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On the Production
by 井口健二
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■タイドランド、ゴーヤーちゃんぷるー、初恋、アローン・イン・ザ・ダーク、迷い婚、恋は足手まとい、ゆれる、春の日のクマは好きですか?
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
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『ローズ・イン・タイドランド』“Tideland”
ミッチ・カリンという作家の原作を、テリー・ギリアムが脚
色、監督した2005年作品。
映画化の経緯は、以前からギリアムの大ファンというカリン
が、この原作を書き上げたときにギリアムに推薦文を頼もう
と本を送ったところ、ギリアムが気に入ったのだそうだ。だ
から最初からギリアム向けに書かれたお話と言うこともでき
そうだが、確かにギリアムワールドそのものといった感じの
不思議な雰囲気の物語だ。
主人公は、『不思議の国のアリス』が大好きな少女。両親共
に麻薬中毒という家庭に育った彼女は、「短い休暇に行く」
と称する父親の麻薬の世話に追われ、バービー人形の頭部を
もいだ指人形の他には話し相手もいない孤独な日々を送って
いた。
ところがある日、母親が麻薬のショックで死亡、慌てた父親
は彼女を連れて金色の草原の中に建つ一軒家の実家へ帰る。
しかしそこは住む人もいない廃屋。しかも帰り着くや否や、
父親は「短い休暇」に行ったまま動かなくなってしまう。
こうして廃屋に一人残された少女は、屋根裏に住む栗鼠や、
色々と怪しげな行動の見て取れるお隣さんの姉弟らと共に、
何故かタイドランド(干潟)と呼ばれる不思議の国を彷徨う
ことになるが…
正直に言ってかなりグロテスクな作品で、奇妙と言うより異
常な世界が展開する。今までのギリアム作品の中でも、ある
種の過激さでは群を抜いていると言えそうだ。
実際にこの作品を見ると、ハリウッドや大手資本で撮られた
作品では、ギリアムが如何に自分を殺していたかが判る感じ
もする。因に本作は、大手に縛られないイギリス+カナダ資
本で製作され、ギリアム本人が「自分自身の映画への情熱を
再燃させたかった」と語っているくらいのものだ。
とは言うものの、本作の物語は実に巧みに作られていて、独
り善がりや辻褄の合わないようなところもなく、納得して見
終えられた。そして、主人公が最後まで希望を失わない展開
には見事に填められた感じもした。
ギリアムが、全く一筋縄では行かない監督ということを再確
認できる作品とも言えそうだ。
主演は、撮影中に10歳の誕生日を迎えたというジョデル・フ
ェルランド。今までは主にカナダのテレビに出ていたようだ
が、この異常な物語の中で実に生き生きとした演技を見せて
くれる。また、父親役を、ギリアム作品は『フィッシャー・
キング』以来となるジェフ・ブリッジス。母親役を、『チャ
ッキーの花嫁』などのジェニファー・ティリー。隣家の姉弟
役をジャネット・マクティアとブレンダン・フレッチャーな
ど、受賞やノミネート歴の並ぶ俳優が揃っている。
観客を選ぶ作品かも知れないが、ギリアムの真価は存分に発
揮されていると思える。それにフェルランドの演技が素晴ら
しくて、僕には最高に面白く見られた作品だった。
『ゴーヤーちゃんぷるー』
くもん出版刊行の『まぶらいの島』という原作の映画化。学
校でいじめに遭い不登校となった少女が、メールを切っ掛け
に沖縄の島に渡り、人生について考える物語。
元々くもん出版の本だし、映画の企画・製作協力が森田健作
事務所ということで、相当に臭い作品を覚悟したが、予想外
に爽やかな作品に仕上がっていた。
主人公は、幼い頃に母親が家を出て祖父母に育てられたが、
最近海洋写真家の父親が事故で亡くなり、自分の道を見失っ
ている。しかも学校ではいじめに遭い、クラス全員から無視
されているが、一緒に暮らす元校長の祖父はしっかりしろと
言うだけで、親身にはなってくれない。
こうして、引き篭りになった彼女の外部とのつながりは電子
メールだけだったが、ある日、彼女はメル友が西表島にいる
ことを知る。そこは、家を出た母親が住んでいる島だった。
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04月14日(金)
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