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On the Production
by 井口健二
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■母たちの村、アンジェラ、バイバイママ、夢駆ける馬ドリーマー、トランスポーター2、ママが泣いた日、カサノバ
なく、ついにセーヌ川に架かる橋の欄干を越えて、飛び込み
自殺の準備に入る。ところが、ふと横を見ると、同じように
欄干の外側に若い女性が立っており…
この男を、『ミッション・クレオパトラ』にも出演していた
片腕のコメディアン=ジャメル・ドゥブーズが演じ、若い女
性を、身長180cmのスーパーモデルで、女優、短編映画の監
督も手掛けるというリー・ラスムッセンが演じている。
『ニキータ』『レオン』と同様に女性が活躍するアクション
映画の展開だが、本作では派手な銃撃戦などがある訳ではな
い。しかし裏社会の住人がいろいろ登場するなど、感覚的に
は前2作を髱髴とさせて、ベッソンが帰ってきてくれたとい
う感じのするものだ。
ベッソンは、確かに『レオン』後の2作のような大作も撮れ
る監督だとは思うが、今回のような作品で一番力を発揮する
ようにも思える。実際この作品では、最初は反発している男
女が、徐々に心を通わせて行く姿が見事に描かれていた。
ベッソンは、「同じことは繰り返さない」を自分の監督とし
ての信条としているようだ。だから『ニキータ』『レオン』
の後でこの作品を撮ることは、繰り返しになることを恐れた
のかも知れない。
では何故、今この作品を撮ったかとなると微妙な感じだが、
僕は、21世紀初頭の出来事で映画を作ることに虚しさを感じ
ていた中で、ようやくもう一度映画に賭けてみようという気
持ちが出てきたものと考えたい。
また、もしこの映画が『レオン』の直後に撮られていたら、
映画はもっと激しい作品になっていたのかも知れない。しか
し2005年完成の作品は、そのような描写が極力押さえられ、
全体がしっとりとした落ち着いた作品に仕上がっている。
それは全編をモノクロで撮影された映像に拠るのかも知れな
いし、毎週日曜日の早朝4時起きで撮影されたという静かな
パリの風景のせいかも知れない。でもそんな雰囲気の中で、
最高に愛しい作品が生まれたことは確かなことだ。
『バイバイ、ママ』“Loverboy”
子離れできないシングルマザーの姿を描いたヴィクトリア・
リデル原作の小説を、『ミスティック・リバー』などの俳優
ケヴィン・ベイコンの初監督で描いた作品。
主人公をベイコン夫人のキラ・セジウィックが演じ、その少
女時代を実の娘のソジーが演じる他、実の息子や夫人の弟、
ベイコン家の犬まで出演するファミリー作品だが、その周囲
をベイコン自身は元より、メリッサ・トメイ、サンドラ・ブ
ロック、マット・ディロンらが固めるなど、ベイコン夫妻の
人脈も活用されて作られている。
そしてもう一人の主人公ラヴァーボーイ役を、『マイノリテ
ィ・リポート』のドミニク・スコット・ケイが演じている。
主人公のエミリーは放任主義の両親に育てられた。その後は
両親の遺産で悠々の生活は送っているが、自分の子供は最高
の愛情を込めて育てたいと思っている。しかもその子供の成
長に父親は不要と考え、出来るだけ優れた男の精子で子供を
宿し、一人で育て始める。
その子育ては溺愛そのものだったが、やがて子供は小学校へ
通う年となる。しかし今まで自分の目の届かないところに子
供を行かせたことが無く、しかも画一的な学校教育に反対の
母親は…
これほど過激な母親が実在するかどうかは…、いないとは言
い切れないご時世のようにも感じるが、作品はある意味アン
チテーゼでもあるし、逆にまさに放任主義の親たちへの警鐘
であるとも言えそうだ。
その意味では、エミリーの少女時代と母親となっての時代が
バランスよく描かれているのは見事と言える。プレス資料に
は、脚色が難航したと紹介されていたが、最後に依頼された
ハナ・シェイクスピアという新人脚本家は素晴らしい仕事を
しているものだ。
ベイコンの監督は、多分師匠のイーストウッドが「キャステ
ィングを決めれば、後はやることはない」と言っているのと
同じで、これだけの役者と脚本が揃えば、後はやることはな
かっただろう。ただし、中でのサンドラ・ブロックの撮り方
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03月30日(木)
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