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On the Production
by 井口健二
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■第108回
ということだ。
        *         *
 お次は、今年のアカデミー賞で作品賞と脚本賞を受賞した
“Crash”の、製作、脚本、監督を担当していたポール・ハ
ギスが、ソニー傘下のコロムビアで進められているリチャー
ド・クラークの著書“Against All Enemies”の映画化につ
いて、製作と監督の契約を結んだことが発表された。
 クラークは、前のホワイトハウスの対テロ戦略顧問という
要職にあった人物で、ベストセラーにもなっている著書は、
2001年9月11日の同時多発テロの数ヶ月前から始まり、ブッ
シュ政権がクラークの警告を無視したために有効な対テロ戦
略が立てられなかった経緯や、9/11以後のイラク攻撃に至る
までの大統領府内部の動きが克明に綴られたものとされ、政
治の内幕物としてはかなり生々しいものになるようだ。そし
てコロムビアでは、昨年この著書の映画化権を獲得、直ちに
2003年公開の“Basic”(閉ざされた森)や、昨年5月15日
付第87回などで紹介している“Zodiac”の脚本家ジェイムス
・ヴァンダービルトを起用して脚色を進めていたものだ。
 ところでハギスは、今回受賞した脚本も手掛けている他、
昨年の“Million Dollar Baby”でも脚色賞にノミネートさ
れていたものだが、今回の契約では製作と監督のみを行い、
脚本はヴァンダービルトの物を使うことになっている。その
理由は明らかにされていないが、上記ハギスの作品はいずれ
もフィクションということで、実録ものではヴァンダービル
トの方が手慣れているということなのだろうか。いずれにし
ても、今回のハギスは製作も担当している訳で、そのハギス
自身が監督のみとしているものだ。因にハギスは“Crash”
が初監督作品だった。
 ただし、今回発表された作品は、ハギスの次回作とはされ
ていない。一方、ハギス自身は、現在ソニー傘下のMGMで
製作中の007の新作“Casino Royale”の脚色を担当して
いるもので、監督と脚本家の両面でソニーとの関係は深くな
っているようだ。
        *         *
 続いては、テレビシリーズの映画化で、1968−70年にロバ
ート・ワグナー主演で放送された“It Takes a Thief”(プ
ロ・スパイ)を、ウィル・スミスの主演で劇場版リメイクす
る計画がユニヴァーサルから発表されている。
 オリジナルのお話は、ワグナー扮する天才的な泥棒が、生
涯たった1度の失敗で逮捕、収監される。ところが、そこに
SIAと称する政府諜報機関の男が現れ、彼を仮釈放する代
りに政府のために盗みの技を活用することが要請されるとい
うもの。主な舞台はヨーロッパで、毎回難攻不落の獲物に単
身チャレンジする主人公が描かれた。そして第2シーズンか
らは主人公の父親役でフレッド・アステアがセミレギュラー
で登場し、ウィットに富んだ物語が展開されていたものだ。
 全体的には“Mission: Impossible”(スパイ大作戦)の
個人版といった感じだが、大掛かりではないが華麗な盗みの
テクニックが当時のファンには高い評価を受けていた。僕の
記憶しているものでは、大通りに面したガラス張りの部屋に
置かれた大金庫を、白昼堂々破るという回があったが、その
テクニックにはなるほどと思わされたものだった。
 そしてその映画化の計画は、実は10年ほど以前から当初は
マイクル・ダグラスの主演で計画されていたものだが、会社
側の意向でスミスの起用が要望され、今回はそのスミスの出
演が決まって一気に進められることとなった。また、これに
伴い脚本には“Four Brothers”のデイヴィッド・エリオッ
トとポール・ラヴェットが起用され、新規の脚本が執筆され
るとのことだ。因に、政府諜報機関はCIAになるようだ。
 スミス主演のテレビシリーズからの映画化では、1999年の
“Wild Wild West”が記憶されるが、あの時はスミス自身よ
りも相手役の方に問題が有ったようにも思われ、今回はその
雪辱を果たしてもらいたいところでもある。
 なおスミスの次回作としては、息子のジェイドと共演した

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04月01日(土)
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