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On the Production
by 井口健二
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■深海、タイヨウのうた、日本沈没
わないし、ライヴの捉え方も良い。でも、それならもっと別
のテーマの映画でも見たかったという感じもした。
元々は1993年の香港映画のリメイクということで企画された
作品ということだが、特にXPという病気を扱ったのには、
それなりにインスパイアされた実話もあったと想像される。
それならもっとその辺の事実も取り入れて、もっと現実的な
問題も描いて欲しかったようにも感じた。
ただ、映画が意外とウェットにしないで描いていることには
好感が持てた。人は涙を流すと、その涙の部分しか思い出せ
なくなってしまうという話もあるようだから、難病のことを
覚えて置いてもらうためには、これは良いと思えたものだ。
『日本沈没』
原作は1973年3月に発行されて史上最高のベストセラー。映
画の公開はその年の12月で、これも日本の興行記録を塗り替
える大ヒットを記録した作品のリメイクだが…
<以下の記事はこのページの趣旨に反します。いつもは、こ
の種の記事は年末に同人誌に掲載させてもらっていました。
でも今回は、僕自身どうしても納得ができないので公表する
ことにします。読まれる方は注意して読んでください。>
結末の変更のことは事前に知っていた。詳しい内容までは知
らなかったが、こうなるという情報は先に得ていた。それに
去年の『戦国自衛隊』辺りから、この種の改変は日本映画の
常套手段な訳だし、その時に文句を言わなかったのだから、
これはもう仕方のないことだ。
ましてや、その『戦国自衛隊』をジャンル名だと言い放った
原作者の小説の映画化をデビュー作とした監督が手掛けるの
だから、こうなることは分かり切っていたとも言える。だか
らそれに付いてとやかく言うのは止めにしたい。多分『日本
沈没』もジャンル名のつもりなのだろう。
でも本当は、この監督の「実は『さよならジュピター』のリ
メイクを目指した」という言葉を聞いて、そういう発言をす
る人ならと、淡い期待は持ったものだ。だから、結末の変更
をある程度言い訳するような記事を書くつもりでいた。
しかしこの映画は、そんな結末に至る以前から首を傾げたく
なるシーンだらけの作品だった。
ステレオタイプの政治家に、噴飯ものの男女関係。SF映画
を駄目にする2大要素が見事にそろった作品、というのがま
ず最初に見えてくるこの作品の印象だ。国民に伝えるべき事
実を隠したり、保身に走ったりというのは、現代の政治家に
対する批判のつもりかも知れないが、こう底が浅くては批判
にも何もなりはしない。
さらに、幼稚な男女関係の描き方は、「トレンディー・ドラ
マ」を踏襲したつもりなのだろうが、そんなものをべたべた
と描き続けた上に、その男女が出陣を前に抱き合うシーンで
は感傷的な主題歌がかぶさるときたものだ。
多分、作り手はここでお涙頂戴のつもりなのだろうし、実際
にここで涙している観客もいたようだが、そんなものがSF
映画の魅力か? SF映画で涙したと言われると、過去には
『E.T.』や『アルマゲドン』が話題になったが、どちらも
こういうシーンではなかった。
それに、この物語で感動すべきはこんな特攻隊のパクリのよ
うなシーンではなくて、その後に描かれる逃げ延びた人たち
が救助されるシーンのはずだ。ところが、こちらはそこまで
のサヴァイバルが真剣に描かれていないから、ここでは感動
も何もありはしない。
実際、男女がくっついたの離れたのなんて話を、いつまでも
ごちゃごちゃやっているから、肝心のパニックはほとんど描
けていないし、ミニチュアをCGIに替えれば、ビルの倒壊
などは派手にはなるが、所詮はアニメーション、そちらでは
何度も見ているものだ。
SF映画に人間関係は要らないとは言わないが、本筋をじゃ
まするようでは困る。この映画で言えば、主人公の同僚の潜
航艇パイロットが家族と故郷の話をし、艇内に写真を飾る。
その程度で充分なものだ。この映画では、彼だけが俳優の役
作りも含め真剣なように見えた。
結末をぶっちゃけると、日本は沈没しないのだが、そのやり
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05月31日(水)
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