゆくえ』という作品を紹介し
ているが、その時も等身大の高校生の青春群像を丁寧に描い
ていた。また監督は、毎年紹介しているニューシネマワーク
ショップにも関わっており、その意味でも興味を引かれた作
品だった。
でも、そういうことを抜きにしても、ちょっと甘酸っぱいと
言うか、ほろ苦いと言うか、そんな青春が描かれる。正直に
言って、2人の関係はかなり特別なシチュエーションではあ
るけれど、逆にそれが微妙な隠し味になって心置きなく楽し
める作品になっている。
出演は、多部未華子、石田卓也、郭智博、西原亜希、貫地谷
しほり、松田まどか、高部あい、池松壮亮、加藤ローサ、柄
本佑。昨年辺りから一気に台頭してきて、これからも活躍し
そうな若手が大挙して出ている。
中には、たぶん演出方針で、わざとわざとらしい演技をして
いる役柄もあるが、全体的には高校生の雰囲気を見事に出し
ていたし、それぞれ個性的なのも魅力な若手たちだ。それに
延べ5000人、最大1000人がワンカットで登場するシーンもあ
るという大量のエキストラを動員した歩行祭の再現も見事に
描かれていた。
話し掛けたいけど話し掛けられない、でも思い切って…そん
な思い出って誰にでもあるだろう。涙を流すようなタイプの
感動作ではないが、見終って本当に清々しい思いが残る、そ
んな純朴な青春を描いた作品だった。

『カーズ』“Cars”
1995年公開の『トイ・ストーリー』に始まったピクサー製作
による長編CGIアニメーションの10周年記念作品(当初の
公開予定は昨年末だった)。また本作では、1999年の『トイ

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06月14日(水)
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